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「完成ーーー!両者の料理が出揃いました!いよいよ実食です!」

司会者がそう言うと、スタッフが皿に盛りつけられた料理を審査員席に運ばれていく。


「では早速!ラージャおばさん特製からあげの実食だぁー!」

司会者の合図で審査員は一斉にラージャの作った料理の皿を手に取った。


「さあみんな!たーんとお食べ!美味いよ!」

とラージャが言う。


「おお、なんとも食欲を唆る香りだ…!」

ごくりと唾を飲む青年審査員。

「圧倒的に肉感…!一切れがでかい!まさにこれは我々が愛した定食屋さんの唐揚げだ!」

唐揚げをじっと見つめて叫ぶナイスミドルな審査員。

「ああ、早く食べて欲しいって唐揚げからの声が聞こえるわー!」

などと言いながら体をくねらせる美人審査員。

「ふーん、中々うまそうじゃん?」

小生意気そうな少年審査員が上から目線のコメントを投げかける。

「言葉はいらぬ、舌でとくと対話させてもらうとしよう。」

厳つい老人審査員はそう言ってフォークを手に取る。


「さあ、お熱いうちに食べとくれ!」

「うむ!」

ラージャが促すと、老人審査員はパクリと唐揚げを口に運ぶ。

それに続いて、他の審査員たちも唐揚げを口をつける。


黙々と唐揚げを一つ食べきり、暫しの間が流れる。


審査員達の動向を見守るように、会場は静まり返る。


「うむ!!!美味し!!!!」

その沈黙を破ったのは、老人審査員であった。

「カリカリに揚がった衣の食感、その下から溢れ出るジューシィな肉汁!濃い目の味付けと合わさってその全てが渾然一体となり舌の上を駆け抜けていく!!!」

そう感想を述べると共に、老人審査員の周りには光り輝く巨大な唐揚げの幻影が飛び回っていた。


老人審査員はそのまま宙に舞い、全身を光り輝やかせる。


「おい、なんだありゃあ?」

その様子を見ていたソラが疑問を口にする。

「なんか料理漫画の演出みたいになってるね…わざわざ魔法をいくつも使ってまで…こんな使い方もあるんだ…。」

呆れたような感心したような、複雑な気持ちを述べるサクラ。


その間も審査員の魔法を使った派手な食レポは止まらず、巨大なコカトリス、マンドラゴラのようなニンニク、肉汁の洪水の幻影が次々と浮かび上がる。


「ここまで行くとエンターテイメントとしてなかなかのもんだなぁ。こりゃ人気もでるわけだ。」

「そうだね、結構楽しいかも。」

ソラ、サクラが感想を言い合っていると、関係者席にも唐揚げが運ばれてくる。


「…きた!」

ギラリとルビィの目が光り、いち早く唐揚げを手に取り食べ始めた。


「おいおい、落ち着いて食えよ。っと、俺もありがたくご相伴にあずかりますか!」

そう言ってソラは唐揚げを食べはじめた。


サクリ、もちもち。

「うん、美味いな。」

唐揚げは、鳥肉自身の味が濃く、ちょっと良い唐揚げだなと言うのがソラの感想であった。


「んー、良い味だね、コカトリスの胸肉…かな。味が引き締まってても硬すぎず…」とグリンは食レポをはじめていた。


ソラはそんなことよりも次の天ぷらが楽しみで、グリンの食レポを聞き流しつつ会場のレオンを見つめていた。


そんなソラを、1人の少女が睨みつけていた。

(むー、なんなのよ、あの子…)

ソラを睨みつける少女、レオンの幼馴染であるスージーはもやもやしていた。


スージーもまた、レオンの店の関係者と言うことで、関係者席にいた。

彼女は、レオンに対して意味ありげな事を言っていたソラのことが気になっていた。


ソラが来てからと言うもの、レオンは時々物思いに耽る事が増えていた。

そんなレオンの様子を見てスージーは、

(まさか、一目惚れしたの?確かに可愛くて爽やかだったかもだけど…朴念仁のレオンに限ってそんなこと無いと思うけど!)

などと考える。

レオンに想いを寄せるスージーは、もしかして恋のライバルが現れたのではないかと気が気でなかったのだ。


現に、当のソラはレオンに熱い視線を送っているではないか。

もっとも、それは天ぷらへの熱い視線なのだが恋は盲目。

スージーのソラに対する警戒レベルを上げることとなった。

(しかも、レオンの料理の事を嬉しそうに話しちゃって…!)

もはや、言い掛かりレベルの嫉妬心である。


そんな熱視線に気がついたソラはスージーの方に顔を向ける。

(なんだ?あの嬢ちゃんは確か、レオンの店の関係者か…嫁さんかな?ライバル店だからってえらく睨まれてるな…。)

当然だが、スージーの真意などわかるはずもなく、ソラはただのライバル視だと考える。

(俺に敵意は無いから取り敢えず愛想よくしとくか。)

そう思い、ソラは柔らかく微笑みスージーに向かって手を振った。

その笑顔に、同性とは思いつつも思わずドキッとしてしまうスージー。

強い感情を抱いていたせいか、心なしか胸がキュンとしてしまっているようにも思えた。

(な、なんなのよ…もう…!)

これ以上考えるのが恐ろしくなり、スージーは思考を停止する。

顔を赤らめ俯くスージーを見て、ソラは(敵意が無いことは通じたかな?)と思い再び会場を見やる。


「さあ!ラージャおばさんの料理の実食が終わりましたぁっ!!!!」

とタイミングよく司会が声を上げる。


次はいよいよソラの待ち望んでいる天ぷらの実食である。

「天ぷら…食える!」と小声で呟き期待を隠しきれないソラ。


間も無くして、審査員の前にレオンの料理の皿が並べられた。

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