-61- JK 初体験
仄かに暗い森の中の道を一台の原付と一頭の馬、そして一本の箒が突き進む。
「そろそろ日が暮れるね、あそこに少し拓けた場所があるから野営の準備をしないかい?」
馬に乗った銀髪の美女?グリンが提案する。
「そうだな、急ぐ旅でも無いしここらで休むか。」
原付を運転する銀髪の美少女?ソラが答える。
「そうですねー。」
ソラの足の間に座る小柄な狐耳少女、ゴンが同意する。
「ん…そうしよ。」
さらに、ソラの後ろに増設された後部座席に座る赤毛の少女、ルビィも同意を示して力を抜き、ソラにもたれかかる。
一刻も早く休みたいようだ。
「賛成!ちょっと箒でこんなに長く移動した事無かったからお尻が痛くなってきたとこなんだ。」
ハニカミながら箒に跨った美少女サクラはそうだな言った。
「痛かったんなら早く言えよな。さっきも言ったけど急ぐ旅じゃねえんだからよ。休み休み行こうぜ。」
「うん、そうさせてもらおうかな…いてて…。」
話しながらも目的の場所に到着したので、サクラは箒から降りてお尻をさする。
さらに、セーラー服のスカートの上から、ほぐすように軽く揉み痛みを和らげようと試みる。
その為、形の良いヒップラインが強調されて薄いスカートの生地の上からくっきり見えてしまう。
痛いから仕方ないとは思うが、若い娘のそんな姿を目の当たりにしてソラは思わず目を逸らした。
恥ずかしがる年でも無いつもりだが、若い娘には妙な気恥ずかしさを感じてしまう。
妻子でも居たら落ち着くのだろうか、などと考えてしまう。
「ふむ…これは中々…おや、ソラさんどうしぐふっ…」
目を逸らした先に、顎に手を当てマジマジと鑑賞しているグリンの姿があったので取り敢えず首を捻って目を逸らさせるソラなのであった。
少しの休息の後、ゴンの収納空間からテントや簡易キッチンなどを取り出して野営の準備を開始する。
「荷物が少ないとは思ったが空間魔法とは…凄いじゃないか!」
「王子様に褒められると照れますねー、女体化してなければ…。」
驚き賞賛するグリンにゴンは少しだけ照れた素振りを見せてボソッと呟いた。
「はは、痛いところだね。こうでもしないとソラさんが同行を許可してくれないだろう?」
「そうですねぇ。ソラさんは頑固ですしね。それに女体化した方が脈があるかもですね。」
「ん?それはどう言う事なんだい?」
「ああ、私も最近までは信じてなかったんですけどね…。」
ゴンとグリンはコソコソと顔近づけ内緒話に興じていた。
一方、ソラはキャンプの準備をテキパキと終えると、手持ち無沙汰にしているサクラの元へ近寄っていった。
「なあサクラ、ちょっと良いか?」
「ん?なぁに?ソラさん。」
「あー、その、なんだ、お前さん原付の免許とか持ってたりするか?」
「ううん?持ってないけど…校則で禁止されてたし。」
言葉を選ぶように免許の有無を尋ねるソラ。
なんだろうと思いつつもサクラは正直に答える。
「でも最低限の交通ルールぐらいはわかるよな?これから箒じゃ無くてそっち乗ってみないか?乗り方なら教えるし、原付も用意するからよ。ほら、こんなのとか。」
そう言ってソラは杖を振るう。
杖の先から光が現れ、段々とバイクの形を形成して行った。
現れたのは白をベースにして、所々ピンクと黒で模様がつけられた一台の原付であった。
楽器も作っているメーカー製の若者向け原付バイクである。
「わわ、すごーい!でも無免許運転になっちゃうし…そこまでして貰わなくても箒で大丈夫だよ!」
免許が無いので運転する事に抵抗があるサクラ。
好意で用意してくれたとは思いつつも、日本に居た頃の常識からか無免許運転はいけないとやんわりと断った。
だが、ソラはそれでも食い下がる。
「椅子も無い箒とかじゃ辛いだろ?それにここは日本じゃ無い、別世界だ。スピード出さなきゃ危なくないだろうしよ、乗ってくれないか?」
「そこまで言うなら、取り敢えず乗ってみてもいいけど…どうしてそんなに私を原付を乗せたがってるの?」
筋の通らぬ事を嫌うソラらしからぬお願いに不信感を覚え、サクラは理由を尋ねる事にした。
「あー…まあ…うーむ…。」
さらに珍しい事にソラが言い淀む。
言葉をなんとか選んでいるようだ。
「よし、今から言う事は俺がおっさんであると言う事を忘れて、見た目通り女の子同士と思って…聞いてくれ。」
覚悟を決めたようにソラは真面目な顔になりサクラに向かって言う。
ただ、自分を女の子扱いする辺りで抵抗があるのか少し声が震えていた。
「う、うん。」
そこまでして畏まって答えるソラにサクラはゴクリと唾を飲む。
「箒ってそれなりの高さでは飛んでるだろ?それでよ…俺の乗ってる原付は小さめじゃねえか。だから…あーその…チラチラとスカートの中が見えて…気まずいって言うか…あー女の子の意見!女子同士の意見と思えよ!そう言う事だから!できればこれからは原付バイクに乗って欲しい!俺が出すから!」
ソラは精一杯、嘘をつかず、言葉を選びながらサクラに伝えた。
セクハラ親父と思われたくなくて、女同士アピールを織り交ぜてだが、できるだけ真摯に答えたのだ。
「……」
ソラは、精一杯言葉を選んで伝えたつもりだったが、それを聞いたサクラが無言で俯いてしまっていた。
その様子を見てやってしまったかと思う。
現役の女子高校生にすけべオヤジ扱いされてしまう、出るとこに出られたら敗訴間違いなしであろう。
そんな恐怖からか、ソラは恐る恐るサクラの反応を伺おうと顔を覗き込む。
「……!やだ、恥ずかしい…!」
俯いて表情を隠していたサクラの顔は、羞恥で真っ赤に染まっており若干涙目であった。
「あ、すまん!いや本当に申し訳ない!ほら、同性と思って、じゃない、すぐに言い出せなくて悪かった!本当にごめんな!」
そんなサクラを見てソラは動揺しまくりながらも精一杯フォローする。
「い、いいよ!私こそごめんなさい!全然気遣いとかできてなくて!箒乗るときはだいたい1人か師匠とだったし!変なもの見せてごめんなさいって言うか!大丈夫!大丈夫だよから!」
慌てふためくソラの姿を見て羞恥から少し立ち直り、サクラもソラを気遣ってフォローする。
だがこちらも頭が上手く回らずしどろもどろであった。
「あ、ああ!じゃあお互い謝ろう!せーのでごめんなさいだ!それで今の無し!忘れよう!そんで原付乗ろう!」
「は、はい!乗ります!」
「よし、じゃあちゃんと乗り方は教えるからな!取り敢えずいくぞ!せーの!」
お互い、テンパる頭でよくわからない取り決めをするソラとサクラ。
そして、2人は同時に頭を下げ
「「ごめんなさい!」」
と、何にとは言わず謝罪した。
暫くして、2人は同時に頭を上げる。
「よし、じゃあ、原付の乗り方を教えるぜ。」
まだ若干ぎこちないもののソラは気を取り直した風を装って言う。
「うん、お願いします!」
サクラも同じく、まだ耳元に赤みを残しながら普通に振る舞う。
こうして、サクラはソラの指導の元、原付に乗る初体験をするのであった。
無免許運転は決してしないでください。
他人に強要する事もダメです。
異世界でも余程の事がない限り推奨しかねます。




