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ホールの隅で一人になったソラ。

空になったグラスを片手に、どうしたものかと立ち上がると、そこに二人組の男がやってきた。

「やあ、ごきげんよう美しいお嬢さん。」

「楽しんでおられるか?」

「はぁ、どうも。それなりに。」

ソラは曖昧な返事を返す。

話しかけてきた男は、片方は赤毛のチャラ男だ、ホストのようにつんつんとした髪型をしている。

そして、もう一人は黒髪の短髪、筋肉質で武人と言う言葉がよく似合う男だった。


ソラは一瞬ナンパか?と思ったが、黒髪の方は酷く真面目そうな顔をして居たので、あまり警戒しない事にした。

「僕はこの国の騎士団で団長をやっているライトさ、よろしくねお嬢さん。」

赤毛のチャラ男ことライトがウィンクしながら名乗り。

「俺は、副団長のバールと言う。よろしく頼む。」

黒髪の方、バールが綺麗な角度でお辞儀をした。

「どうも、冒険者…のソラです。」

片方は兎も角、片方は物凄く礼儀がなっていたので真面目に挨拶を返すソラ。

肩書も結構な立場の人間の様だし、無下にする訳にも行かないだろう。


「いやー、僕たちどうしても君にお礼が言いたくてねー。」

「ああ、グリン様を救ってくれた事、心より感謝する。」

「ほんと、ありがとねー。」

「はあ、どういたしまして…?」

二人ともソラに礼を述べる。

しかし、何故わざわざソラを探してまで直接お礼を言いたかったのだろうか。


「あ、なんでかって言うとねー、僕たちはグリン王子と仲良し、親友なんだー。」

「ああ、俺達は騎士学校の同期でな、身分の違いなど気にせず良くしてもらっていた。」

「バールはずーっと緊張しててガッチガッチだったけどねー!」

「む、言うな…ライトよ…。」

そう言って少し照れた顔をするバール。

幼馴染とか腐れ縁ってやつか。俺にも居たな。

ソラは学生時代達の友人の顔を思い出す。そう言えば、チャラ男と厳つい系のコンビは高校時代つるんでた奴らにそっくりだなと思い出し、顔をほころばせる。

「仲良いんですね、いいですね友達って。」

帰れたらあいつらに連絡とってみるのもいいなと、そんな事を考えながらソラは言う。


「グリン王子は俺達の良き友だ。本来なら騎士として我々がお守りすべきだったのだがな。面目ない。」

「ごめんねー、グリン王子は一人で行くって聞かなくってさー。オークリーまでの道は危険が少ないし、グリン王子ってばかなり強いから大丈夫だと思ってたんだけどねー。」

「へえ、そうなんだ。」

あの細身のイケメン強かったのかーとソラは感心する。

目の前のホストみたいなライトも騎士団長と言うぐらいだから相当強いのだろう。

バールのような厳つい男が強いと言うのなら納得できるのだが、線の細い男が強キャラなのはまさにファンタジーならではだろう。


ソラが変な感心をしていると、不意にライトがソラに顔を寄せる。

「でさ、君、そのグリン王子がてこずるぐらいの相手を倒しちゃうなんてさ、君も相当ヤるんでしょ?」

と軽薄そうな態度と打って変わって、危険を感じさせるような声音で囁いた。

ライトの言葉には明らかな殺気が籠っていた。

「うわ、ちょ、離れろ。」

しかし、一般人のソラは一切気づかず、やっぱりナンパかよと思って突き放した。

寒気も感じたが、男が顔を寄せてくる怖気としか感じなかった。


ソラに突き放されたライトはキョトンとする。

あんなに殺気を込めて近づいたのに、何事もなかったかのように突っぱねられた。

ライトはニタリと口角を上げ

「やるねぇ…♪」

と嬉しそうに呟いた。

「おい、ライト、悪い癖だぞ。」

そんなライトをバールが窘める。

「ゴメンゴメン、ちょっと気になっちゃってね。ほら、捕まった賊ってあの殺人ギルドの奴らしいじゃーん?そんな奴らをこんな女の子が退治したって聞いたらどうしても気になっちゃってぇー!」

「全く、お前と言う奴は…。」

あまり反省の見えないライトにバールはため息をつく。


「気を悪くしないでくれ、こいつは昔からどうも強い人間に目が無くてな。」

「はぁ…。」

「そう、僕ってば君に興味津々なの。」

「だから寄るなって!」

バールが肩を掴んでいるが、ソラに近づこうとするライト。

ソラは心底嫌そうに距離を取ろうとする。


「すまんすまん、恩人殿に迷惑をかけてはいけないし、俺たちは立ち去るとしよう。行くぞライト。」

ソラの気持ちを汲んでか、バールがライトの腕を引く。

「あーん、僕はもっとお話ししたかったのにー!もーう、まったねー!」

バールに引っ張られながらバイバイと手を振るライト。

ソラは、二人を見送り。

「まあ、悪い奴らじゃなさそうだけど、ナンパだけは勘弁して欲しいねったく…。」

やれやれと首をふった。


「ソラさーん!」

騎士たちが居なくなってすぐ、サクラが人込みを抜けてソラに駆け寄ってきた。

「おう、一人か?」

「えっと、ルビィちゃんとゴンちゃんはあそこにいるよ。」

そう言って、ホールの奥の壇上を指さすサクラ。

ソラ達が最初に立たされたところだ。


「なんかヤース王子があっちに集まれって言ってて…。」

「あー、なんか賞状でもくれるのかね?」

「多分、そんなような事言ってたからそうだと思うよ?」

「行きたくねえな…。」

「まあまあ、二人も王子様も待ってるし…。」

そう言われては行かない訳には行かないと思い、ため息をつくソラ。

「はぁ、まあしゃあねえか…それなりにゴチになったしな。」

「うん、いこっか。」

「ああ…。」

重い足取りでルビィ達が待つ壇上の方へとソラ達は歩き出した。


「そうそう、サクラに言いたい事があったんだ。」

「ん?なぁに?」

ふと思い出したように歩きながら口を開くソラ。

「あのプリンみたいな肉?…すっげぇな…。」

「あー…。」

食べちゃったかあと、サクラは籠った相槌を打つ。

この場では、地球出身の二人にしか分からないこのなんとも言えない感覚を共有し、残念な空気になりながら壇上へ向かうソラとサクラであった。

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