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「美味かったなー、天ぷら。」


関係者席の試食が終わり、ソラは先ほど平らげた天ぷらに想いを馳せる。


「ソラさんはホント真剣に食べてたよね。表情が色々変わってて見てて楽しかったかも…。」


サクラが先ほどのソラの食べっぷりを思い出してクスりと笑う。


「はは、恥ずかしいとこを見せちまったな。でも凄かっただろ?素材の味はまあ俺たちの世界とは違うけどよ、カウンターとかで食べる天ぷらの揚げ具合はさっき食べた奴みたいに絶妙なんだよ!」


ソラは照れ隠しなのか、ただ単に語りたいだけなのか先に試食した天ぷらについて熱く語る。


「そうだね!全然おうちの天ぷらとも違ってて、衣もサクサクなのにフワッとしてておうちの天ぷらとは全然違って感動したかも!」


「そうだろそうだろ、まあこれぐらいのを店で食べようと思うと値段が目ん玉飛び出るぐらいするんだけどな。」


「へー、食べて見たいな、今まで私はおうちだとママが作ってくれた天ぷらしか…カニも本物じゃなくてカニカマで……あれ?」


気づけば、サクラは涙を流していた。


家の天ぷらを思い出して、突然なんとも言えない寂しい気持ちが込み上げてきたようだ。


そんなサクラの頭にソラはポンと手を置き、優しく語りかける。


「それなりの値段で美味い天ぷらを食える店を知ってんだけどよ、帰ったら一緒に行こうな。奢ってやるからよ。」


「…う、うん。」


「あーでも、元に戻ったら俺はおっさんだから絵面的にはまずいことになるかもな?女子高生にお金払ってデートしてもらってるみたいな…?」


そして、おどけてみせるソラ。


「…ふふっ、ソラさんって元はそんな感じのおじさんなの?」


サクラは思わず笑ってそう返す。


「ははっ、そんなヤバそうな見た目じゃねえけどな。まあ小綺麗にしとけば親子ぐらいには見えるかな?」


「じゃあその時はパパって呼べばいい?ふふ、そっちの方が危ない人みたいだね!」


「おいおい、勘弁してくれよ。」


気がつけば、ソラとサクラは和気藹々とした雰囲気に戻っていた。


先ほどの涙はあっと言う間に引っ込んでしまったようだ。


(あー!里心つかせて泣かせちまった!)


はははと笑う表面とは裏腹にソラの内心はとても焦っていた。


ソラはこれまで余り家庭料理に近い和食を作らないようにしていた。


普通のご家庭料理の和食がゴンやルビィにはあまり良い評価を得られなかったのもあるが、サクラがホームシックにならない様にも気を使っていたのだ。


それが、つい久しぶりの天ぷらで完全に油断してしまっていた。


(ちゃんと帰らせてやらないとな、そして俺も…)


改めて決意するソラだった。


「おや、審査が終わった様ですね。」


ソラ達をよそに、ずっとステージの様子を見ていたゴンがソラたちに告げる。


「お待たせしましたぁー!第一試合の結果を発表致します!」


そしてすぐに司会者の声が会場全体に響き渡る。


「負けちまえー!レオン!」


「パッカ…!」


野次を飛ばすパッカをスージーが睨む。


直後、会場が暗闇に包まれ、ドラムロールが鳴り響く。


デデン!と一際大きい音が鳴り、審査員の5人が照らし出される。


審査員は各々、赤い板と青い板を持っており、赤い方にレオン、青い方にラージャの名前が書かれていた。


そして、一斉にどちらかの木の板を掲げる。


「レオン!レオン!レオン!ラージャ!レオン!…と言うことはぁ……勝者!レオンンンンン!!!!」


そして司会者が声高らかに勝者の名前を告げると、会場に明かりが戻った。


ワアアアアアアアア!!!!


会場が歓声に包まれレオンを祝福する。


「ッチ、まあまだ一回戦だからなぁ…今にみてろよぉ…。」


一人だけパッカが悔しそうに唇を噛む。


「うまかったよ!」


「ラージャさんの唐揚げも絶品でした。」


ステージでは、レオンとラージャお互いの健闘を称え合い、握手を交わしていた。


「それではぁー、次の試合は4時間後に行います!審査員の皆様もそれまでにお腹を空かせてお待ちください!」


そして、司会者がそう言うと、レオン、ラージャ、審査員と順にステージから姿を消して行った。


その後、第二試合は焼き料理対決で串焼き屋台のオヤジが勝ち抜き、その日の料理大会は閉幕したのだった。


2日目は、第三試合でスイーツ職人のイケおじ、第四試合で主婦の美人ママ、第五試合で謎の老人が勝利したようだ。


そして、3日目、ようやくソラの出番が訪れる。

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