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-66- 古城

森を抜けると、そこはホラー映画の世界だった。


森から続く石畳の道を取って出た先には、小さな城が佇んでいた。

外壁は崩れ、蔦や苔が城壁を覆っている。


おあつらえ向きに天候がさらに荒れ、雷光がただでさえ不気味な外観をより一層ホラーに仕立て上げていた。


「これはあれだな…。」

「そうだね…あれだね…。」

ソラとサクラは顔を合わせ、お互いの考えを確認しあった。


「城か…しかしこんなところになぜ…いや、考えていても仕方ないか。」

「そうですね、雨が強くなってきましたし今日はここで雨宿りをさせてもらいましょう。」

「ん、そうする。」

グリン、ゴン、ルビィはそんな二人を他所に、ずんずんと古城の門へと進んで行った。


「あ、おい待て!」

とソラが止めようとするが、グリンは既に門を叩いていた。


「すみません!我々は旅の者なのですが突然の大雨で困っています!失礼かとは思いますが少々雨宿りさせて頂きたい!」

グリンが大きな声でそう告げるが、城の中からは何の返事も帰ってこなかった。


グリンは再び声を上げ、呼びかけてみるが尚も返事は無い。

その様子を見ていたソラは、城の窓から視線を感じてそちらに目をやると、一瞬青い影か見えた。

誰か覗いていたのだろうかと思い目を凝らすが、再びその影を見る事は無かった。


「ふむ、どうやら廃城のようだね。まあこんなところに貴族が住んでいると言う話も聞かないし間違いないだろう。取り敢えずここで雨宿りをさせて貰おうか。」

グリンは廃城だと判断して、門を開く。

ギギィと重い音がして、城の門が開かれる。


「それじゃあ中へ…。」

「待て待て!勝手に入るな!」

グリンが先行しようとした所でソラがストップをかける。


「どうしたんだいソラさん?ああ、もしかして怖いのかな?大丈夫さ、ゴーストが出ようがワイトが出ようが私が守ってみせるさ。」

「いや違うからな。いいからちょっと待てよ。」

そう言ってソラはグリンを押しのけ、城の中の様子を顔だけで伺う。


そして、グリンを引っ張って外に出して門を閉じた。


「え、ちょっと何するんだいソラさん!?」

「いや、廃城じゃなさそうだったからな。勝手に入るのは良くねえよ。雨が止むまでの辛抱だからあっち使うぞ。」

そう言って、城の脇にあった馬小屋を指さした。



「一体どうして廃城じゃないだなんて言うんだい?」

グリンは、馬小屋の中から城門の方に目をやり、ソラの判断に対して質問を投げかける。


「もし城が使われて無かったとしたら中がもっと埃っぽいだろうからな。中の空気を見てみたが全然そんな事が無かったしそれなりに人間のいる匂いがしたから間違いなく誰か住んでる城だぜ。」

ソラは馬小屋の藁の上でごろんと横になり答える。


「生活臭ってやつかな?ソラさんそんな事もわかっちゃうんだ。」

サクラはソラの答えを聞いてほーっと感心している。


「人が居たならお願いして中で休ませて貰った方が良かったんじゃないですか?」

「ん、たのめばやすませてくれる。」

だが、ゴンとルビィは人が居るなら居るで中に入らせて貰えば良かったのにと主張した。


「グリンがノックして大声で呼んでも反応無かったし門を開けたとこで誰も来なかっただろ?つまり住んでる奴は俺達に関わりたく無いか、無視したって事だ。窓の方から視線も感じたから俺達を認識した上で無視だぞ。そんなとこに頼み込んでも嫌がられるに決まってるさ。関わりたく無いってんならお互い不干渉って事で雨が止むまでここで待機して、雨が止んだらとっとと出て行くのが吉だ。」

ソラはそう言ってゴン達の意見を否定した。


「あー、私もここで雨宿りしてやんだらすぐ出て行くのに賛成かな。だって…こう言う城ってあれだし。」

サクラがおずおずとそう言う。


「あれっつーと、あれか…それもあるんだよな。中に入りたくない理由に。」

サクラの言わんとしてる事を察して頷くソラ。


「あれとは、いったいなんなんだい?」

グリンは二人が何を言いたいのか分からず首を捻る。


「えっとね、こう言うお城…と言うか嵐の中の洋館みたいなシチュエーションって…私達の世界じゃお約束みたいなのがあるんだ。」

「そう、まず城に入ったら閉じ込められたり幽霊が出たり殺人事件が起きる。背景が雷だとまあ幽霊のパターンかな。」

サクラの言葉にソラが具体的な説明を付け加える。


そう、俗に言うフラグなのである。

ホラー映画、またはサスペンスドラマの中に入り込んだような完璧なシチュエーション。

ましてやここはファンタジー世界。

ソラとサクラは思うのだった。


こんな城に入って何か起きないはずが無いと。


しかし、グリンにはそれでもピンとこずにさらに首を捻るのだった。

「そう言うものなのかい?確かに外観は不気味だけどね。そんな事あるわけないと思うが。」


「まあ違ったとしても犯罪者が根城にしてる可能性もあるから、雨宿りしながら警戒しといてくれ。ふぁぁ…。」

ソラはそう言って大きな欠伸をする。


「うわ、一気に現実的な話に…。でもそうだね、交代で外の様子見ておこうか。」

「そうしましょうか。雨が止むまでの辛抱ですしね。」

「ではまずは私が見ておくとしよう。」

サクラとゴンが交代で見張りをする事を提案すると、グリンが最初の見張り役に立候補した。


「おう、じゃあ任せたぞ。」

それなら安心だなとソラはさらに気を抜き、瞼を閉じる。

そして、そのまま藁の心地用感触に包まれ、意識を手放した。

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