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-87- 楽園 ザウスランド

そこは常夏の楽園。

海を見れば、白い砂浜、マリンブルーの海。

海水浴を楽しむ者も居れば、異世界であるにも関わらずサーフィンをする若者の姿も見られる。

堤防では釣り人の姿も多く見られた。


陸を見れば、南国情緒溢れる街並みが続いており、市場も賑わいを見せていた。

そして、その向こうには巨大な巻貝のような塔がそびえ立っている。


「おー、いかにもな南国って感じだな!あの塔以外は。」

「まさかサーフィンをしてる人が居るとは思わなかったよ。なんだかいつも以上に異世界って感じがしないね。あの塔以外は。」

ソラとサクラそう言ってそびえ立つ塔を見つめる。


「はは、二人とも、あれは塔じゃないよ。その昔討伐された大貝獣エンズアーサーの化石さ。信じられないぐらい大きいだろう?」

陸に上がって船酔いとは完全にサヨナラして、元気になったグリンがソラとサクラに得意げに説明する。


「だいたい200年前でしたかねー、当時の魔王が人類を滅ぼす為に作り上げた合成モンスターなんですけど、大魔導師ザウスにやられて石になってしまったんですよ。それが素材の宝庫で当時は商人やら冒険者やらで溢れて、そのうち周りに街ができたんですよ。今ではその素材も採り尽くされて、外殻が丈夫な事を利用して、国の中枢機関が入っているとかなんとかです。」

さらに、ゴンが歴史を詳しく説明する。


「はー、大昔はあんなんが生きてたんだなぁ…化石でもインパクトあるんだから、さぞ迫力あっただろうなぁ。」


ソラが感心していると、ルビィが

「名物は、お魚、すし…あとイコの実の果汁がおいしい。」

と、名物料理について付け加える。

暗にお腹が空いたと言っているのである。


「おう、なら喉が渇いてるしイコの実ってやつから行ってみるか。こんだけ南国っぽいと案外ヤシの実みたいなもんかも知れねえな。」

「楽しみだね。じゃああの露店が並んでるとこに行ってみる?」

「そうだな。んじゃ飲み食いに行きますか。」

そう言ってソラたちは人で賑わう市場の方へと歩き出した。




「これが、イコの実か?」

イコの実が売っている店はすぐに見つかった。

だが、その形にソラとサクラは困惑を隠せなかった。


「なんか、ペットボトルみたいだね…。」

「おう、そうだな。」

サクラの言葉にソラは同意する。

イコの実の形は、釣鐘のような形をしており、先端からは細長い管が伸びて居た。

飲み口の細長いペットボトルのような形であった。

だが、外側は茶色く、ヤシの実のような質感ではあるのであくまで形が似ているだけだ。


「お客さん、観光客かい?イコの実を飲むのは初めて?」

形を見て困惑していたソラとサクラにイコの実売りの男が声をかける。

どうやって飲むのかわからずに困惑していると思っている様子だ。


「まあ、はい。」

言われたことら事実なので取り敢えず肯定するソラ。


「お連れさんはわかってるみたいだけどね、イコの実は先端から飲むの。先端の管が塞がってるけど、こうやって飲みたいって心で念じれば…!」

ポン!と音がして、イコの実の管が中央から取れた。

グリンやルビィは元々知っているようで、既にイコの実に口をつけて飲んでいた。


「へぇー、心で開けるのか…ハイテクだな。」

「ハイテクって…そもそもテクノロジーが違うと思うけど。」

そう言いながら二人はイコの実を手にとって言われた通りに念じてみる。


すると、ポポン!と音を立ててイコの実が口を開いた。


「おおー、なんか気持ちいいな。」

「そうだね、それで味はどうかな?」

そう言ってソラとサクラはイコの実に口をつける。


イコの実の果汁が、管からソラの口に滑り込む。

その瞬間、ソラは口内で冷たさを感じた。

(キンッキンに冷えてやがる…)

なんと、常温で売られていたと言うのに、冷蔵庫から出したばかりかのような冷たさだった。

そして舌に触れた果汁の風味が冷たいながらも南国の楽園を感じさせる。

未知の美味にソラは思わずそのまま、イコの実が空になるまで喉を鳴らした。


「うんめぇー!なんだこれ!なんつーか、ココナツとパイナップルのいいとこ取りみたいな味がするぞ!」

「うんうん、なんて言えばいいかわからないけど、最高に南国って感じの美味しさだね!」

「ん、おいし。」

「冷たくて気持ちがいいね。」

イコの実を飲んだソラたちが口々に賞賛する。

グリンとルビィは飲んだことがあるらしく、そこまで大きなリアクションでは無かったが満足そうだ。


「喜んで貰えてなによりです!他にもこの国には、新しい名物のスシ、ワショクと言ったものもありますから是非そちらも試してみてください!」

イコの実を飲み終えたソラ達にイコの実売りの男がにこやかにそう言った。


「寿司はともかく和食ね…。」

「ソラさん、和食ってやっぱり?」

「だろうな。寿司の時点でなんとなくそんな気はしてたが。」

「あー、でもワショクの総本店は人気店で、半年先まで入れないと思うので、ワショクインスパイア系がオススメですよ!」

ワショクと聞いて顔を見合わせたソラとサクラにイコの実売りの男が重ねて言う。


「インスパイアって…。」

「それでいいから、食べ物…いこ。」

何がツッコミを入れたそうなソラに構わず、ルビィは次の店に行く事を促す。


「はいよ、取り敢えず先のことは後で考えるか。どんな食べ物か気になるしな。」

「またどうぞー!」

ルビィを追って、マーケットの中を進むソラ達をイコの実売りは笑顔で見送った。


ソラは、歩きながら今後の事について考える。

なんとかして、和食を広めた人物に会う方法を。

この時、ソラはまだ気がついていなかった。

イコの実をはじめとして、ザウスランドの物価が高いこと。

そして、ソラ達の財布が軽くなってきている事を。


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