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IQ低めなので気を付けてください。
ゴツゴツとした岩に囲まれた空間、白い靄が視界を奪う。
そんな場所を一糸纏わぬエルフの少女が歩いていた。
少女は靄の奥に向かって歩いていく。
そこには、既に多くの先客がいるようだった。
皆、恍惚の表情を浮かべ、緑色の粘液に体を委ねている。
その光景を見て、少女はこれから訪れるであろう快楽を想像し、顔を歪めるのだった。
「っくぅ~~~~!仕事上がりの温泉は最高だなあ!」
ここは、オークリーの最奥にある温泉、ゲル温泉。
温泉スライムと呼ばれるスライムの体液を岩作りの湯船に貯めて作られた人工温泉である。
温泉スライムの体液は常に40度前後の快適な温度を保ち、肌の保湿や肌荒れの改善に効果的。
また疲労回復効果もある至れり尽せりな温泉となる。
見た目は悪く、ぬるぬるねとねとな触感ではあるのだが、少量の水で簡単に溶けるので一瞬で洗い流せる
。
とても便利な液体なのだ。
富裕層では家庭用温泉スライムなども普及している。
ソラはそのゲル温泉に仕事上がりに通う事を日課としていた。
入るのは当然女湯である。
ラケルと邪竜を退治?しに向かった日、馬に乗ってだが、それなりの距離を移動した為結構な汗をかいていた。
その時、ラケルの勧めでゲル温泉にやってきたのだが、最初は男湯に行くか女湯に行くか迷っていた。
女湯に行くのには罪悪感と抵抗がある。
だが、男湯に行くと、不特定多数の男にこのエルフの少女の裸体を晒す事になる。
もし、そんな事になれば痴女でしかない。貞操は絶対無事では済まないだろうしそのうえ捕まる事もある。
ならば消去法で女湯しかないだろうと、仕方なく、仕方なく女湯に入る事にしたのだ。
それに、ソラはこの体を借り物だと思っている。
自分、樫林空の魂が、このエルフの少女の体を間借りしているのだ。
ハクからのネタバレを受け、樫林空の資格が書かれた羊皮紙の束を見た時からずっとそう考えていた。
ならば、借り物の体をキズモノにするわけにはいかないと固く決心したのだった。
なので、しつこいようだが、女湯に通うのは仕方のない事なのだ。
美容にも気を使ってあげようと言う優しさなのだ。
ソラは自分への言い訳をしながら辺りを見渡す。
そして、ため息をついた。
(あんまり見て楽しい人はいないな…)
心底残念そうである。
今、周りに居る人間はワーキャット、ホビット、ドワーフ、フェアリー、ドラゴニュートであった。
ワーキャットは猫の亜人とは違い、かなり人より猫寄りな種族であり、猫の体毛で覆われていて視覚的に興奮しない。
ホビット、ドワーフは成人していても子供のような体系でこちらもなんとも思わない。
フェアリーに至ってはお人形さんサイズなのでさらにである。
さらに、ドラゴニュートは全身固い鱗に覆われており、強そうとしか感じなかった。
ここ、オークリーは亜人が集う街である。
人間に近い者から、遠い者まで様々の種族が生活している。
故に、こんな時もあるのだ。
温泉スライムでぬるぬる遊びをしながら疲れを癒してると、温泉に新たな来客が現れた。
ソラは見知った来客に思わず頬が緩んでしまった。
ラケルとリリスとルビィの3人組だった。
彼女たちはソラの姿に気づくと手を振って近づいてきた。
「よう、ソラ!ルビィから聞いたけど今日は大変だったみたいだねぇ。」
ぬるぬるとスライムにつかりながらソラの隣にやってきたラケルが声をかける。
「お、おう…」
相槌を打ちながら、ソラの視線はラケルの体に向かう。
緑色の肌をしているが、体つきは人間の女性と変わらない。
がっちりとして、身長は180センチほど、腹筋は割れていて逞しいが、その胸も逞しい。
と言うかたわわであった。
そして、温泉スライムにつかる事により、そのたわわな果実は浮くのだ。
普通の温泉よりも、遥かに浮くのだった。
ソラの視線を釘づけにしているが、ラケルは気にした様子もなく話を続ける。
「いやー、それにしてもあのハクがソラとの契約精霊になるなんてね!びっくりしたよ!今はゴンって言うんだっけ?」
「ああ、でも特に何するでもないから、今まで通りルビィと一緒に居てくれって言ったんだけど、あれからどうした?」
粘液にぷかぷか浮きながらくつろいていたルビィに話を振る。
「ん…色変わっただけで今まで通り…あの子助けてくれて…ありがとう…」
もじもじとお礼を言うルビィ。
特に何かしたわけでもないし、むしろ自分のせいで消えかけさせたと思っているソラは苦笑いでしか応えられなかった。
(まあ、あんな神とか言うブラックな上司の元でずっと働くよりは良かったのかも知れないけどな。)
と少しは良かったんじゃないかと思っているが、消えかけさせた事には違い無い。
「でもさー、ソラはもうすぐ街を出ちゃうんでしょ?ドウスンノー?」
リリスが温泉を泳ぎながら聞いてきた。
どうするのとは、ゴンをどうするかである。
ソラと契約した後に聞いた事だが、神霊ハクであった時は、普段は神の元でシナリオ通りに事が進むよう雑用させられたり、仕事が無い時はルビィと一緒に居る事が多かったそうだ。
神の元とルビィの場所を行き来するのは巫女のルビィとマスターの神を目印にしてテレポート的な事が出来ていたらしい。
しかし、今はルビィとゴンと神との繋がりが全て切れて、ルビィは巫女ではなくなっている。
今のジョブはプリーストになったらしい。
なので、ゴンはマスターであるソラの元にしかテレポートできない。
今、ルビィの元に居るのはただの自由意志である。
「まあ、別にずっとルビィと居たらいいんじゃないの?俺から何か頼む事は無いし…」
「そうなんだー。フーン。」
まあいいんじゃない?と言った感じのリリスだったが、ルビィから思わぬ横やりが入った。
「ゴンと話しあったけど…わたしもソラについてく…」
「フーン。ってええー?ルビィも旅立っちゃうのー!?」
突然の事に驚くリリス。
「いや、別にゴンは置いてくからいいぞ?無理しなくて。」
だが、ソラは同行の申し出を断った。
「無理じゃない…このパーティ…もうすぐ解散予定だったし…あと精霊は…マスターと運命共同体だから…一緒に居て守るのが普通…だから一緒に行く…」
意外にも、ルビィのついていくと言う意思は固いようだった。
「それに、わたしはラケル達と結構長くパーティ組んで冒険者してきた…先輩だよ?」
「ああ、そうだね、ソラはあんまり冒険者らしいことして来て無いしルビィは結構頼りになるんじゃないかい?」
さらにラケルから後押しが入る。
「それじゃあ、一緒に行くか?結構長い旅になるかも知れねえけどいいのか?」
確かに一緒に来て貰えると助かるなと思いルビィに再度確認するソラ。
「ん、おっけー。」
大丈夫らしい。
と言う事でルビィが同行することに決まった。
「ちょっと待って!マッテー!」
リリスから待ったが入る。
「ルビィがついてくのはいいけど!パーティ解散ってリリス聞いてないよ!」
先ほどラケルがさらりと言った事に対して、知らなかった様子だった。
「前に言っただろ…ほんと話を聞かない子だねえ…」
前に話した事だったらしい。
「アタシはそろそろ冒険者辞めて、王女の公務に戻るんだよ。今年で成人だからね。」
「あー、なんか聞いた気がスルー…ってリリス一人だけになっちゃうじゃん!ヤダー!」
「え、ラケルって王女様だったのか?」
ソラにとってはそれは初耳だった。
「そういや言って無かったね。でも今はただの冒険者だし、王女に戻ったからって普通に接してくれたら嬉しいねぇ。ってもうすぐ旅に出るんだったね。」
「やだよー!リリスを一人にしないでよー!」
あっはっはと朗らかに笑うラケル、ラケルの胸に飛びついて駄々をこねるリリス。
ソラはあまりの衝撃で目を見開いて固まっていた。
ラケルの立場ではなく。
(リリスが…胸に…おっぱいに…乗ってる…!)
おっぱいの上に人が乗れると言うファンタジー中のファンタジーな光景に、未だかつてない衝撃を受けていた。