女神様の宝石箱14
朝食の後、私は一時中断していた教会巡りを再開させた。
本来は全部回る予定だったが、色々予定外の事があった為に近場は学園に入ってから休みの日にでも回ろうという事にして、本日は一番我が家から遠い教会を目指しています。
それに、何故かアルもついて来て。
「ねぇ、こんなつまらない事に付き合う事ないのよ」
馬車の中で昼食のサンドイッチを食べながらアルへ言うと
「退屈だけどつまらなくはないよ」
退屈とつまらないって同意語じゃないの?
「意味が分からないし、怪我だってまだ完治していないのに……」
「治療してくれる人が遠くに行くんだ。ついて行くのは自然の流れだろう。それに、君の国で式を挙げるなら何処が良いか見ている所だから」
式って言った?
「……本気ですか?」
式って……あの式だよね……
「本気だけど」
いとも容易くそう言うアル。
「本気で私と……」
結婚って方の……式を?
「結婚するつもりだよ」
即答である。
「あの……私がこう言うのもなんだけど、もっと素敵な女性はいっぱいいるよ。お兄様じゃないけど……見た目も……言ってはなんだけど、アル位見た目が良いなら選り取り見取りなんじゃないかな」
「今はそうかもしれないけど、俺知っているから」
真摯な眼差しで私を見つめるアルにドキリとする。
ただでさえインテリイケメンで破壊力あるのにあまり見つめないで欲しい。
それに、社交的な『私』ではなく『俺』って言ってるし、そう言う二面性も好きなんだけどさ。
だから
「何を?」
と奇跡的に出た言葉に私は自分を誉めてあげたい。
「ジュリア。君呪いが掛けられている事を知っているね」
『呪い』
その言葉にドクリと心臓が鳴った。
あの忌まわしき呪い……私の死亡フラグに繋がる呪い。
何でこのタイミングでその言葉が出て来るのだろうか?
「呪いを解く方法は色々あるけれど、君はまず呪いの事を知っている」
ゴクリと生唾を飲み込む。
「そして、その呪いを解いている最中だ」
一瞬息が止まるかと思った。
「差し詰め呪いを掛けたのは女神様かな?」
そう言うとアルは複雑な笑みを見せた。
「何故分かったの?」
震えながらそう問う。
まさか、こいつ実はテレパスで全てお見通しとか?
そんな斜め上な考えに囚われてしまう。
「俺もジュリアと種類が違うが、呪いが掛けられているんだ。そのせいでちょっとだけ呪いに耐性があってね。何となく分かってしまうんだ」
そう言ってアルは苦笑いすると私の隣に移動して来た。
「同類相憐れむって事?」
だから私を憐れに思って婚約者なんて者になったの?
そう思うと胸がチクリとする。
そんな私にお構い無しとアルが私の頬に手を添える。
「憐れみだけで自身の伴侶は決めないよ。それに、私の伴侶はそんな安い気持ちでは選べないからね」
一瞬にして頭が冷める。
『私の……』つまり、建前の自分がそこにいるのだろうか?
多分アルはそれなりの身分ある人なのだ、そんな人だから相手の身分も妥協出来ないと……じゃあ、私を選んだのは?
「ジュリアは私が何者かも分からず助けてくれた。多分ジュリアに会わなければ死んでいたと思う」
確かに……あのまま教会にいたらろくな治療もして貰えなかったと思う。
だってあの神父、金に意地汚かったから。
「一度は捨てた人生をやり直すのに、君は女神様が送ってくれた光にも思えたんだ」
まぁ、女神様関連で言えば関係者なんだけど……光?と言うより闇に片足入っているんだけど。
「ジュリア。君に光を見出だしたと言ったら信じるかい?」
それはアルにとったらどちらの顔が言わせているのだろう?
『私』それとも『俺』?
「拾った人生に君は責任がある」
「へっ?責任?」
多分私は、今だかつてない位のアホ面をしたのだと思う。
だって、何で助けた命の責任をとれって言われているのか理解出来ないからだ。
「私は兄弟達に刺客を放たれ逃げて来たんだ。生きていると知られればきっとまた命を狙われる」
その言葉に私の死亡フラグの言葉が結び付く。
「この呪われた身で、命まで狙われて、私は心の拠り所を無くしていたんだ」
切実な言葉に私の心が揺らぐ。
「だから……私の心の家族になって欲しい」
そう言ってアルは私の左手を取り指先へと口付ける。
そっと触れる唇。
次第に手の甲、腕と口付ける場所を変えて行く。
既に脳が思考を停止していた。
そんな私にお構い無しと、アルは首筋にまで口付けて来る。
「このキス魔!!」
思いっきり胸を押していた。
「じゃあ、貴方が私を婚約者にしたのって助けて上げた私に対する責任から?それとも性格も見た目も残念な勘違い令嬢への恩返しの義務から?」
何だろう。
この胸がムカムカする感じ。
つまり妥協?
アルは私の事何とも思っていなかったの?
「違うよ。何でそこまで自分を卑下するのかな?俺の相手に選んだのは君が俺に優しくするから。それに好きじゃない女性にこんなキスしない」
そう言って今度は唇を重ねて来た。
優しいキスにクラクラする。
確かに……今の私は体重100キロを越える巨漢のデブ令嬢、好きでもなきゃキスなんて無理だろう。
これで好きだと言われたら「お前デブ専かよ」と言ってやりたい。
でも、アルは私の優しさにひかれたって言っている。
だから、私はそう結論付ける。
考えようによってはそんな所も超現実主義。
でも、そんな私をアルは好きって言ってくれた。
「貴方可笑しいわよ……今までこんな私、身分を取ったら誰も相手にさえしてくれないのに……」
そう言うと涙が出て来てしまう。
だって……そんな風に見てくれる人なんて今までいなかったから……。
私は嫌われ者の悪役令嬢なのだから。
「泣いた君も可愛い」
そう言ってアルは私の涙を舐めとった。
………………。
ノア王子顔負けの甘々さに腰が砕けそう。
そんな私を楽しそうに見ていたアルが
「そんな初な所も好きだよ」
そう言って私の瞼にキスを落とした。
萌え死にそう……。
……完全に落ちた。
悪役令嬢……ここに撃沈致します。
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