女神様の宝石箱3
色々不手際ありまして申し訳ございません。
本日も午後からもう一話投稿予定です。
宜しくお願い致します。
私の急な訪問に、明らかに教会内の空気が変わる。
「これはこれはジュリア様。今日は訪問のお約束は無かったかと……」
脂ぎった小肥りな中年男性が手を擦りながら私の方へと近付いて来る。
私も人の事は言えないが、ハゲ・デブ・チビと三拍子揃った神父は更に皮脂がギトギトで、四拍子揃えて性格悪ければこの人に何が残るのか?
正直疑問が残る。
それに、彼は畏まってはいるが、私の黒帳簿では彼の行いはベターな悪役に次ぐものがあった。
孤児の食事を粗末にし私腹を肥やす?寄付の横領?なんて、生易しい物ではない。
孤児を定期的に社会貢献と言う名目で金のある貴族に奉公に行かせ、弱味を見つけて恐喝するなどしている。
その孤児の派遣内容にも問題がある。
まぁ。
私も人に言えない様な性癖があるので、これ以上は言及しないけど。
そして、なに食わぬ顔で応接室まで通される。
「私、聖女の御祓の儀式の時に突然社会貢献に目覚めましたの」
そう言って懐から金貨の入った革の袋を取り出す。
神父がゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえる。
そして、その袋から金貨を1枚程取り出した。
この世界の通過はブローと言う、1ブローが日本円で言う所の1円であるが、通貨は10ブローつまり10円刻みとなっていた。
10ブローは小さな銅貨で、銅貨は大きさを変えながら100ブロー1000ブローとなり、その上に銀貨が使われ1万ブロー10万ブローとなる。
察しの良い方はもうお気づきだろう。
私が差し出した金貨は日本円で言う所の100万円。
それをジャラジャラ音をさせている私は差し詰め良いカモだろう。
「これから私も教会運営に乗りだそうと思いまして父に相談しました所、父からそれならと資金を用立てて貰いましたの」
「そうでしたか。流石は公爵様。敬虔な信者に幸有らんことを」
そう言って胸の前で十字を切る。
流石は乙女ゲームだけあり、前世の文化が息づいているな。
そんな所に感心してしまう。
それに私は国でも一番金を持っている公爵令嬢。
今の神父にはカモにしか見えないだろう。
そう思い思わず笑む。
まぁ。
年頃の娘と言っても私の今の姿は見た目160センチに体重100キロ位に見えているだろう。
私の身に着けている服を着る前に見ると普通の令嬢位の服の大きさなのだが、そこは呪いの力でねじ曲げられている。
そんなおデブ令嬢が「フフフフ」と笑う姿はある意味引いてしまうと思うに、今神父は『マネー』と言う魔法に掛けられていてそんな事を気にする節もない。
だから私はマネーの魔法が有効な内にちゃっちゃと契約を済ませてしまった。
教会運営に私も一口噛むと。
「実は神父様。早速ですが、今日の昼食の準備をして来ましたの」
そう言って応接室を出るとホールでは私の連れて来た侍女達と子供達が楽しそうにサンドイッチを作っていた。
「私達も共に食事をしますので、食材を勝手に持ってまいりました。失礼でしたでしょうか?」
私は神父にそう尋ねると
「滅相もございません」
と微笑まれた。
胡散臭い笑いだなと思いながら此方も微笑む。
すると、その脇を小さな女の子がサンドイッチをお盆に載せて裏の居室の方へと持って行こうとしている。
「あら?何処に持って行くの?ダイニングは逆よ」
そう問い掛けると
「あぁ。多分昨日の朝川岸で怪我をしていた男の所でしょう。記憶も無いらしく困っていた所です」
神父が迷惑そうにそう言う。
「川岸で……怪我?」
何か聞いた事がある様な内容である。
「こちらでは医師の派遣も金銭的に大変でしょう?それではその者を我が家で預り治療致しましょう。ここでは小さい子供達だけでも大変でしょうから」
そう申し入れると神父は「貴女の様な優しい方はおりません」と脂ぎった手で握って来た。
この神父、本当にキモいから。
お読み頂きありがとうございます。
次話やっとヒーロー登場となります。(怪我していますけどね)
また読んで頂けたら幸いです。