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ソラは激怒した。

「とんでもねえクズ野郎だな!とっちめてやる!」

静かな地下牢にソラの怒号が響き渡る。


「許せない…!私も手伝うよ!ソラさん!」

サクラも怒りを露わにし、立ち上がった。


「無理ですよ、あなた達は精神を支配されてないとは言え首輪をつけられたままですし…その首輪は呪い以外にも恐ろしい魔法がかかっていて…。」

「首輪が無ければいいんだね!よーし、なら私が!」

スイの言葉を遮ってサクラが首輪を手にかける。


「待って!その首輪は無理矢理外そうとすると爆発するのです!」

スイはサクラの行動を見て慌てて声を上げた。

だが、既に時は遅かった。


サクラの首についていた首輪はサクラが触れると、一瞬でその姿を消し去っていた。


「え、あれ…?何が…?ええ…?」

慌てていたスイは何が起きたのか全く理解できておらず、眼を白黒させていた。


「ああ、成る程…別空間に飛ばしたんですね。」

ゴンはサクラの行動が分かったようで一人頷く。


「うん、私じゃ鍵開けなんて出来ないしね。持ち物をしまう要領で飛ばして見たんだけど…えっと、なんかごめんね?」

「い、いえ…無事なら良いのです…。」

冷や汗をかき、驚きすぎて胸を押さえているスイにサクラは謝罪する。

スイは何事も無くて良かったとホッと胸を撫で下ろした。


「それじゃあみんなの分も外しちゃうね。」

「おう、頼む。」

そして、サクラはあっという間にソラ達全員の首輪を取り外した。

ゴンだけは自分でとっととサクラと同じ方法で首輪を外していた。


「ふー、アクセサリーとかって窮屈で苦手なんだよあ。助かったぜサクラ。」

ソラはコキコキと肩を鳴らしながら礼を言う。

「ん、ぐっじょぶ。」

ルビィは親指をぐっと立ててサクラを褒めた。


「あ…うぅ…あ、わ私は何を…そうだ、私のせいで皆んなが捕まって…。」

グリンは一人だけまだ朦朧としていた。


「信じられません…いとも簡単に…もしかしたらあなた方なら本当にアードベックを倒す事が…お願いします!どうか私たちを!アードベックを倒して私たちを救ってください!」

呪いの首輪を何事も無く解除したソラ達、彼女達ならアードベックを倒すほどの力があるのではないか。

そう考えたスイは無気力そうだった表情を一変させ、必死にソラ達に懇願する。


「おう、胸糞悪りぃ事してるみてえだからな…一度ガツンと言ってやらねえとな。」

「私も!どうしようもない奴だったらガツンじゃなくてドカンとやっちゃうよ!でもその前に、この子たちの首輪も外していいかな?可哀想だし、早く戻してあげたいなって。」

「そうですね、物騒みたいですし、私とサクラさんで手分けしてなんとかしましょうか。」


そう言うと、サクラとゴンは二人で子供たちの首輪を外して周る。

首輪を外された子供たちは次々と意識を取り戻し始める。


「あ、あれ…僕は…。」

「どこ…ここ…こわいよ…。」

「うわあああん!ママー!」


ガシャン!


意識を取り戻し、暗い地下牢にいる事に戸惑い、驚き、恐怖する子供たち。

そんな子供たちを見るや否や、スイは地下牢の扉を勢いよく開いて、泣いている子供の頭を優しくなでてやった。


「大丈夫よ、みんな、私がちゃんとおうちに返してあげるから…大丈夫、大丈夫よ…。」

「おねえちゃん…スイおねえちゃん?」

「本当だ!スイおねえちゃんだ!」

怯えていた子供たちは、スイが大丈夫だと声をかけると一度に大人しくなった。


スイはさらに、意識を取り戻して取り乱す子があれば声をかけ、落ち着かせて回る。


「あ…う…姉ちゃん…スイ…姉ちゃん…?」

子供たちの中から、青髪の少年が意識を取り戻し、ぼんやりとスイの名を口にする。


スイは、青髪の少年に呼ばれた事に気づき、ビクリと体を震わせた。


「あ…ああ…!アーツ!」

そして、青髪の少年に向かって駆け寄り、強く抱きしめた。


「アーツ!良かった!本当に良かった…!」

「く、苦しいよ姉ちゃん…あれ、なんで泣いてるんだ?どっか痛いのか?」

アーツと呼ばれた少年は涙を浮かべ、抱きしめてくるスイに向かって心配そうに声をかける。


「ううん、痛いとかじゃないよ…アーツとまたちゃんと話せたのが嬉しくて…。」

「わけがわかんないよ。」

スイは抱きしめていた手を緩めると、指で涙をぬぐいながら微笑んだ。


「さて、全員の首輪は取れたみてぇだな。んじゃスイ嬢ちゃんはガキ連れて城から逃げな。まだ雨降ってたら濡れちまうかも知れねえけど、また捕まるよりはマシだろ。」

サクラとゴンが全員の首輪の回収を終えたようで、ソラはスイのその事を伝え、そしてすぐに逃げるように促した。


「分かりました…あなた達はどうなさるんですか?」

「決まってるさ。さっき、とっちめてやるって言ったろ?」

ソラはそう言ってニヤリと笑う。


「…本当に、ありがとうございます。では、アードベックの寝室の場所をお教えします。」

スイは、ソラに深く頭を下げた後、スイの知る限りの城の間取りとアードベックの寝室の場所を説明した。


「なるほど、わかったぜ。じゃあ後は俺達に任せて行きな。」

「はい、どうか…ご無事で…。それじゃあみんな、説明するからこっちに集まって!」


スイは子供たちを集め、現状と脱出する事を説明し始めた。


そんなスイたちを後目に、ソラ達は地下牢から外に出て、歩き出す。


ヴァンパイアロード、アードベックに制裁を加えるべく古城の中を再び突き進むのだった。


「さて、それじゃあ寝起きドッキリ作戦の始まりだぜ…。」

「なんか安っぽい作戦になっちゃったよ…。」

「まあまあ、ソラさんですから…。」

「ん、ソラだから。」


ソラ達が気合を入れ、行動を開始しようとする中、

「ところで、何がどうなって何をするんだい?」

しばらく呪いで記憶が抜け落ちているグリンはそう尋ねるのだった。

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