女神様の宝石箱26
あれから早行く月日。
アルから解放される事なく入学式兼進級式を迎えてしまっていた。
真新しい白色のブレザーの制服に袖を通しプリーツの効いたチェックのスカートを履く。
乙女ゲームとあってか日本の高校生らしい出で立ちである。
本来なら、今日この戦いの初日を気合いと共に挑むつもりが極度の睡眠不足に婚約者つき。
何故か父が気を効かせて私とアルにぺアリングを入学祝いに今朝寄越したのだ。
挙げ句、アルは隣にベッタリとくっついているし。
超目立つ。
他の生徒達がこそこそと噂話をする始末。
「殿下達が編入されるから入学されたのでは?」
とか
「王太子妃を狙って来たのじゃなくって?」
とか
「あのデブ令嬢に恋人が?物好きもいるのね」
とか、全て聞こえていますからね。
しかし、残念な事に今の私は何とかアルに支えて貰っているようなもの。
この疲れの原因なんだからそれ位当たり前なんだろうけどさ。
「ジュリア。辛いなら医務室に行こう」
今まさに乙女ゲーム最初のシーンを目の前にしてそれはないだろう。
「私は大丈夫。大切な式ですもの……」
そう言ってアルを見る。
すると、アルは困ったように微笑む。
「判った。でも、無理はしないで」
「ありがとう」
そんな私達の会話を回りが物凄い目で見ていた。
校長先生の長い話が終わると、生徒代表をこの国の第一王子であるエドワード様が務められた。
あぁ。
乙女ゲームのオープニングシーンだ。
王子の声と共に流れるオープニング。
主要キャラクター達を一人づつ捉えながら進み、最後にヒロインが出てオープニングが終わり、そのままゲームがスタートするのだ。
彼女は悪役令嬢とは遠い後ろの位置に立っている為その姿は確認出来ない。
でも、貴族でも上位にいる私からは攻略対象の男性陣が一望出来る。
そして、間違いなく全員いる事を確認した。
式が終わればそのまま教室へ移動。
アルは年齢を詐称して私と同じクラスに入ったので、そのまま教室へと向かう。
このまま先生の挨拶を聞いて自己紹介をしたら初日は終わり。
ヒロインのイベント回収はどの攻略対象を目指すかで違うので、そこも確認しておかなければ。
確か、教室に行く前に……。
私は中庭の噴水の方へと視線を向けた。
すると、ピンクブロンドの主人公がハンカチを落とすシーンが目に止まる。
「嘘、ノア王子狙いなの?」
ボソリと呟いた声をアルが正確に拾い眉をしかめた。
「ジュリア。ノア王子と特別な仲なの?」
物凄く不機嫌なアルの声に息が止まる。
「あの八方美人みたいなのが好み?」
「へっ?」
何故アルがノア王子の性格を知っているのだろうか?
「あいつ、女の前では優男だけど、性格ならお前の兄貴より大概だぞ」
「……そうな……の?」
それは知らなかった。
ゲームとの齟齬か、まぁ、家の兄も大分キャラ違うけど、裏設定みたいなやつかな?
確かに悪役令嬢には酷い言葉を浴びせていたけどさ。
そう思っていると、イベントが発生。
ノア王子がヒロインのハンカチを拾い自己紹介をする場面だ。
このイベントから始めるって事はどちらかの王子狙いになる。
何故なら、この後帰りにノア王子にハンカチのお礼をしに馬車の所まで追いかけたヒロインが第一王子とも会う事になるからだ。
つまり、狙いは今の所どちらかの王子という事になるけど、このイベントから始めた場合やはりノア王子の方が早く好感度が上がるはず。
兎に角、私は出来るだけ自身のフラグを回避しなくては。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




