女神様の宝石箱18
教会の散策をしていると突然後ろから抱き締められてしまった。
「ジュリア」
甘ったるいその声に思わず振り替えるとアルの顔が直ぐそこにあった。
「ん……ぎゃ……近い!!」
思いっきり引いてしまう。
「近くて当たり前。キス出来ないだろう」
あっ……そうか、呪いの為だ。
そう思と何か何時ものキスが呪いを解く為の事務的なものに思えてしまう。
軽く触れるキスをした後、アルの顔が訝しむ。
「アル、どうしたの?」
そう問い掛けるとアルは自嘲気味に笑うだけ。
「何でもない」
本当に何でもないのだろうか?
良く考えるとアルが私にこんな顔をしたのは初めてのように思う。
「そう言えばアル。私も呪いの事を神父様に詳しく聞こうと思って、今日はこちらに泊めてもらう事になったの。アルはどうする?もし戻るなら馬を調達するけど」
「私だけ帰ってどうするの?婚約者の私を除け者にしたいのなら別だけど」
アルらしくない嫌味口調に思わずキュンと来てしまう。
いかん。
悪癖が……。
もっと嫌味ったらしく言って欲しい。
「そんな事ないわよ」
モゾモゾとしながらアルを見る。
「なら良いけどね。他に好きな男でも出来たのかと思ったよ」
更に嫌味たっぷりな台詞。
甘々な台詞も良いけど、嫌味を言うインテリイケメンもステキ。
それに、これって一種のツンデレ?
録画だったら絶対リピートしていただろう。
「そんなのあるわけないわよ」
スッとアルを見上げて弁解してみると、アルが疑わし気に私を覗き込んで来た。
既に時刻は夕方。
朱色に染まりつつある外。
何でしょうか?
このスチル。
ある意味萌えだよね。
思わずうっとりしながらアルを見てしまう。
「じゃあ。ジュリアはまだ私のものだと思っても大丈夫なんだよね」
何かを確認するようにアルはそう言うと、私の髪の毛に指を絡めて来た。
「私のものも何も、私はアルの婚約者でしょう?アルが婚約破棄しない限り私はアルの婚約者だよ」
私が嫌だと言っても、多分あの強欲父がそれを許さないだろうし。
「だから、私からアルに婚約破棄する事なんてないからね」
そう断言してやると、私の髪の毛を絡めたアルの手がスッと目の前に持ち上げられた。
そして、ゆっくりとした動作でその髪の毛に口付けする。
なっ……なんですかこれ?
ご褒美スチルですか?
直にされた訳じゃないのに……何て破壊力なのかしら……
更に追い討ちのように口付けたまま流し目をするとか……萌え死にそう。
バクバク言う心臓の音にアルの声が重なる。
「ジュリア。君を信じるよ」
そう言ってアルは何時もの笑みを見せた。
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