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『ベリーハードと言ったけどあれは嘘になっちゃったね!あ、このネタ前にも使ったか!あはは!』

「おお!?なんだこの声?魔女か?魔女なのか?」

突然、聞こえてきた聞き覚えのある声にソラは戸惑い辺りを見渡す。

しかし、ソラの近くにはルビィとゴンの姿しか無かった。


「ここ。」

とルビィはソラの腰元を指差した。

『親しみを込めてリコさんって呼んで欲しいんだけどな。』

また声が聞こえる。

確かにルビィの指差した通りソラの腰辺りから聞こえてきた。

正確にはソラの腰に装着されている羊皮紙の束、召喚手帳からだった。


「ここから喋ってるのか?」

ソラは手帳を手に取りパラパラとめくってみる。

すると、リコから渡されたカードからホログラムのようにリコの姿が投影される。


『やっほー、元気ですかー?』

ホログラムのリコがソラに向かってぶんぶんと手を振る。

「おお!なんか未来のケータイみたいで凄えな。」

『ケータイて、ソラくんはスマホ使わないのかい?まあいいや、取り敢えずサーキュライト王国は無事防衛できちゃったみたいだね?』

「何にもしてないけどな。勝手に始まって勝手に終わったよ。」

『なに、今まで君がやって来たことの成果が出ただけさ。援軍だって君たちがグリン王子を助けなければ来なかったからね。』

「やっぱりラケル達を呼びに行ったのはあいつなのか。」


戦闘では何もして来なかったソラだったが、事前に攻略フラグを立てていたようだ。

『そう言う事、あたしの観た運命だとあの王子様は賊に殺されて援軍は来ないし、この国の騎士とか冒険者も圧倒されて国ごと滅んでたね。魔王軍の駐屯地になる未来だったのを君が遠回しに救ったのさ!』

「遠回しねえ…風吹けば桶屋が儲かるって奴か。」

『そうそう、ブラジルで蝶が羽ばたいたらテキサスタイフーン!って奴さ。まあこれでそれなりに大きな運命が1つ壊れたはずなんだけどね。』

そう言ってリコは言葉を止める。


「おい!けどってなんだよ!これで帰れるようになるとかじゃねえのか?」

ソラは不穏な言葉尻に食ってかかった。

しかし、リコは答えない。

と言うか、ホログラムの動きも無かった。


「どうした!おい!電波が悪いのか?」

ぶんぶんとカードを振り回すソラ。

当然そんなものでは何も変わらなかった。


どうしたものかとカードを見て首を捻っていると、背後から伸びてきた腕にひょいとソラの手元からカードを抜き取られた。

「いや昔の家電じゃあるまいし振っても意味ないよー。」

「それもそうか…で、カード経由で話す意味ってあったのか?」


ソラからカードを奪った人物、それはリコであった。

「まあ機能の確認?テスト通話?そんな感じよー。だってここウチからちょー近いし直接話した方が早いじゃん?」

「いきなりだとビックリするっての…それよりもだ、運命を変える事は成功したんだよな?もう帰れたりしないのか?」

「いやー、それなんですけどね、運命改変度が足りない的な?パーセントにすると達成度5%ってとこかな。」

「なんだよそれ、それじゃあいつになったら帰れるか分かんねえじゃねえか!」


一国の運命を変えてたったそれだけかとソラはがっかりした。

「本当はこの倍は行くはずなんだけどね、だからおかしいなって様子を見に来たのさ。ついでに進行度合いが分かるようにちょっとこれをちょちょいと…。」

そう言ってリコはカードに指で円を描いた。

するとカードに12個の青い宝石がさきほど指でなぞった所に現れた。

そしてソラにカードを手渡すリコ。


「ついでにアップデートさ。進行度合いが目に見えた方がモチベーションに繋がるかと思ってサービスしに来たよ。思ったより進行が遅いみたいだからね。」

「わかりやすいのはいいけどよ…。」

カードの宝石は一つだけ、うっすらと光っていた。

「たったこれだけってか。」

「ニキシー菅で数字羅列した方がよかったかな?」

「意味わかんねえよ、まあこう目安があるのはありがたいな…サンキューな。」

「良いって事よー。と用事も済んだ事だし、リコお姉さんはこのまま旅にでまーす!」


唐突な宣言だった。

「は?突然何を…。」

ソラはリコのノリについていけず疲れた顔をしている。


「いやね、ソラくんが運命壊してくれたおかげであたしにはこの世界でこれから起きる事は全然わからなくなっちゃったのよ。だから占い師で稼いでたけどさ、これからはろくな未来予知できなくなるじゃない?とりあえず王族貴族相手に今まで稼げるだけ稼いだし、後はソラくんたちがこの世界の運命をなんとかしてくれるまでのんびり南の島でバカンスでもしようと思ってさ!水着も買っちゃったんだぜ!」

そんな事してたのか…と思い呆れる反面、仕事をなくしてしまった事にソラは少し罪悪感を覚えた。

突然の失業はとてもつらい、ソラは過去の経験でそれを味わった事があるのだ。

「すま…」

「長期休暇ばんざーい!」

ソラは謝ろうとしたが、リコは心底喜んでいる様子だった。

いや、もしかしたらソラに負い目を感じさせない為の演技かも知れない。

どちらにせよ、ソラが謝るのは野暮な気がしたので黙っていることにした。


「あとは、せかいのほうそくがみだれちゃったせいで、運命神が暗躍したり他の神々が介入してくるかも知れないけどその辺は適当にやり過ごしてね!」

「ああわかった…ん?それはどう言う事だよ?」

「そのままの意味さね、じゃああたしはこれにてドロンです!」


どろろんと渦を巻いた煙が地面から立ち上る。

「よいっしょっと。」

煙から普通にはみ出る形で魔女が箒に跨る姿が見えた。

そして、そのままふわりと宙に浮いて南の空へと飛んで行った。


「煙の意味は!?」

思わず突っ込むソラだった。

台風一過、こうして魔女はソラ達の元から去って行った。


「いやあ、見てて楽しい人ですね。」

「ん、それよりも、ラケルたちこっちくる…。」

戦いに勝利したオークリーの面々が猪に乗って凱旋してきた。

先頭を歩くラケルは、ソラ達に向かってサムズアップをして見せる。

ソラ、ルビィはサムズアップを帰して勝利を称える。


ドゴン!


その時、ラケルの後方が大きな音を立てて爆ぜた。


「な、なんだい!?」

振り向くラケル。

爆音のした方は砂煙でほとんど見えないが、その中からモヒカンのオークと猪が飛んできて地面に突き刺さる。

さらに爆音が続き、他のモヒカンや猪がどんどん飛ばされる。

その中には巨モヒカンの姿もあった。


巨モヒカンは空中からソラの居る方を確認すると、すいすいと泳ぐようにしてソラへと向かって行く。

「ソラちゃぁ~ん!」

まるでプールへ飛び込むような姿勢で巨モヒカンのオークが落下してきた。

ソラは冷静に半身をずらして巨モヒカンを回避すると、巨モヒカンは地面に突き刺さった。


「何が起きてるんだ?」

地面に埋まり、尻からプスプスと煙を上げるオークを他所に、ソラは爆音の中心を見る。

「なんだか、凄い力を感じます…でもこれは…ええ!?」

ゴンはそこに何かを感じ取った様子で、顔を青くして狼狽えていた。


砂煙の中からゆっくりと人影が姿を現した。

先ほど、撤退していったライトであった。

「おいおい、何があったんだよ…あれは…。」

ただし、それは燃え盛る巨大な左腕を持つ怪物と化していた。


「まずいですよソラさん!」

ゴンが叫ぶ。

「んなもん見たら分かるよ!」


ドゴン!

さらに爆音。

ライトが左腕を振るい、地面と共にオークと猪が吹き飛ぶ。


「パワーアップしてるってな…本格的にまずいぜ…頼みの綱の奴らも吹き飛ばされて行くしよ…。」

「まずいのはそれじゃけじゃありません、この力は…元上司…神の力を感じます!」

「じーざす。」


先ほど運命神が暗躍するかもと、魔女の言をソラは思い出す。


「暗躍ってかど直球じゃねえか!」

「伏線回収早いですねえ。」

「ざけんなー!」

再び訪れた窮地に、運命神をぶん殴ってやりたいと思うのであった。

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