女神様の宝石箱25
「ほら、熱いから気を付けて飲むんだよ」
アルの優しい声に私は滅茶苦茶緊張している。
トカトカと早鐘のように心臓が鳴る。
「……はい」
何故か、今私はアルの股の間に座っている。
私の後ろで私をすっぽりと包むように座るアル。
何でも、ダンスの練習中は起きている間中一心同体を心掛けるのだと言う。
だからなって、なんでこの体制なのよ!!
だからお茶なんて嫌だったのだ。
それに、一心同体が明らかに昨日よりレベルアップしている。
初日は隣に座ってお茶をしていたのに、昨日は膝だっこだった。
今日に至ってはお股に……抱っこ?
これって嫌がる私に対しての新手の嫌がらせだよね?
「やっぱり膝だっこの方がジュリアの顔が良く見えて良いな」
そう言って私の頭に顔を埋める。
『頭臭くないよね』
明後日の事を考えたが無理だった、更に緊張で硬直する。
カタカタと淑女にあるまじき音を立てながらお茶に口付けようとする。
カチカチとカップがソーサーにぶつかってしまうのは仕方がないと思うのだ。
そんな私の手にアルの手がそっと添えられる。
「カップも持てない位に疲れてしまったのだね。あまり無理をさせ過ぎたようだ。ジュリアすまない」
アルはそう言って私の手からカップとソーサーを取る。
って、今飲もうとしていたのに……。
「今日はこのまま二人でのんびり休もう。休息も大事だからね。それに、お互いを感じるのも大切な訓練だ」
そう言って後ろから優しく抱き締められた。
正直言えば、ダンスは物理的に疲れるが、お茶は精神的に疲れる。
つまり、ダンスは寝れば回復するが、お茶は寝ても回復しない。
私はここ数日で精神疲労半端ない。
もう一人でのんびりしたい。
それに尽きた。
お読み頂きありがとうございます。
少し短めなので、本日中にもう一話投稿致します。
また読んで頂けたら幸いです。




