表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/45

女神様の宝石箱28

ノア王子の入室で教室内が騒然とした。


一人なら兎も角、一女生徒を伴っての遅刻だ。

『仲良く授業に遅刻とか……噂して下さいと言っているようなものなのに……案外殿下は馬鹿なのかしら?』

そんな事を考えながらノア王子を見ていたら思いっきり目が合ってしまった。

一瞬不機嫌な雰囲気を醸し出すノア王子の後ろでヒロインがモジモジしている。

図柄的に微妙なスチルに目が座ってしまう。

そんなノア王子達へ先生が着席を進める。


『何だって言うのかしら。八方美人なんだから少しは愛想笑い位したら良いのに』


ノア王子はこちらに冷たい視線を寄越し、そのままヒロインを伴い席に着いた。

(あつら)えたようにノア王子の隣に座るヒロイン。

確か、最初のイベント回収でノア王子を選ぶと、漏れ無くノア王子の隣の席になるんだった。

そして、その後ろには取り巻きの二人。

まるでヒロインを攻略対象三人で囲うような感じである。


これもゲーム補正か……恐ろしい。

キュッとスカートを握りしめてしまう。


その後、遅れて来た殿下の自己紹介のすぐ後にヒロインも自己紹介をして授業は滞りなく消化出来た。


因みにだが、クラスは別れる事がないので、2期生は全員同じ教室に入る事になる。

今回殿下方が入学された事により、同じ様に途中入学した生徒が多かった。

私達のクラスも今現在全員で50名程はいる。


何故かって?

王室と親しくするのも貴族の嗜み。

滅多に近付けない王族と、嫌でも毎日顔を合わせれば知らずと顔馴染みになるかもしれないからだ。

そして、殿下方の覚えもめでたくなれば出世にも繋がる。

一族繁栄と薔薇色の人生が掛かっているのだ、皆気合いも入ろうと言うもの。


因みにだが、机は二人が並んで座れるような物を今までは一人で悠々自適に使っていたらしいのだが、生徒が増えた事により二人で使う事になってしまったそうで、元々在学していた生徒からしたら窮屈極まりないらしい。


本当王子様々ですよ、御愁傷様です。


そんな私は今、アルと一緒にヒロインを尾行……している訳ではなく、馬車待ちの建物へと向かっていた。

単に今から帰るのだから、向かう先が同じなのだ。

ヒロインはこれから王子とのイベント回収の為に馬車待ちの建物へと向かっている。

勿論私達も馬車で帰る為にそこへと向かっている。

きっと、この光景を好感度の上がった攻略対象達からみれば『悪役令嬢がヒロインをストーキングしている』的な事を思うんだろうな。


そう思うと溜め息が出てしまった。

「ジュリア……まさか本当にノア王子の事を……前を歩いている令嬢は先程ノア王子と一緒に遅刻をしてきた令嬢だし……」

となりを歩くアルが捨て犬のような顔になり私の人差し指を軽く握りながらそう呟いた。


なっ……何これ?


滅茶苦茶キュンキュンしちゃうよ。


見つめ会う事数分。


「オホン」

と、わざとらしい咳払いが聞こえ思わず振り返れば、もう一人の王子であるエドワードが一人で立っていた。


『おい、取り巻きはどうした?』

思わず目で訴えてしまった。


「ウエンズ公爵令嬢が婚約者と共に入学したと聞いたが……まさか、白昼堂々とイチャイチャしているとは思いもよらなかったよ」

まだゲームが始まったばかりなのに嫌味ですか?

「てっきり、ここへ入学するらしいと母上に聞いた時は私の妃候補狙いかと懸念したが、どうやら取り越し苦労のようだったので安心したよ」

更に追い討ちのように嫌味を言われる。

「これは殿下。ご無沙汰しております。幼少の頃以来ですわね」

そう言って綺麗にカーテシーを決める。

おデブがしてもはっきり言って様にはならないけど、一応貴族令嬢だからね。

「ああ。君が太る前以来だから十数年前になるかな?」

更なる嫌味かい。

女性に『太る』とか『妃候補狙い』とかオブラートに包む事なく言う辺り、私って全然殿下に相手にされていないと思っていいね。

「そうですわね。しかし、殿下はあの頃の面差しが残っておられるので安心しましたわ」

『お前小さい頃から変わんないな、少しは大人になれよ』

心の中で副音声を付けてやる。

「君は幼い頃の面影さえないね」

『お前こそ、その太った姿どうにかなんないのか?』

殿下の副音声が聞こえて来る。

ニコリとお互いに微笑み会うとムっとしたアルが私の腰を抱く。

「二人だけの世界に入らないでくれる?」

超不機嫌オーラを(まと)ったアルが私の顔を覗き込んで来た。

お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ