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薄暗く湿った地下牢に何人もの少年少女が閉じ込められて居た。

少年少女はみな、目から光が喪われ、ただただじっとして居るばかりだ。


そんな中にソラ達一行の姿もあった。

武器は奪われ、鍵のついた首輪をつけられているが鎖による拘束は外されていた。

他の少年少女達もみな、ソラ達と同じように首輪をつけられている。


「すまない、私たちの為にソラさんサクラちゃんまで捕まってしまって…。」

力無い声でグリンが謝る。

その目は他の閉じ込められた少年少女のように光を喪っていた。


「こればっかりは仕方ねえさ…それよりも周りのガキ共も捕まってるのか?なんなんだここは?」

ソラは誰ともなく質問を投げかけるが、誰1人応える者はいなかった。


「なんか、この子達心がここにあらずって言うか、閉ざしてるみたいな感じだね…ねえ君、何があったの?どうしてここにいるの?」

サクラは一番近くに居た少年に優しく問いかけて見た。


「あ…う…。」

すると、少年は一度サクラに顔を向け、口を開こうとするが何も言葉を発する事なく閉ざしてしまった。


「え、ねえキミ、どうしたの?」

「無駄です。その子達は余計な事を話さないように命令されています。」

サクラが少年のおかしな様子に戸惑っていると、牢の外から抑揚の無い少女の声が聞こえてきた。


ソラ達全員が声の方角に目を向けると、そこには先ほどソラ達を地下牢へと連れてきた青髪のメイドの姿があった。


「お前は…。」

「先程は失礼しました。私はスイ。この城でメイドをやっております。」

青髪のメイド、スイはそう言って深々と頭を下げた。


「なんだい、喋れたのかよ。ずっとだんまりだったからてっきり機械かと思ったぜ。」

「キカイ…とは?よく分かりませんが私は人間です。先程まではあなた方もその子達のように支配されたものだと思ってましたので話しかけても無駄だと思っていました。呪いの首輪を付けていてもなんとも無いなんて…何者ですか?フリーの魔族ですか?それとも魔人…?」

スイは探るような視線でソラ達を見つめる。


「首輪ってあれか?さっき牢屋に入れるときにつけたこれかよ。普通の革の首輪じゃねえか。趣味は悪りぃとは思うけどよ。」

「いえ、全てに強力な精神支配の呪いが…とても人間に抗えるようなモノでは無いので何者かと。」

「えー…私達はみんな普通の人間なんだけど…あ、ゴンちゃんは違うか。」

黙って会話を聞いていたゴンに全員の視線が向かう。


「ああ、そうですね。私は強い精霊ですので!神霊クラスの強い精霊ですので!呪いとかは効きませんねー。精神支配なら尚更効きませんね!」

注目を集めたので、少し得意げにゴンは言った。


「神霊クラス…凄い、それなら効かないのはわかります。でも他の方々は?」

「知るか、俺らは状況は特殊だがただモンだよ。なあ、グリン。」

ソラは近くにいたグリンにも話を振る。


「あ…う…。」

しかし、グリンの口は開きそうになるも閉ざされ、呻き声しか上げる事は無かった。


「えーと、めっちゃ効いてたわ…まさかルビィも?」

「………。」

ルビィも口を閉ざして何も語らない。


「おいおい、お前までどうしちまったんだよ…。」

ソラはルビィを掴みガクガクと揺さぶった。


「ん、やめて…めんどくさかっただけ。」

すると、ルビィはソラの手を掴み、普通に話しかけてきた。


「わたし、プリーストだし、解呪ぐらいできる。解呪したらつかれたからぼーっとしてた。」

「なんだよ、驚かせやがって…。」

ルビィは特に問題なさそうだったのでソラはホッと胸をなでおろす。


「嘘…!1人しか呪いに掛からないなんて…もしやあなた方は勇者様御一行…でも勇者は男性のはずですし…ううーん…。」

スイは驚き、そして戸惑っていた。

普通の人間ではどうしようもない呪いが1人を除いて効いていないので無理もない事ではあった。


「しっかし、ガキどもをこんだけ集めて何しようとしてるんだ?お前さん、スイって言ったか。教えてくれねえか?」

悩むスイを他所に、ソラは現状を把握する為に質問を投げかけた。


「…私がアードベックの手下だとしたら話すと思いますか?」

唸っていたスイは一転、冷静な表情を取り戻し冷たく言い放つ。


「ち、まあそんなこったろうと思ったよ。どっちみち良い予感はしねえがな。」

「まあ、アードベックの手下では無いので普通にお教えしますけど。」

「違うのかよ!」

スイの分かりづらいジョークでがくりと肩を落とすソラ達。


「この子達は、私と、いずれここにたどり着くであろう勇者達に対しての人質です。」

「人質?」

ソラはさらに問う。

スイはより、顔を曇らせて続きを語る。


「はい。勇者達はとても善良で正義感に溢れる人間だと聞いています。なので、罪のない子供達を攫い、洗脳し、武器を持たせ、勇者と戦わせる…当然勇者達は簡単にこの子達に手を出せませんよね?手を出すにしてもためらいはするはずです。」

「ああ、そう言う人質か…胸糞わりぃ…。」

「酷い…許せないよ!」

「くそやろー、だね。」

「最低ですねー、って何かそのシナリオに聞き覚えがありますね…。」


スイの語る内容があまりにも非道である為憤るソラ達。


ゴンは1人を、何か引っかかったようで首を捻っていたが、ソラがさらにスイに質問を投げかけた為気付かれる事はなかった。


「それで、お前さんに対しての人質ってのはなんでなんだ?」

「それは、この子達は私の村の子供達…中には弟も居るからです。この子達の世話をする為に、私はアードベックの、この城のメイドをやらされているのです…。」

スイはそう言って、苦々しげに唇を噛むのだった。


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