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轟々と強風が吹き荒れ、大きい雨粒を容赦なく壁に叩きつける。

雨風に晒された馬小屋はバシバシと大きな音に包まれていた。


「ん…あぁ…寝ちまってたか。」

そんな騒音の中、うたた寝をしていたソラは眼を覚ます。


「ふぅわぁ…凄え雨だな…。」

ソラは大きな欠伸をしながらそう呟く。

そして、ぼんやりとした頭で周りを見渡した。


「あ、ソラさんおはよー。」

ソラが起き上がったことに気づいたサクラが声をかける。


「おう、おはようさん。ん?」

サクラに軽く挨拶を返し、ふとソラは違和感に気づいた。

サクラとグリンの馬しか見当たらなかったのだ。


「他の連中はどうした?」

「えっと、ソラさんが寝てる間にこのお城のメイドさんが来て中に案内されて行ったよ。」

「なんだ、やっぱり人が居たのか…って大丈夫か?幽霊っぽかったりしなかったか?」

普通に人が居たのは良いが、青白い顔のメイドさんに案内されて城に入った途端バタンと扉が閉まって…などとホラー映画でありそうな展開にならないかがソラには気がかりだった。


「あはは、普通の可愛い女の子だったよ。ちょっと働くには若かった気もするけど、中学生ぐらいの歳だったかな?全然不気味な感じは無かったよ。」

「そうか、なら良い…それで、お前さんは俺が起きるの待っててくれたのか?」

ソラはサクラだけが残った理由を察してそう言った。


「うん、そうだよ。ソラさんも行くよね?」

「そうだな…あいつらが行ったんなら仕方ねえか。よっこらせっと。」

そう言ってソラは腰を上げる。


「ふふ、やっぱりおじさんだなー。」

「ん?どうかしたか?」

少女の見た目から発せられるおっさん臭い仕草に思わずサクラは微笑を浮かべる。

何故そんな反応をされたか分からずソラは小首を傾げた。


「さすがにお前は留守番だよな。」

ソラが残されたグリンの馬にそう言って軽く撫でる。

すると、肯定するように馬はペコリと頭を下げた。


「おう、なんか言ってる事がわかるみてえだな。賢い賢い。」

ソラは馬のその反応が気に入ってよしよしと撫で続けるのだった。


「ソラさん、それじゃあ行くからこっち来て。」

馬と戯れはじめたソラにサクラから声がかかる。

見ると、サクラは白い布に頭から覆いかぶさって手招きしていた。


「そんな布どこにあったんだ?」

「後で来るなら雨よけにってメイドさんが置いてったんだよ。」

「なるほど、ありがてえな。ん。」

ソラは自分の分を渡すために呼ばれたと思いサクラに向かって手を差し出す。


「…ん?ああ、はい!」

手を差し出されたサクラは暫く何か分からず思案した後、何か思い至ったようでソラの手を取り引き寄せる。


「お、おお?」

ソラはサクラの行動が分からず、なすがままにサクラの胸元へと引っ張られる。


このままだとサクラの胸元に顔を埋める事になるのではとよろめき倒れかかるソラ。


だがその寸前にサクラの手によってピタリと支えられ、くるりと回れ右されるのだった。

そして、サクラに背後から覆い被られるような体勢で落ち着いた。


「な、なんだよいきなり?」

「いきなり手を出すから引っ張ればいいのかなって。」

「俺の分も渡してくれって事だよ!」

「あー…!」

サクラはソラが手を出した意味を悟り、思わず声を上げる。


「あ、あはは!ゴメンねソラさん!勘違いしちゃった!で、でも布はこれ一枚しか無いからこうやって行くしかないんだよね…。」

人が1人入れるぐらいのサイズの布が一枚しか無かった為、サクラは最初から二人羽織のような格好で行くしかないと考えていた。

だからソラが手を差し出した時にそうなるように、ソラもそのつもりだと思い引っ張り込んでしまったのだ。


「うー…は、恥ずかしいなー…。」

「俺も年下の女の子に覆い被さられるのは恥ずかしいよ…。」

「でも、ソラさんの方が小さいし…。」

「それはどうしようもねえよ…。まあ濡れるのは嫌だからこのまま行くか。」

「…うん、そうしようか。」


こうして、二人羽織のような体勢で2人は古城の門へと向かって行くのだった。


気恥ずかしさからかソラとサクラは無言のまま城へとたどり着く。


ゴンゴンと強く門を叩いて、「入りますよー!」と大きな声で宣言してソラは門を開こうとする。


すると、門はひとりでにギギィっと重い音を立てながら開いて行った。


「お、なんだこりゃ、自動ドアか?電動なのか?」

「まさか、魔法だと思うよ。」

「へえ、魔法ってやつはなんでもできるんだな。」

「灯とかも魔法みたいだよ、ほら、燭台が光ってるけどロウソク無いでしょ?」


城の中に入り、サクラは灯りを指差す。

サクラの指差す方向には確かに灯りがあった。


ロウソクの灯りとはまた違った、青くぼんやりとした光が燭台の上に揺れている。


「へぇ…っておい、照明がなんで青白いんだよ!めっちゃ不気味じゃねえか!」

「え、そう言えば…なんか思ったよりも不気味だね…?」

ホラーハウスさながら、幽玄さを感じさせる色合いの灯りに薄ら寒いものを感じてソラは叫ぶ。


サクラも言われてみればと、違和感を感じた。


「あとメイドが迎えに来てたんだよな?グリン達も先に行ってるんだよな?でもなんで誰もいねえんだ?」

嫌な予感とホラー的な怖さから早口で疑問を口にするソラ。

さらに、あえて大きめのボリュームで話す事でホラーのような空気を払拭しようとしている。


だが、ソラのそのような努力も虚しく、今しがたソラ達が通って来た門が突然バタン!と勢い良く閉じられた。


「ヒッ!そ、ソラさん!これって…!」

「ああ…。」

ソラが門の所へ向かい、開けようと押したり引いたりしてみるが、門は固く閉ざされたままであった。


「ほら来た!やっぱりホラーハウスじゃねえかバカヤロウ!」

見た目通りの建物だった事に、怒声を上げるソラなのだった。

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