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ゴシゴシとデッキブラシで甲板を掃除する船員たち。

その中に一際異彩を放つ金色の輝きがあった。


船員と同じ服に包まれながらも輝くそれは、美しいエルフの少女ことソラであった。


「はぁー…年甲斐も無くやらかしたな…。」

などとボヤきながらもブラシを動かすソラ。


「カカカ、仕方ねえよ、誰も怪我しなかったけどよ、海龍がビックリして航路外れちまってんだ。これぐらいの掃除で許してもらえるなら御の字だぜ。」

そう言ってソラの隣で同じくブラシを扱う長い白髭の男が言う。


彼はソラを煽った野次馬の一人。

連帯責任でソラと共に船内の掃除を命じられているのだった。


「こっちの船は馬車みたいに生き物が動かしてるんだから、その辺り気を使わなきゃダメだったね…てなんで私も手伝わされてるんだろ。ソラさんに巻き込まれただけなのになー…。」

同じく掃除を手伝わされているセーラー服の少女、サクラがぼやきソラを睨む。


「う、悪い…つい調子に乗っちまってよ…。」

サクラに睨まれたソラは申し訳なさそうにし身体を丸める。


「良いよ、言ってみただけ。でもソラさんがあんな調子に乗っちゃうなんて珍しいよね。」

睨んだのは冗談だと言うのか、サクラは微笑みそんな事をソラに言う。


「あー、確かにな…あんま飲まねえけど悪酔いした時みたいな感じで良い気分になってたかも知れねえ。」

何故そんな気分になったのかソラは首を捻る。


「そりゃ嬢ちゃんが魔力酔いしてたんだろうよ。魔法は余り使い慣れちゃいねえみたいだな?」

白髭の男がそんなソラの疑問に訳知り顔で口を挟む。


「魔力酔い?なんだそりゃ?」

「魔法を使うために練りこんだ濃度の高い魔力ってのはな、上手く放出できねえと体の中を変な感じに巡ってハイになっちまうんだよ。そのうち自然に消えるし酒みてえに残りはしないがな。昨日の見せもんしてた時の嬢ちゃんは魔力ハイになってたのさ。カカカ。」

「そんな事があるんだな…為になったよ。ありがとな、えーと…。」

例を言おうとして、ソラはその男を何と呼べば良いか分からず言い淀む。


白髭の男は、齢を重ねたと思われる白髪、長い白髭で明らかに老人ではあるのだが、その身体は老いとは程遠く、ハリのある筋肉の鎧で包まれていたからだ。

爺さんと呼ぶには些か違和感を伴うことになる。


「おっと、名乗ってなかったな。俺はムガイ。よく老師とか呼ばれてるからお嬢ちゃん達も気軽にそう呼んでくれて構わないぜ。カカカ!」

そう言ってムガイは豪快に、老獪に笑う。


「おう、ありがとな老師。俺はソラでこっちはサクラだ。あんた魔法に詳しいのか?」

老師と言う呼び名や、先ほどの説明から何かを察したソラが尋ねる。


「おうとも、よく若い魔法使いの面倒は見てきたりしたな。お嬢ちゃんみたいな魔力の出し方が下手な奴もよーく見てきたさ。なんなら後で俺が直々に指導してやろうか?」

「通りで、老師って呼ばれてるわけだ。良かったらお願いしたいもんだが良いのかい?」

ムガイ老の願ってもない提案にソラは思わず食いつく。


「カカカ!面白いモンが見れるし良いってもんよ!まあ少しばかりお代は頂くがな!俺の授業は本当だったら中々受けられねえんだぜ?」

「なんだ、金取るのかよ…いくらなんだ?」

有料と聞いてソラは少しガッカリする。


そんなソラに向かってムガイ老はニヤリと笑って指を一本立てる。

「金貨1枚だ!」


「ああ、なるほどな。」

ソラは料金の意味を理解して、懐のから金貨を1枚取り出しムガイ老に投げる。

それは先ほどソラが花火を召喚する時に、ムガイ老自身がソラに向かっておひねりとして渡したものであった。


「よし、じゃあみっちり教えてやるぜ!掃除の後にな!」

「おう、頼んだぜ老師!」

交渉成立して再びブラシを持つ手を動かし始めるソラとムガイ老。


「掃除はちゃんとするんだ…。」

話の流れで後は任せたと言ってどこかに行くのかと思っていたが、真面目に掃除に戻る老人と少女(おっさん)を見てサクラは呟く。


「あ、それとな、サクラって嬢ちゃんはソラ嬢ちゃんの仲間なのか?」

そんなサクラに聞こえないようにムガイ老はソラに小声で問いかける。

「ん、そうだけど…それがどうした?」

「ふむ、何者なんだ?さっきの障壁魔法もあの嬢ちゃん自身もなんだが、全く魔力を感じなかったぞ?」

「よくわからんが、そう言うもんなんじゃないのか?」

「いや…魔法なら絶対に魔力を感じるはずなんだが…まあ良い、悪い人間じゃ無さそうだからな。まあ変なところが無いか気にかけておくと良い。カカッ!」

「お、おう。」

ムガイ老の言っている事が良く分からないが、取り敢えず頷くソラ。


そして、再び掃除に戻った3人は、日が暮れるまでには与えられた仕事を終えてようやく解放されるのだった。

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