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-91- 料理トーナメント 開催

料理トーナメント会場は、円形のスタジアムで開かれていた。

客席に囲まれた広場にはステージが一つ、ステージの上には審査員と思わしき人物が5人座っており、その前に1人司会者と思わしき人物が立っている。

さらに、ステージの両脇にはキッチンが二つ、山ほどの食材が積まれたテーブルがあり、キッチンの前に各々の選手が控えていた。


パッと光が司会者と思わしき人物を照らす。

「さあ!始まりましたザウスランド料理トーナメント!第一回戦の開幕ですっっっ!!!」

特大のリーゼントヘア、全身にラメの入った派手な服を着た司会者が杖に向かって叫ぶと、その声が円形の会場に響き渡る。

どうやら杖は声を拡張するものらしい。


司会者の開催の合図で会場からは喝采が上がる。


「出場者はこちらーっ!みんなの定食屋さん、ドカ盛り!激安!コスパ最強!宵のシャチ亭の肝っ玉おかみ!ラージャおばさんだぁー!!!」

司会者が会場のキッチンに立っている恰幅の良いパーマのおばちゃんを指差す。

彼女、ラージャは会場に向かって手を振ると、客席から応援の声が上がる。


「対するはこちらぁー!!!皆さんご存知ッ!!!我が国のワショクの第一人者!!!レオンの店店主!!!!レオン!!!ダーッ!!!!」

次に、反対側のキッチンに居たレオンを指差す司会者。

すると、会場は凄まじい大歓声に包まれた。


「うおっ、すげえ人気だな…。」

関係者席に座ったソラが、まるでスターの登場のような歓声に驚きそう漏らす。

レオンの店は不調ではあるのだが、料理人としての知名度、人気は矢張り凄いらしい。


「バラエティ番組みたいだね!ソラさん!」

元の世界のテレビ番組のような構成に懐かしさと嬉しさが合わさってかサクラはテンション高めだった。

「ああ、懐かしいノリだなぁ。」

ソラも久々に目にするエンターテイメントショーに元の世界を思い出す。

少ししんみりしてしまっている様子だ。


「それよりも、最初の試合のテーマを発表するみたいですよ!」

ゴンがそう言うと、会場にドラムロールが鳴り響く。


「んんんー最初のお題はぁーーーー……」

と大きくタメを作る司会者に、ピタリと止むドラムロール。


「揚げ物だぁーーーー!!!!」

ドジャァーン!と言う効果音と共に、最初の試合のテーマが発表される。


「揚げ物かぁ、結構見たよな。屋台とかでも。」

「そうですねぇ、私はおいもフライが好きですよ。」

「私はやっぱり唐揚げかな。」

「ふむ、私はあまり揚げ物は好きではないな…。」

「…エビフライたべたい。」

「言われるとどれもこれも食いたくなってくるな…。」

いつのまにか好きな食べ物の話にシフトしてしまうソラ一行。


キッチンでは既にレオンとラージャが動き始めていた。

ラージャはまず食材置き場から大きな鳥肉を手に取り料理を開始する。

レオンはエビや貝などの海産物と、葉物野菜をいくつか取って料理するようだった。


「お肉と魚介ですかー、お肉の方が有利な気がするんですけどどうなんでしょうねえ。」

「あのおばちゃんが何を作るか分からねえけど、この国ならやっぱり、魚介の方が人気なんじゃねえか?」

「でも味対決ならやっぱり濃い味の肉が有利なんじゃないかな?」

ソラは鮮度抜群の魚介が有利と感じたが、どうもゴンとグリンは違うらしい。

「なんかこっちの世界の人って基本的に濃い味好きなのかな…?」

首をかしげるサクラ。

「まあ、そうだろうな。そんな中和食でやってけてるんだからやっぱあの大将はすげえよ。」

なんとなく理解していたソラは、改めてレオンの凄さを認識する。


レオンの手元を見ると、料理がどんどん進んで行っていた。

魚介類の下ごしらえを終えて、油を鍋に用意しつつ、ボウルに衣を用意していた。

「お、天ぷらか!」

思わず身を乗り出すソラ。

「天ぷら…と言うのはワショクかい?」

グリンはソラに尋ねる。

「おう、そうだな。まあちょっと粉の違う唐揚げみたいなもんだ。衣をつけて具を揚げる料理だ。元はポルトガル語で調味料を使って揚げるてんぺらって言葉から来てるだかなんだか聞いた事があるがまあ諸説あるらしい。」

思わず早口になるソラ。

「ポルトガル…?よくわからないがソラさんがそんなに語るぐらい好きな食べ物なのか…?」

「ああ、大好きだぜ!」

そう言ってソラはニコリと笑った。

よっぽど天ぷらが好きだったらしく、満面の笑みである。

「ソラさん…可愛い…。」

「いいえがお…。」

「か、かわ…こんなに無邪気に笑うソラさん初めて見たよ…。」

その笑みにグリン、ルビィ、サクラは思わずドキリとしてしまった。


「おばさんの方はそのまま唐揚げみたいですね。味付けしてもみもみしてますよ。」

ソラが早口になりはじめた辺りから興味を失い、ラージャの様子を見ていたゴンが言う。


「おお、一気に大量に仕込んでるんだな。食堂の唐揚げって感じでいいじゃねえか。」

「そう言えばレオンの方も結構量が多いね。」

「なんだ~?お前ら、知らなかったのか?審査員だけじゃなくて対戦相手、関係者にも料理は振る舞われるんだぜぇ?まあレオンのメシなんて俺はゴメンだけどな!ぎゃはは!」

関係者席を2個占拠しながらパッカが口を挟む。


「マジか!てことは天ぷらも頂けるって事かよ!」

「落ち着いてソラさん…でも試食できるのは嬉しいかも!」

「役得だね、ソラさんの好きな天ぷらか…揚げ物は苦手だけど少し楽しみだな。」

試食ができると言う事でソラのテンションがぐんと上がる。

「からあげ…たべたい。」

ルビィも何気に楽しみなようでワクワクしている様子だった。


キッチンでは、レオンが衣をつけて天ぷらを揚げ始めていた。

衣には氷魔法を使い、炎魔法で油の温度を調整していた。

レオンがこの世界で身に着けた新たな調理法である。

プロの技術に加えて魔法と言う能力を身に着けたレオンはまさに無双であった。


レオンは、衣をつけた具を次々と油に投入していく。

身体強化、脳力強化の魔法を併用して手際よく、最高のタイミングで天ぷらを作り上げていく。

まさに芸術と言える出来栄えであった。


ラージャも味付けが終わったようで、熱した油に味付けした鳥肉を豪快に投入した。

ジュワワワと景気の良い音を上げて揚がっていく唐揚げたち。

油で熱されたそれは、芳醇な香りを辺りに振りまいていた。

ニンニク、ショウガの効いた香ばしい匂いである。

ラージャは長年定食屋を営んでおり、技術面ではレオンより劣るものの、試行錯誤を重ねたその味付けに絶対の自信を持っていた。


ほどなくして、二人の料理が出そろった。

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