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「ほおお…これは…炒めたライスに卵と海鮮が入っているのか…海鮮丼の亜種のようなものかな?」
「香ばしく炒めることで旨味を引き出したと言うことね。」
「ふーん、美味しそうだけどさっきのに比べると味のパンチは弱そうだね。」
審査員たちが海鮮炒飯を見て各々の意見を述べる。
先ほどの炙りマヨは全くの未知の見た目であったため想像がつかなかったが、ソラの料理はザウスランドで見慣れた食材の組み合わせであったため、見た目でそこまでの驚きはないようだった。
そんな中、唯一老人の審査員が厳しい目で海鮮炒飯を見つめていた。
「皆気づかんか…見た目こそありふれてはいるがこの香り…香ばしいなどと言う言葉では言い表せない…なんなのだこれは!」
わなわなと震えた様子で炒飯の皿を持ち上げながら老人の審査員が言う。
「確かに、ただ炒めただけの匂いじゃないね…。」
「香ばしい、だけではなくそれよりも豊かな香りが…。」
「なんとも食欲を刺激するぅ〜!」
審査員達は、老人の審査員の言葉を受けて海鮮炒飯の匂いを嗅ぎ感想を述べる。
「おーっと!見た目こそインパクトに欠けますが審査員の反応は上場かー!?確かに良い香りです!何故か涎が込み上げてきます!」
そんな審査員の様子を盛り上げる司会者。
評価は上々な様子でソラはニヤリと笑う。
「いざ、実食!」
老人の審査員がまずはスプーンを使い、満遍なく具を乗せた炒飯を口に運ぶ。
さらに他の審査員も続けて炒飯を食べ始める。
暫しの沈黙。
そして…
「「「「「美味っ!!!!」」」」」
審査員全員が目を見開き、発光を始めた。
「な、なんなんだよこの味は!今までに食べた何よりも味が強い!」
青いオーラを纏った青年審査員が叫ぶ。
「そして、この不思議な味が、ライス、タマゴ、海鮮、全ての味にバフをかけているようだ…。」
黄色いオーラを纏ったナイスミドルな審査員が恍惚の表情を浮かべる。
「ああ、こんなの味の暴力だわー!」
桃色のオーラを纏った美人審査員が悶える。
「こんなの、耐えられないよぉ!」
赤いオーラを纏った少年審査員が仰け反り叫ぶ。
そして、全身黄金の光に包まれた老人審査員が、いつの間にか空になっていた炒飯の皿を前に突き出し叫ぶ。
「おかわりぃ!!!!」
その瞬間、会場は歓声に包まれた。
「おーっと!おかわりが出ました!今大会初のおかわりだぁー!」
司会者がそう実況するが、ソラはどうしてそんなに盛り上がっているのかわからなかった。
そんな様子を見て、司会者はマイクをオフしてソラに語りかける。
「ソラ選手は初めての参加でしたね、あの方のおかわりはこの大会で一度出るか出ないかの最高の賛辞なのですよ。」
と、盛り上がりの正体について教えてくれた。
「さあー!これは勝負が決まったかー!?両選手の実食が終わりましたので審査に参ります!」
再びマイクをオンにして司会者がそう言うと、審査員が赤と青の札を手に取った。
唯一老人審査員は持ってきてもらった炒飯のおかわりを食べている。
そしてドラムロールが流れたのち、「それでは結果発表ー!」
と司会者が叫ぶと、一斉に札が上がる。
審査員が全員青色の札を上げており、書かれていたのはソラの名前であった。
「満場一致!ソラ選手の勝利です!!!」
「「「ソーラ!ソーラ!ソーラ!」」」
司会者が勝者の名前を告げると、会場にソラコールが巻き起こる。
「よし、勝ったぞ!」
ソラは照れながらも、腕を突き出して勝ち誇る。
「ば、馬鹿な!?ワシの料理が負けるはずないね!」
そして、ソラに敗北したユピーは、がくりと膝から崩れ落ちた。
そして、そのまま項垂れると悔しそうに地面を叩くユピー。
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な…こんな事が許されるはずないね…!」
そう呟くユピーの目にはどす黒いものが渦巻いていた。




