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――――――――――――――――――――――

で囲まれた箇所は大きく脱線しています。

ゲル温泉での衝撃的な夜から一夜明け、翌日。

ソラは、仕事が休みだったので買い物に出かけていた。

ゴンとルビィも一緒にである。


昨晩、話し合った結果、ゴンとルビィはソラの旅に同行する事になっていた。

本日の買い出しは、その旅支度である。

一応ソラは既に旅に必要そうなモノは買いそろえていたが、それを冒険者としての先輩風吹かせたルビィがチェック、まだ足りないと指摘が入ってしまい、一緒に買いに行く事になったのだった。


「旅に必要なもの…それは武器、武器があれば…なんでもできる…」

とのルビィの弁を頼りに武器屋に向かっていた。

武器屋は街はずれの人気の少ない岩石地帯にあると言う事で、街の中心からどんどん遠くへ離れて行っている。

岩をくり貫いて作られた暗い路地をひた進む。


街と言うものは人気が少なくなると、よからぬ人物のたまり場になる事が多々ある。

路地裏、暗がり、そして街外れも然り。


ソラ達の行く道の先に、荒くれと言った風貌のオーク達がたむろしていた。

緑色した巨漢の豚男たちはモヒカン、トゲトゲのショルダーガードをお揃いで身につけており、

各自体の至る所にタトゥーを入れていた。

彼らを見止めるとソラは思わず「ゲェ…」っと声に出し嫌悪感を露わにした。

すると、彼らもソラに気付いた様子で一斉にそちらを見る。

「うほっ!」とひときわ大きなモヒカンをしたオークが歓喜の声を上げた。

そして、集団はぞろぞろとソラの方に向かってくるのだった。


「どうしたの…?」

今にも逃げたそうなソラの様子を見てルビィは尋ねた。

「いや、あいつらこっち来るから近づきたくないと言うか、一回帰らないか?」

歩いてくるオークの集団を見て、首をかしげるルビィ。

「大丈夫だよ、あの人たち…悪い人…?じゃない…?と思うし…」

一応見知ってるルビィが危険は無いと言う。

「そうですよ、ソラさん、人を見た目で判断しない方がいいですよー。」

とゴンも咎めた。

「いや、そうじゃなくてな…」

とソラは説明しようとするが、その前にオークの集団達がソラ達の目の前にたどり着いた。


「ブヒヒ…美少女発見伝~!」

にたりと笑って近寄る巨モヒカンのオーク。

「おいっすー…」「どうもーおはようございますー」と気軽に挨拶するルビィとゴン。

「…おはようございます。」挨拶をしないのは実際に失礼なので、ソラも精一杯他所他所しさを押し出しながら会釈した。

「それじゃあ、急いでるんで…」

そして、そそくさとオーク達を迂回して通り抜けようとするが、巨モヒカンが立ちふさがる。


「待ってよぉソラちゃ~ん!お話しようよぉ~」

そう言って巨漢をソラの目線に合うようにしゃがみこんだ。

「おや、お知り合いだったんですか?」

とゴンはソラに尋ね、ソラは小声で答える。

「まあ…」

「知り合いだよぉ!もう僕たち仲良しだもんねぇ!」

ゴンとの間に割り込む巨モヒカン。

さすがにその挙動にはゴンもルビィも気持ち悪いと感じ、なぜソラが嫌そうなのか察した。


―――――――――――――――――――――――――

オークリーでの生活を始めてからおよそひと月、ソラはこの豚共に何度も言い寄られてるのだった。

最初に出会ったのは、酒場で飲んでいる時に隣の席に居たから、雑談相手にと話かけた時だった。


その時点では、ソラはオークと言われる種族はラケルの事しか知らなかった為、悪い印象を抱いていなかったのだ。

だが、会話していると、顔を見ているようで、体の方を嘗め回すように見られているのが分かった。

その時は、若干の不快さを感じながら(俺も色っぽい子と話す時はこんな視線出してるのかな…)などと考えていた。

男から性の対象として見られるのはこんな感じなのか、俺もそうなってたかも知れない、今後気を付けよう。

そう心に誓いつつも、自分から話かけた手前、我慢していた。


飲みながらぼちぼち会話していると、巨モヒカンがどんどん慣れ慣れしくなってきた。

(これは、あれだ…キャバクラ勘違い現象だ…)


―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――

ソラは、今年から入ってきた新入社員S君の事を思い出す。


S君は内向的な性格で、女の子と接触があまりない男子だった。

だが、職場に馴染もうと一生懸命で、S君が入社してしばらくしてからの飲み会の後、一部のおっさん勢が二次会でキャバクラ行くぞ!と言う話になった時に、進んで同行してきたのだった。

しかし、女の子と話慣れていないS君は、案の定同席したキャバ嬢との会話は盛り上がらなかった。

共通の話題の引き出しが少ないS君が、嬢の話を聞いて相槌を打つぐらいでしかなかった。

そんな状態がしばらく続いたが、あるタイミングでS君の方が急に饒舌になっていた。

S君が持ち前の知識(雑学・アニメ・ゲーム)を披露して、それに対して嬢が「へー!」「すごーい!」と反応する。

そんな会話を繰り返し、しばらくしてから退店した。

キャバ嬢達が「今日はとても楽しかったです。またいらしてくださいね。」と当たり障りのない挨拶をしてその日は解散となった。


その日から、S君のキャバクラ通いが始まった。


最初は、「話が合う子なんです!」と楽し気に報告してくれていた。

それが、次第に「あの子と会うのが楽しい!」「彼氏いないんですって!」となっていく。

最後にはもう「はぁ…好き…」となっていた。


そして、S君のキャバクラ通いから半月、彼はキャバ嬢に告白し、フラれた。

空は落ち込むS君を飲みに誘い、話を聞いてあげる事にした。


「彼女、絶対僕の事好きだと思ってたんですよ…彼氏居ないって言っても旦那さん居るとか…酷いですよね…」

そう語るS君。

ニコニコと話を聞いてくれる、僕の事に興味がある、好きなんじゃ?となっていたらしい。

空は、それはお金貰って会話してるからだぞ、と思ったが言わない事にした。

連絡先も交換していなかったらしいのに、そこまで勘違いしたS君の愚痴を

ただ黙って、聞き続ける。それが空の優しさだった。


そして、空はS君から、学ぶ。

当たり障りのない対応だけで、勘違いしてしまう人間が居る事を。

―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――

故に、ソラは好意や下心を持つ男相手には、下手に勘違いさせないように努める事にした。


酒場から帰る時、また会おうと言ってきた巨モヒカンに対して。

「今日、たまたま同席して話し相手をしていただけだだけで十分です。お話できたのは楽しかったですけど、次はあまり必要無いと言いますか、誠に申し訳ありませんがお断りさせていただきます。」

と失礼にならないように、さらに出来る限り他人行事で、丁寧に拒絶したのだった。


だが、他人行儀、余所行きの口調が災いした。

ソラは普段はがさつなしゃべり方をしているが、丁寧に話したり余所行きの口調を使えば、その姿と相まって品のあるお嬢様に見えてしまうのだ。


美少女からの丁寧な拒絶、それが巨モヒカンのオークのハートに火をつけた。


クロスはそれから、ソラを見かける度にしつこくアプローチを繰り返した。

その都度ソラは丁重にお断りしてきたが、次第に嫌悪を感じ、対応もどんどん冷たくなっていくのだった。

―――――――――――――――――――――――――

ブヒブヒと鼻を鳴らしてニヤニヤしている巨モヒカンのオークに仲良しと言われて顔をしかめるソラ。

出来るだけ視線を合わせないようにし、突き放すべく言葉を発する。

「近寄らないで頂けますか?鼻息が荒くて気持ち悪いので。」


シンプルで、わかりやすい拒絶の言葉。

それを受けて、巨モヒカンはよたりとした足取りで後ろに下がる。

そのまま転倒しそうになった所を他のモヒカンオーク達が抱き留めた。

巨モヒカンはハァハァと息を切らせながら

「いただきました…」と呟く。

そして、なんとか自分の力で立ち上がり叫ぶ。

「気持ち悪い頂きましたーーーーッ!」

「「ウオオオオオオオオ!!!」」

他のモヒカンオーク達から喝采が上がる。

そして沸き上がる「気持ち悪い」コール。


盛り上がる彼らを他所に、ソラはルビィとゴンを引っ張ってオーク達をそそくさと迂回した。


「うわぁ…ドン引きですよ…」

「あれは…ない…」

ルビィとゴンも今後彼らをまともに見る事はできなくなった。

モヒカンオークの集団は、ウザく、気持ち悪かった。


盛り上がるオークの群れから離れて、ソラは一息つき。

「早く、武器屋行こうぜ…どんな武器が俺に合うかなあ…楽しみだなあ…」

さっきの集団は見なかった、無かった事にするぞと露骨に話題を変えた。

意図を汲み取ったルビィとゴンはその流れに乗る。

「ソラの武器…どんなのが…似合うかな…」

「エルフだし弓とかですかねー、でもジョブはサモナーですからやっぱり杖がオススメですよ。」

「杖って鈍器にすんのか?」

どうやら話題の変更には成功したようだ。

武器の事を考えて極力先ほどの集団を記憶の片隅に追いやろうとしている。


しかし、ソラには気がかりな事があった。

「そういや、俺って魔法使えるのか?」

今更な事を口にする。

この世界のファンタジーっぷりは理解してきたソラだが、自分が魔法を使うと言われてもできる気がしなかった。

「できるはずですけど…?サモナーですから召喚魔法は…そう言えば召喚手帳が妙でしたねえ…」

ソラの召喚手帳は、資格の認定書と免許証で埋まっていたのだった。

ソラはそれを自分の証として、肌身離さず持ち歩いている。


うーん、とソラとゴンが頭を捻っていると一段と広い岩場に出る。

「ついたよ…魔法は、あとで試せば…?」

とルビィは二人に声をかける。

声をかけられ、ソラは辺りを見渡す。

そこには、岩場の中に小屋が二つ。

片方は剣の石像が前に置かれており、いかにも武器屋だろう。

もう片方の小屋は、煙突が出ており、武器の工房と思われる。

どちらも大きな岩をくり貫いて作られているようだった。


「おお、かっこいいな…」

ソラがほぉーと見とれていると、ルビィとゴンがさっさと剣の石像が置かれた小屋に向かう。

「こっちが武器屋…いこ?」

立ち止まっていたソラを促す。

「ああ、行こうか。」

はっと見とれていたことに気づき、気を取り直してソラはルビィ達に続いて武器屋へ向かうのだった。

※S君、並びにS君にまつわるエピソードはフィクションです。

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