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「冒険者に!冒険者になってください!」


「俺は絶対に冒険者なんかにはならないからな!」


「そこをなんとか!お願いします!後生ですから~!」


眠る豚亭の2階の一室、ベッド、テーブル、椅子しか無い簡素な部屋。

その部屋ではベッドの上で腕組み足を組みむくれるエルフの美少女と、それに向かって土下座をする狐耳の美少女の姿があった。


ハクが盛大なネタバレをやらかした後、話を聞いた上でスルーして、ラケルに具体的な職場斡旋の話を進めようとしたソラだったが、それをいやいや!やりましょうよ冒険者!とハクがしがみ付いてきた。


またやるやらないで揉めそうだと思ったラケルは

「しばらく拗れそうだから今日は二人でゆっくり話して明日どうするか決めな。ルビィも、ハク置いて今日はいったん帰りな。」

と言って酒場のに2階、宿泊用の部屋を確保してそこで一晩ゆっくり話す事を勧めてきた。


ルビィはどうでもよさそうに

「ん、わかった。適当によろしくやっといて。」

とハクをずずいとソラに押し付けてそそくさと帰っていった。


そして、ハクともども部屋に案内され、話の続きは明日の朝また来るからと言ってルビィ、リリスを伴って帰って行った。

二人になったところで、ソラがベッドに腰かけるとハクがその前で土下座の体制を取り冒険者になるように頼み込み始めたのである。


「いくら頼み込まれたってなあ…冒険者ってのにはなりたくないと言うかその”勇者”とか言うのの仲間になるのはゴメンだな…」

(そもそもなんで野郎なんかといい関係にならなきゃなんねーんだ!)

本来男であったソラにとって、”勇者”と呼ばれるイケメンと恋仲になるのはどうしても嫌だった。

ハクから語られた内容がこれから本当に起きうる事であれば、その男はソラに一目惚れするのだ。

絶対に”勇者”なんかと会う訳にはいかないとソラは心に決めている。


しかし、

「お願いしますーあなたが居ないと世界がヤバいんですよう…」

少女に土下座されながら懇願されているのでものすごく申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「そもそも何が不満なんですかー、世界で一番栄誉ある”英雄”の”勇者”様と一緒になれるんですよー!」

顔を上げてしつこく頼み込むハクだったがその一言が地雷であった。


「それだよそれ!勇者だかなんだか知らねえけど突然イケメン俳優と付き合えますよって言われてるようなもんだぜ!俺は男とそんな関係になるのは絶対にゴメンだからな!その勇者ってのの仲間なら他でもいいだろ!」

思わずソラはより一層な強い拒絶をしてしまった。


「え…あなた女の子じゃないですか…男が嫌って…何故ですか?」

ハクは突然カッとなったソラの発言にきょとんとしてしまっていた。

これにはソラもしまったと思いなんと言い訳したものか考える。


「あー、えーと…昔男に酷い目にあわされたから男嫌いになったと言うか…」

「あなた今日生まれたばかりなんですけど…神様が今日創りましたので…」

さらっととんでもないネタバレを追加された。

「あー…じゃあ同性愛者って事でいいか…」

「じゃあって何ですか!おかしいですよ絶対!」

適当に言ってみたが当然突っ込まれる。

ソラがわたわたしているとここぞとばかりにハクは攻勢に回った。


「そもそも、男が嫌ってもったいないですよー、あなたはこんなにも可愛いんですよ?」

そう言って手鏡を差し出すハク。

そこに映っているのはおっさんではなく少女の姿。

サラサラだけどちょっと癖のある金髪ロングヘアー、長いまつ毛、クールな印象があるがまだ幼さが残っており可愛げのある表情、エメラルドの様な緑色の瞳。


鏡でここまではっきりと自分の容姿を確認したのはこの体になって初めてである。

改めて目の当たりにする事で、ソラは急に不安になってきた。


『我思う、ゆえに我あり』と言う言葉で樫林空と言う自分を肯定していたが、今は自分の体はエルフの少女である事に違い無い。


建築会社勤務の樫林空は本当にここに居るのだろうか。

今の自分記憶は本物なのだろうか。

そう考えると嫌な汗がわき出てくる。

世界が歪んで見える。


不安な顔で沈黙するソラにハクはさらに追い打ちをかける。

「お顔も美人ですけど肌とかも綺麗ですよねー、胸は…ちょっと小盛ですけど!体のラインが女の子らしくて可憐です!絶対モテモテですよ!」

女らしいところをつつかれてソラの不安は一層深くなっていった。


ハクはソラの様子が変わったのを敏感に察知しこの調子でイケメンの”勇者”と並び立てる絶世の美少女”英雄”である事を自覚させたら折れるかも知れないと考えた。

容姿の魅力的なところをほめちぎり、”英雄”として力がある事を認識させたらと。


「それに、召喚師って強いんですよー、羊皮紙の束を持ってましたよね?ちょっと失礼しますよ。」

ハクはソラの腰元に装着されている羊皮紙の束に手を伸ばす。

「結構分厚いでしょう?これは召喚師が持つ特殊な契約用紙の束でこんなにあるといっぱい強い精霊や魔物とかと契約できるんですよー、最初は神様から光の精霊しか与えられてませんけど…ってあれ?」


パラパラと羊皮紙の束をめくハクだったが、そこに光の精霊の契約は無く、見覚えの無いものばかりである事に気が付いた。

そして、ソラもまた視界に、見覚えのあるものを捉えていた。


「これは…なんですか…?」


「これは…俺が今まで取ってきた資格とか免許じゃねえか…」


そこにあったのは、単語帳サイズの羊皮紙に縮小されているが、樫林空が今まで取ってきた資格の認定書、表彰状、免許証の束であった。

容姿の描写を間違えていた為修正しました。

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