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-43-三千世界を見通す魔女

3日待てと魔女は言った。

それに一体何の意味があるのだろうか。


三千世界を見通す魔女と呼ばれる彼女、リコと言う名がある彼女は様々な噂が尽きない。


曰く、過去、未来、現在、世界の全てを見る事が出来る。

曰く、その目は世界の外も見える。

曰く、世界の破滅を目論んでいる。


魔女の弟子であるサクラはそんな事は所詮噂だと知っている。

童話の魔女のように、傷や病を癒す薬を作ったり、未来に悩む者があれば未来を占ってあげたりしている。

その占いの的中率が高い為、王侯貴族が何か重要な事がある折には彼女に占いを頼む事が多々あった。

その名声の為か、三千世界を見通すなどと言う二つ名が付いたのであろう。

悪い噂はその成果を妬ましく思った他の占い師が言っているだけだとサクラは思う。

なにせ、魔女はサクラの命の恩人なのだから。

悪い人間のはずが無い。

そう、サクラは信じている。

彼女なら、ソラの助けになる事ができるだろうとサクラは思う。

例えそれが、ソラの求める結果で無くても、新しい道を示す事ができると。

ソラの救いになると。



サーキュライト王国の南西にある森をソラ達はバイクで走って居た。

以前ジャイアントダークフレイムスパイダーと遭遇した森とは別の方向である。

いつもの様に、ソラが運転し、後ろにルビィ、前にゴンの3人乗りである。

その隣に、空飛ぶ箒に乗ったサクラがいた。

「結構スピード出るんだな、箒って。」

森の中なので、安全運転で時速30キロで走るソラ。

それに難なく着いてきている箒のスピードにソラは感心した様子で言った。

「もっと早く飛べるには飛べるよ、でもこれが精一杯かな…だってこれ以上早いと…怖いし…。」

「ああ、車とかと違って身体むき出しだもんな。そりゃ怖いさ。」

「うん、絵本とかアニメの魔女が風をきって飛ぶの見て気持ち良さそうと思ってたけど、実際箒みたいな細い棒に乗って風を切るスピード出したら…怖くて死ぬかと思ったよ…子供の頃の夢が一つ壊れちゃった気分。」

そう言ってがくりと首を落とすサクラ。

「でも飛ぶ事自体は夢があるじゃねーか。サクラが箒で浮いたの見て映画みたいで凄えって思ったぜ。なんか見ててワクワクした。」

「えへへ、そう言われると照れるなー。」

ソラがべた褒めするので、顔がにやけてしまうサクラ。

「一つ気になるとこがあるなら…スカートで乗るもんじゃ無いと思うぐらいだな…。」

そんなサクラに聞こえない様な小さな声でソラは呟いた。

ギリギリ見えない様に箒に座っているのだが、パタパタと風を受けて揺らめくスカート。

少し腰を浮かせたら風で捲れて丸見えになってしまうだろう。

最初は箒で飛ぶ魔女に素直に驚き、感動していたのだが、しばらく並走して慣れてくるとそっちが気になって仕方ないソラだった。


「あと少しで着くよー。」

サクラが3人に告げる。

「ちかい…ね。」

「ですね、思ったより森に入ってから時間経ってませんよ。」

「そりゃ、森の奥に行きすぎると不便だしね…。」

「それもそうだな。魔女って言っても人なんだし。」

「そうそう、お客さんも来るんだしそう言うもんだよー。あ、ほら見えてきた!」

そう言ってサクラが指で道の先を示す。

「いかにもって感じだな。」

その方向には、煉瓦造りの一軒家が森の中に建っていた。


「師匠ー!ただいま帰りましたー!」

「あいよー、お客さんも一緒だろ?入りなよ。」

「はーい!それじゃ、ソラさん、こちらへどうぞ!」

ドアの前で、中の人物、魔女に声をかけるサクラ。

そして、中から入ってくるように言われたのでソラ達を先導してドアを開けた。


いよいよ、元の世界に帰る手がかりを得る事が出来るかも知れない。

期待と、何も知らなかったらどうしようかと言う不安がソラにのしかかる。

緊張で喉が乾く。

それでも、行かねばならぬと、ソラは意を決してサクラの後を追う。

「お、お邪魔します!」

そう言ってソラはドアを潜るのだった。


建物の中は、大きな釜や古びた本棚があり、いかにも魔女の家と言った風貌が見える。

ただし、それは建物の角の一部だけである。

木製のテーブル、柔らかそうなソファ、ソラ達が過ごしたサーキュライトの高級宿に劣らぬ快適そうな空間が殆どを占めていた。

「やあ、いらっしゃい。待ってたよ。」

ソファに寝そべって本を読んでいる女性が、そのままの状態で声をかけた。

「師匠、お客さんなんですから、ちゃんと座ってくださいよ…。」

呆れた声でサクラが嗜める。

「あー、スマンね、丁度クライマックスなんだ、あと1ページ読み終わるの待ってちょーだいよ。」

そう言ってページをめくる女性。

彼女が三千世界を見通す魔女、リコなのだろうか。

人々に様々な噂を囁かれ、頼られたり畏怖されたりもしている魔女。

ソラにはとてもその様に見えなかった。

「なあ、サクラ…この人が本当に魔女なのか?」

思わず小声でサクラに尋ねてしまう。

「え?うん、そうだよ。ちょっとだらしないけど凄い魔女なんだよ!」

「いや、だらしないとかじゃなくてよ…なんつうんだ?どう見ても休日のOLなんだが…。」

そう言ってソラはソファの上で本を読み続ける魔女を見る。

その姿は、長く黒い髪、赤いフレームの眼鏡をかけており、黒のスキニーパンツにゆったりめの白いシャツだった。

「どう見ても日本で見かける普通のネーチャンなんだが?サクラ、お前の姉ちゃんとかじゃないんだよな?」

「ち、違うよ!あと師匠はこんな格好だけど本当に同郷でもないし…。」

「なんだい、人をこんなとかあんなとか呼ばわりしてくれちゃってさ。」

サクラがソラにリコの事を話そうとしていると、リコ本人から声がかかった。

「やあ、はじめましてソラちゃん。お姉さんがキミの会いたがってた魔女さんだよ。よろしくね。」

そう言って、リコは手に持って居た本を閉じ、ニコリと笑った。


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