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暗い古城の中、ソラとサクラは二人で廊下を歩いていた。

閉じられた門は固く、開きそうに無かったので先に入って行ったグリン達を捜索する事にしたのだ。


雷鳴が轟き、古城の窓から入り込んだ光が屋内を照らす。

古城の中、廊下の両脇に規則的に並べられた全身鎧がその輪郭を露わにし、不気味さを感じさせる。


「ひぃ!」「びっくりしたあ!」

そんな光景を目にして、ソラとサクラは、驚き小さく悲鳴を上げていた。


「畜生!なんで打ち合わせしたみたいなタイミングで落ちるんだコラ雷ぃ!」

そして、雷に八つ当たりをするソラ。


「いや雷は悪くないよ…、でも廊下に鎧ってこれ定番なら動くやつじゃない?」

恐怖で短くなっているソラに突っ込みを入れながら、廊下の鎧が露骨に怪しい事を指摘するサクラ。


「なに、動くのかこれ?」

「まあ、リビングアーマーって言うのモンスターならね。さすがに全部じゃないだろうけどお約束なら何体かが紛れてて通りかかる時に急に動き出して襲ってくるとか。」

「うわ、嫌だなそれ。お化け屋敷みたいなドッキリ系じゃねえか。」

「そう言う問題かなあ…。」

サクラはずれた感想を呟くソラに飽きれつつ、警戒を強める。


実際、並べられた鎧の中にリビングアーマーが混ざっており、目の前を通る人間を襲うよう命令されていた。

彼はその性質上、命令の通りにしか動けない為、二人の会話でバレているのかと不安に思いつつも、じっとその機会を待っていた。

(マダカ、キヅクナ、ハヤクコイ。)


鎧の配置は、廊下の中央を見るような形で向かい合わせに配置されている。

故に、リビングアーマーの彼の視界からは、自分たちの前に差し掛かっていないソラ達の姿はまだ分からない。


「よし、じゃあこうしよう。」

「え、ソラさん何するの!?」

「サクラ、お前さんもちょっと手伝え、これをこうして…そうそう、このバランスでグッと一気にな。」

「え、それだと…酷い事になるんじゃ?」

「襲われるよりはいいだろ、俺達をこんなところに閉じ込めやがって…ひひ、ひひひ!」


恐怖で若干キレ気味のソラがサクラと共に何かしようとしている声がリビングアーマーである彼の耳に入る。

(ナンダ?ナニヲスルノダ?)

ソラ達の方角を向いていないせいか、声だけでは何をしようとしているのか分からず、気になって仕方ないと言った状態だ。


「わかったよソラさん、実際にリビングアーマーが居たら危ないし…私、やるね!」

「おう、じゃあせーので行くぞ。」


何がせーので行くのだろうか、口ぶりからするとリビングアーマーを無力化するような手段を取るようだが、命令を無視してもう動いて良いのではないか、何故主は自由裁量でやると言う命令を与えてくれなかったのか。

いくつもの考えがリビングアーマーの彼の思考の中を渦巻く。


「それじゃあ…せーの!」


ついに、何かが実行された。

ガシャン。ガシャン。

鎧の崩れるような音が響く。


ガシャンガシャン。ガシャンガシャン。

続いて、さらに鎧の崩れる音が聞こえてきた。


ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン。

その音はさらに速度を速め、リビングアーマーの彼の元へ近づいていく。


ガシャンガシャン。

音が、近く大きくなっていく。


ガシャン。

気づけば音はもうすぐそこだ。


ガシャン!

音と共に、横から自分に襲い掛かる衝撃を感じる。

視界が横にぶれる。

ガシャン!

さらに衝撃、今度は反対側に大きな衝撃を感じた。


そして、倒れているのだと彼が気づくには時間を要した。


「おうおう、綺麗に倒れたな。」

「うわあ…なんかやっちゃいけない事しちゃった気がするよ…。」

ソラとサクラは、倒れた鎧でぐちゃぐちゃになった廊下を見てそれぞれ感想を述べる。


ソラがやったこと、それはドミノ倒しであった。

規則的に鎧が並んでいるものだから、この中にモンスターがいるのなら全部巻き込んで倒してしまえばいいと考え、廊下の両脇に並んだ鎧をサクラにも手伝わせ、同時に押し倒したのだ。


一番手前の鎧がリビングアーマーであれば無理だっただろうが、幸いリビングアーマーは鎧の並びの中央付近に配置されていた為、問題なく全部倒れたのだった。


「あ、動いた。」

倒れ、崩れた鎧の中からむくりと起き出すリビングアーマーをサクラは見つける。

さすがに、攻撃されれば向かって来るようだ。

だが、廊下には崩れた鎧が散らばっており、なかなか前に進めない様子だった。


「じゃあサクラ、後は頼む。」

「はーい、わかってるよー。」

サクラはソラに言われずとも、既に杖を構えて攻撃の構えを見せていた。


「いっけー!」

サクラの掛け声と共に、もたもたと移動していたリビングアーマーは光線を受け貫かれる。


ガンシューティングのように、サクラは立て続けに攻撃魔法を放ち、動いたものは全て倒していった。

そして、あっという間に廊下は動かぬ鎧の残骸で埋め尽くされるだけとなっていた。


「わー、いいのかな…ずるくない?」

余りにもあっけない全滅で、サクラは悪い事をした気がしてソラを伺う。

「大丈夫だ、それよりもグリン達を探すのはもっと急いだ方が良いかも知れねえな。」

「あ、そっか。リビングアーマーとか配置されてたんならグリンさん達も襲われてるかも…。」

サクラはソラの考えを察し、言葉にする。


「まあ、あいつらは迎えが居たんだから状況は違うだろうけどな。」

「実はちゃんとおもてなしされてたりして?」

「だといいな、にしてもゴチャゴチャして歩きにくいなこの廊下!」

そう言って足との鎧兜を蹴り飛ばすしながらずんずん進むソラ。


「はは、それは私たちのせいなんだけどね。」

サクラは苦笑いをしてそれを追いかけるのだった。

気が小さい人がビビると怒りっぽくなりますよね。

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