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「死ね!」

「させぬ!」


ガキィンと甲高い音を立て、ライトの剣は若い騎士に届く寸前に弾かれる。


「ライトよ、残念である…よもや友であるお前が…。」

「あーあ、ついにバレちゃったかー。まあお前もすぐにヤるつもりだったから良いけどさ。バール副団長殿。」


若い騎士を救ったのは、サーキュライト王国副団長のバールの剣であった。

身内である騎士団員に斬りかかったライトをバールは険しい瞳で睨む。

対するライトは目を細め、どこか気怠げであった。


「ライトよ!あの冒険者たちの言う通り魔王軍に寝返ったと言うのは誠か!」

「あー、そっかぁ…先に逃げたアイツらが…まあ良いか、すぐわかる事だし。そうだよ、僕は魔王軍に寝返ってこの国の侵攻を任されてるのさ!」

「なんと…何故だ!お前ほどの男が何故そのような事を!」

「あー、さっき説明したからまた言うのめんどくさ。勇者とヤる為だよ。」


どうしても信じられずにいるバールはライトに問いかける。

だがライトの返答はあまりにも酷いものだった。

それに対してバールが感じたもの、それは怒りであった。


「貴様!よりにもよってそのような下らぬ理由で部下に剣を向けたのか!!!そしてこの国に剣を向けると言うのか!!!!」

激昂、バールの叫びが空気を揺らす。


周りに居て状況が把握できて居なかった騎士たちはそれによって、今起きている事を正しく認識する。

そして、彼らもまた剣を取りライトを取り囲んだ。


「例え友であれそのような事は捨て置けぬ!このサーキュライト王国騎士団副団長、バールが貴様を斬り捨てる!」

「おーおー、熱くなっちゃった?でもさあ、お前らが束になったところでさ…僕に勝てると思ってんの?」


普通の人から見たら、ライトの状況はもはや絶体絶命。詰みであるのだが、ライトはその余裕を一向に崩さなかった。


「いやぁーーー!」

掛け声をあげて、先ほど斬られそうになっていた若い騎士が先んじてライトに斬りかかる。

だが、若い騎士は剣を振り下ろす事は無く、遥か後方に吹き飛ばされていた。


その方向には、サーキュライト王国を取り囲む壁と、先ほどソラが逃げおおせた門の扉があった。

その厚い扉に若き騎士は減り込むようにして埋まっていた。

持っていた剣や若き騎士の身につけていた鎧は粉々に砕けており、もはや生存は絶望的である事がわかる。


「あー弱い弱い。この程度が束になっても虐殺で終わっちゃうね。だから雑魚はあの魔物共にやらせるつもりだったんだけどな。失敗したなあ。」

「下がっていろ!並みの騎士では歯が立たぬ!ライトよ、貴様は確かに強かったがここまで人間離れはしていなかったはずだぞ…!その力は一体!」


バールの知るライトは、サーキュライト王国の騎士としては最強であったが、素手で人をああも易々と吹き飛ばす程異常な怪力などはなかったはずだった。


「そりゃ僕は魔王軍の幹部だからね、闇の力って言うのかな?魔王の力の一部を授かる事もあるさ!凄いだろ?勇者とやるならこれぐらい必要なんだってさ!あー楽しみだなあ!」

そう言ってライトは余裕の笑みを浮かべる。

対するバールは冷や汗が浮かぶ。

このままでは、本当に騎士団全て蹂躙されてしまうのではないかと焦りが出始める。


「全員!バラバラに攻撃を仕掛けるな!目の前の男は最早魔物と思え!巨大なドラゴンと思え!陣形を固め、一斉に攻撃を仕掛ける!」

バールは対人であるという考えを捨て、凶悪な魔物と対するように切り替える。


「ははは、まあそうだろうね!これなら少しぐらいは保つだろうさ!さすが副団長!バールは昔から頭の回転が早いなあ!」

「そう言う貴様は昔から考えが無さすぎる!そして取り返しのつかぬ事をした!その罪はここで我らが止める!」


取り囲むようにしていた騎士たちは、一辺に集まり盾と槍を構える。

守りを固めた上でジワジワと攻撃を仕掛けるつもりだ。

バールはその先頭に立ち剣を構える。


「サーキュライト王国騎士団!参る!」

そう言ってバール率いる騎士たちは一斉にライトに襲いかかった。




「おいおい、今人がこっち吹っ飛んできたぞ。」

今見た事が信じられないといったようにソラは言う。

「わ、私ちょっと助けてくる!」

「やめとけ、あぶねーぞ!」

「大丈夫、気づかれないように飛んで行って回復魔法かけるだけだから!」

「なら…わたしもいく…。」

そう言ってサクラとルビィは箒にまたがり、吹き飛ばされた騎士の所へ向かって行った。


「にしても、あんなのどうやれば勝てるんだ?魔王軍とか言うバケモノよりバケモノじゃねえのか?」

「ですね、あれは高レベルの英雄か勇者クラスでないと…太刀打ちできませんよ。ソラさんが鍛えてたら今頃は…。」

「よせよ、それにレベルとか意味無いってリコが言ってたぜ。」

「そうなんですか?」

「ああ、出ていく前にちらっと話した。レベルって概念も壊れちまったらしいぜ、運命とかと一緒に。」

「へー、じゃあソラさんは強くなれないままなんですかね?」

「んなことねえだろ、強さってのは数字じゃねえだろうよ。」

などと、ソラとゴンはライトとサーキュライト王国騎士団の戦いを見ながら語り合っていた。

ここは、ソラが通ってきた門の上、見張り台のような所だ。

ソラはバイクで門を通り抜けた後、先に逃げて他の騎士たちに事情を説明していたサクラ達と合流し、後の事は騎士達に任せることにして、門の上からずっとライトの様子を見ていたのだった。


そして、ライトにロックオンされている様子のソラはその様子を見ながら仲間とあれやこれやと対策を話し合っていたのだ。


「しかし、それなら現状どうしようもなくないか?英雄クラスに強いやつとか勇者が来て助けてくれない限り、この国の兵士とかやられて魔物の軍団もけしかけれれて…詰んでねえか?」

「うーん、ソラさんがレベル関係なしに凄い力に目覚めてやっつけれたりしません?」

「ないない、そんなご都合主義あってたまるかよ。」

「ですかー、じゃあ英雄クラスの人が来てくれる事を祈りますかねー。割と居ますよ。あのグリン王子さまとか襲撃してた人とかもそれぐらいでしたので。」

「あいつらそんなにヤバい奴らだったのか…。」

今更な事実を聞かされて驚くソラ。

素手で人を吹き飛ばすレベルの怪物がそんなにも多い事に異世界の危うさを改めて認識した。


「それでゴンそのレベルの人間は騎士団にいそうか?」

「無さそうですね…。」


そう言ってソラ達はライトと騎士団が戦っているところに目を向ける。

そこでは、騎士団が盾の壁を作り、バールを戦闘にライト一人へ立ち向かっている光景があった。


「あれならいけるんじゃないか?数は力だろ。」

「いえ、残念ながら…。」

とゴンは横に首を振る。


騎士団はライト一人に圧倒されていた。

ライトが剣を振れば盾が砕け、人が飛び、軍が崩れる。


「うわあ…バールだっけ?副団長さんが辛うじて耐えてるけど後は散々だな…個人差ありすぎじゃないのか?この世界おかしいぞ…。」

「そう言われましてもそういうものだとしか…それよりも私達はどうします?サクラさんたちが戻って来たら逃げます?」

これはもうダメであろうと見越してゴンが逃走を提案する。


「いや、ライトの野郎をこっちまで連れて来たの俺だしなすりつけて逃げるとか目覚めが悪いだろ…。なんとかする方法をなんとか見つけるしかねえよ。」

「そう言えばソラさんがおしつけたんでしたね。煽って誘き寄せて…ドライな人だなーって思いました。」

ドライだから見捨てて逃げることも辞さないとゴンはソラの事を見ていたらしい。


そんな評価を聞いてソラは慌てて言い訳する。

「いやいや、あいつが魔王軍の幹部で司令官つってただろ!あのまま放置したらあの魔物たちに号令出して魔物たちと一緒に襲って来たかも知れねーだろ!あとまあ、一人にだけなら軍隊で対処できると思ってたんだけど…。」

「なるほど、作戦だったんですね!確かに魔物の軍勢プラスあの方でしたら今よりもっと分が悪かったでしょうね!」

とゴンは納得した。


「それで、打開策を見つけたいんだけど…ゴン、お前あのグリン王子を襲ってた奴らの時みたいに頭おかしくさせてなんとかできないか?」

「高揚させても鎮静させても効果薄そうなんですよね…戦いに関しては冷静と言うか…。あの時はほら、ヒャッハーしてたか眠そうだったかのどちらかでしたので行けましたけど。」

「むう、打つ手が無いなぁ…。」

「ですねー。」


こうして、門の上でソラとゴンが腕を組んで考え込んでいる間にも、サーキュライト王国の騎士団はどんどん消耗していくのだった。


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