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ハク、ルビィの二人を中心に広がった閃光は数秒で収まった。

ルビィは、先ほどまで震えていたが何事も無かったかのように立っており、きょとんとしていた。

ハクの方は、明らかにおかしな変化があった。

体がうっすら透けていたのだった。


「おい、大丈夫か!?」

尋常じゃなさそうな様子に慌てて駆け寄るソラ。

肩に触れてみると、触れるものの、存在感自体が希薄になっているように感じた。


「ああ…はい…ルビィさんは問題ありません…」

そういって頭を上げるハクだが、目はうつろで生気を失っていた。

「いやルビィも気になるけど、ハク!お前、なんか透けてるしかなりヤバそうだぞ!」

「あ…私ですか…はい…私はもうすぐ…消え…ます…」

「かなり大丈夫じゃねーじゃねえか!おい!どうしてこうなった!なんとかならないのか!」

がくがく肩を揺さぶるが、惚けてるように反応が悪い。

だが、質問には反応するようでとぎれとぎれだが答えを返す。


「シナリオの…破たんを…認識しました…私の使命は…シナリオの…進行…です…。私のマスター…この世界の神に…シナリオの…破たんしたと言う…情報が…伝達された為…神霊としての契約が…解約されました…」

「つまり…仕事のミスが社長にばれたから即解雇って事か…?一回の些細なミスで即解雇とかブラック企業かよ…!」

ハクに起きている現象をソラなりにざっくりを理解し、得も言われぬ怒りがこみ上げる。


「神霊は…神からの…力の供給ラインが途絶えると…その…大きな力を…維持できず…消滅します…ルビィさんは…巫女で…神との間に…私を介していただけなので…影響は…少ししかありません…」

「退職金も退職後の保証もないとか…ブラック企業かよ…!!!!」

「わたしの事はいいから…ハクが助かる方法ない?」

あまりのブラック企業っぷりに憤慨するソラを他所に、ルビィはハクの助かる方法を聞いていた。

ルビィにとっては、巫女として長年連れ添ったハクは親友のようなものだった。

普段からぼんやりしてて、感情を表に出す事が無い彼女だが、こんな事で友を失いたくないと珍しく必死な表情だった。


「強い魔力の持ち主が…私に…新しい名前を…つけて頂けたら…新しい契約が…生まれて…助かります…」

「それならわたしがつける…契約して…名前は…ハク!」

ルビィがそう宣言するも、ハクには何の変化も起こらなかった。


「ダメ…なの?なんとかして…ハクじゃだめなら…ロク!グリ!ゲロ!」

「やめてください…ルビィさん…あなたも魔力が落ちてるんですよ…あと、なんですかその名前…私はそんな…名前で呼ばれるのは…いやですよ…ふふ」

必死で契約しようとするルビィだが、何も変化が起きなかった。ハクはそんなルビィを見て優しく微笑む。

(どうせ消えるなら、親友とは笑顔で別れたいです…)

どんどん存在が薄くなる中、ハクは親友に、精一杯の笑顔を向けた。

「ルビィ…いままで…あり…がとう…」


そんな二人の友情の最期を原因を作ったソラはただ見ている事しかできなかった。


「くそ…俺がこいつの言う通りにしなかったのが悪いのか…?でも…俺は…樫林空は…元の体に…」

自分の行いを悔やむソラ。

だがどうしても譲れないものがあった。

ハクが語ったシナリオ通りには絶対進みたくないと今でも考えている。

そんな逡巡するソラを見て、ハクは思う。

(シナリオを押し付けるなんて、おこがましかったですね…神様が創ったとは言え、彼女は一人のエルフです…その生き方をシナリオで縛ろうなんて…神様は間違ってます…)


「名前…名前をつけたら助かるんだったら…俺が…名無しの…狐…名前…」

ソラもルビィのように名前をつけて助ける事を考える。

だが無理だ。

ソラは今まで土木作業しかやっておらず、レベルが上がっていない。

魔法なんてものも一度も使っておらず魔力があるかすら怪しい状態だ。

そんなソラが神霊に名前をつけて契約できるはずがない。

契約できるはずが無かったのだ。


「名無しの権兵衛…狐…そうだ、ゴン!お前は今日からゴンだ!」

ビシりと指さして言うソラ。

「はは、なんですか…ゴンって…私は…女の子ですよ…」

ハクは力なく微笑んだ。

その時、薄くなっていたハクの姿闇に覆われる。

「くそ…ダメだったのか…」

「そんな…」

自分たちではどうにもできなかった、悔しさに打ちひしがれるソラとルビィ。

これが消失かと思いハクが飲まれた闇を見つめる。

すると、闇に亀裂が入る。

亀裂はどんどん広がって行き、パリンとガラスが割れるような音がして闇が砕け散った。

そして、中からは黒髪、黒目、狐耳の少女が現れた。


「うそ…ハク…?色が違うけど…無事だった…?」

「え、私…消えてないんですか…?」

紛れもなく、中から出てきた少女はハクのようだった。

名づけは成功していたのだ。

つまり、少女の名はハクではない。

名づけの契約をした当人のソラは感覚で理解した。


「ゴン…なのか…」


神霊ハクは、ソラの契約精霊ゴンとして生まれ変わったのだった。

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