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「待たせたね、おあずけはここまでだよ。お前ら、人間共を蹂躙しろ!」

ライトは魔物の軍団の元へたどり着くと直に指示を出した。


「ようやくか!待ちわびたぞ!」

「虐殺!虐殺!」

「ギャオー!」

知恵のある魔族が喜びの声を上げ、黒い巨大な蜘蛛が咆哮し天に向かい炎を吐く。

そして、サーキュライト王国とそれを守護する人間たちに向かって進撃を開始した。

「バール、それに聖剣の勇者…せいぜい僕を楽しませてくれよ?」


ライトはそう言って魔物たちを進軍させ、自身は聖剣に斬りつけられた腕を治療を開始した。


「オマエホドノモノガ、ニンゲンアイテニテキズヲオウカ。」

ギチギチを昆虫じみた音を鳴らして話すクワガタのような頭で人型体をした魔物がライトに声をかける。

「うるさいな…ほっといてくれよ。」

「ミタトコロ、ウデガツカイモノニナラナイダロ?ポーションヲツカウトヨイ。」

ライトはクワガタ頭の魔物をぞんざいに扱うが、クワガタ頭の魔物は親切にも赤いポーションをライトに手渡してきた。


「魔物の癖に気が利くじゃない?ありがたく貰っておいてあげるよ。」

ライトはそれを受け取ると一口で飲み干した。


「うわ、まずいなこれ…回復ポーションってこんな味だったっけ?魔族の味覚にでもあわせてるの?」

飲み干したは良いが、思ったよりも変な味だった為顔を顰める。


「ダレガ、カイフクポーションダトイッタ?ウデヲツカイモノニスルポーションデハアルガナ。」

クワガタ頭の魔物はそう言って一人サーキュライトへ侵攻する魔物達とは反対方向に飛び立っていった。


「は?今何を…うぐ…ぐぐ…ああああ!」

ライトは傷口に燃えるような熱さと痛みを感じて絶叫を上げる。

腕の傷口から赤い触手のようなモノが伸びて片腕を巻きつくす。

次第に触手は硬質化していき、ライトの腕は大きく赤黒い魔物のようなモノに変貌していた。

「なんだんだよ!なんだんだよこれは!」

自分の腕が造りかえられた様を見てライトは叫んだ。

だが、そこには答えてくれる者はいなかった。


---


「全体構え!一匹たりとも街に近寄らせるな!」

戦場にバールの声が響き渡る。

土煙を上げて進軍してくる魔王軍、騎士団と冒険者達は街を守護るように広がり、迎撃の体勢を整えていた。


「ちっ、あの蜘蛛が何匹もいやがる…ライロ!行けるか!」

「おうよ、任せてくれよ団長!何匹だって斬り伏せてやりますよ!」

「頼もしい限りだが無理はすんなよ、武器は強くてもあっちの攻撃が当たったら無事じゃ済まねえからな。」

「精々守ってくださいよ団長。」

「よせよ、俺は男を庇って死にたかねえぞ。」

ガスとライロを中心に悪夢の団は、装甲が硬く厄介なジャイアントダークフレイムスパイダーを倒して回る算段であった。

炎を吐かれる前に聖剣の一撃で斬り伏せれば被害も少ないだろうとライロが自ら提案したのだ。

心身共に勇者になりつつある元ファイターであった。


「あのー、ちょっとお伝えしておきたいんですけどー。」

魔物の軍勢を睨みつけていたバールに可愛らしい少女の声がかけられる。

バールが声の主を見ると、狐耳の少女、ゴンがふわふわと飛んで向かって来ていた。


「君は確かグリン王子を救った一行の…。」

「はい、ゴンです。ちょっとサクラさん…えっと魔女の弟子の方が先制で大魔法を撃ち込もうとしてるのでそれだけは伝えておこうかと思いまして…。」

「なんと!それは本当か!」

「はい。前線にいる方に無断でやるのはどうかとソラさんが仰ったので伝えるだけ伝えに来ました。それだけですのでー。」

ゴンはそうバールに言うだけ言うとふわふわと門の方へと戻って行った。


「皆の者!魔女の弟子殿が大魔法を撃ち込んでくださるそうだ!その後に我々も突撃するぞ!」

巨大な一撃で怯んだ隙に畳み掛けるようにとバールは防戦から攻勢に切り替えるべく声を上げた。

「「「おおー!」」」

と騎士団と冒険者達から威勢の良い声が上がる。


「全力で魔王軍を叩く!ライトよ、俺が止めてみせるぞ!」

バールは力強く宣言するのだった。


---


「一応伝えて来ましたよー。」

「お疲れさん、ホウレンソウは大事だからな。」

門の上に戻って来たゴンに労いの言葉をかけるソラ。


「なんなんですか、それ。」

「報告、連絡、相談って事だよ。それよりも、サクラが準備できたみたいだ。」

「おー、凄い魔力ですね!」

ソラとゴンはサクラの方を見る。


両手を空に向けているサクラの周りには淡いピンク色の魔力が渦巻いており、さらに頭上にはピンク色の魔法陣が浮かび上がっていた。


「なに…これ…しらないまほう?」

「見た事ないですねぇ。」

とルビィとゴンが首を捻る。

サクラはそれには答えず、ただ魔物の群れだけを見つめる。

そして小さく「ごめんね。」と呟いた後魔力を解き放った。


「いっけえー!」

魔法陣からピンクより濃い、赤、緋色の光線が放たれる。

その光線が魔王軍の中心を通り過ぎると、一瞬遅れて地面と共にその周辺の魔物達が爆ぜた。

ジャイアントダークフレイムスパイダーも何匹か倒せたようだ。


「ヒュウ、まるで怪獣映画だな。」

「あはは、現役JKに向かって怪獣はやめて…よ…。」

そう言うとサクラはへたりと力が抜けたように倒れ込んだ。

「サクラ!?大丈夫か!」

慌ててソラたちが駆け寄る。


「ん、からだ、もんだいない。」

「魔力もまだ残ってますね。いったいどうしたんでしょうか?」

ルビィとゴンはサクラの様子を確認したが、体も魔力も問題無いようだった。


それを聞いてソラはハッとする。

「ああ、そうか…サクラはそうだよな、普通の女子高校生だったんだな。畜生、俺がついていながらなんてこった…情けねえ…。」

そう言って歯噛みした。

相手がなんであれ、女子高校生があそこまでの破壊を殺戮を起こして心が耐えられるわけが無い。

だが、街を、人を守る為にサクラはその辛さを押し殺して大魔法を放ったのだとソラは察した。


「何が手段が無いだ…大人が子供を戦わせて…何やってんだ畜生!」

そう言ってソラは駆け出した。


杖を構えてバイクを召喚する。

「ついでに、武器もだ!来い!断罪剣ヘヴンズフォール!」

ソラは恥ずかしい名前を恥ずかしげも無く叫ぶ。

ケツアゴのように先端の割れた剣がソラの手元に現れる。

「よう、久しぶりだなエルフの小娘。」

「おう、悪いがちょっと振り回させてもらうぜ。」

「はっはっは、剣は振り回す為のもんだ。存分に使ってくれ。」

「それもそうだ、行くぜオラァ!」

ソラはいつもよりも乱暴な口調で気合を入れる。

アクセルを急にふかしてエンジンを唸らせる。


ふいに、バイクの後ろに重みを感じた。

「わたしも、やる。」

ルビィがメイスを片手にまたがっていた。

「あたらしいメイス、ためしたい。」

ソラはそんなルビィを見て頭をガシガシとかいて言葉を探す。

置いて行く理由を探したが、やる気になって興奮している状態のソラには良い言葉が思いつかなかった。

それに、普段は眠そうなルビィの眼は獣のような獰猛眼光を放っていた。

なんだかんだで歴戦の冒険者なのだ。

「仕方ねえな…一緒にやるか…!」

「おーう。」

どこか間の抜けた掛け声を上げるルビィ。

バイクは加速する。

ソラとルビィは手に持った武器を地面にがりがりとこすりつけ火花を散らしていた。

頭の上に!?と言う記号が錯覚するような出陣だ。

「イテテテ!イテエ!」

と持っている武器が悲鳴を上げているがそこは無視して、大魔法で半数が壊滅した魔王軍に特攻をかけるのだった。

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