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流されるままに、馬車で王城へ連れて来られたソラ達一行。

招待してくれたヤース王子はウザかったが、初日に入れなかった城へ入れると言う事でなんだかんだでテンションが上がっていた。

城門を通る時に馬車の窓を開けて門番達に手を振る程だ。

「おーっす!なんか招待されちまったぞー!はははは!」

と楽しげに声をかける。

ソラに気づいた門番達は揃って手を振り返した。

「この前はありがとー!」「写真って言うんだっけ、大事に飾らせてもらってるぞ!」

「また来てくれー!」

などと口々に感謝を叫ぶ。


「ほう、何やら慕われておるな?この国に来て間もないと言うのに中々やるではないか。」

ヤース王子はそんなソラの様子を見て感心しているようだった。


馬車は門を通りすぎ、城のすぐ手前で止まりソラ達を降ろした。

そして、城から現れたメイドたちがソラ達一行を囲んで、流れるように更衣室へと連行する。


「なんだなんだ!?」

「さあさあ、ちゃっちゃと着替えましょうねー。」

更衣室に着くなり、ソラ達は抵抗する間も無く服を脱がされた。

メイド達はバサリ!と勢いよくソラ達をひんむき下着姿にさせる。


「きゃ!」

サクラが思わず悲鳴を上げる。

突然服を脱がされたのだから無理も無いだろう。

だが、人は悲鳴がした方をつい見てしまうのだ。

ソラが声のした方に目を向けると、下着姿に剥かれたサクラが居た。

女子高校生の下着姿、おじさんであるソラはとても見てはいけないモノを見たのではと言う気持ちになってしまい、顔を真っ赤にする。

その視線に気づいたサクラは

「え、あ、やだ!見ないでよ!」

とこちらも顔を真っ赤にしていた。


手で体を隠そうとしたが、メイドがテキパキと体のサイズを測っており、腕も掴まれていて隠す事は叶わなかった。

「恥ずかしいよ…。」

「わ、悪い!」

羞恥に震える声でサクラが言う。

ソラは気を遣い顔を反らし目を閉じた。

「俺は目をしっかり閉じてるから!大丈夫になったら言えよ!」

「う、うん…。」

サクラはソラの心遣いに感謝する。


そして、ふと気づいた。

女の子の姿のソラに見られて恥ずかしいと思うと言う事は、ソラを男の人と認識しているのではないか。

態度とか言動が身近な男性、父親に近い事もあったし、可愛い女の子だけど男性と認識していたのだ。

そう考えると、連日同じベッドで寝泊まりしていたのが急に恥ずかしくなってきて顔から湯気が出そうになるのだった。


「べつに、みててもいいよ?」

顔を赤らめているサクラを他所に、ルビィが言う。

「え!?」

とサクラが思わず聞き返す。

「いまさら、だし…。オークリーでは、おふろで、ときどき一緒だったし…?」

「あー、まー、そうだけど…ほら、ジョシコーセーはちょっとまずいし。」

「?よくわからない…けど、サクラがはずかしいなら、しかたない…?」

「そうそう、だから俺はしばらく目を閉じてるからなー、両手も上に上げておくからなー。」

痴漢と思われないように満員電車で両手を上げるサラリーマンのごとく、無害アピールをするソラだった。


「ちょっと待って…ソラおじさん?一緒にお風呂ってどう言う事?」

ソラを中身男とハッキリ認識したばかりのサクラが思わず、冷たい声で尋ねる。


ソラは、(ヤバい、訴えられるやつだ。)と思いながらも言い訳を考える。

「ええと、前に居たオークリーの街ではよく公衆浴場を使ってたんだけどなー、そこに混浴があって…いや違う、あったけど行かなくて…。」

混浴に入ってたと嘘を付こうとしたが即座に撤回する。

嘘を重ねてもルビィが何か言えば即バレるし、重ねれば重ねるほど違和感を増すだろう。

(落ち着けソラ、営業モードだ。会議を思い出せ…。)

これではまずいと思い思考を切り替える。ソラは現場監督をやっている。

工期遅れなどでこの手の不利な言い訳は何度もしてきたのだ。


「オークリーには、公衆浴場があって、男性、女性、混浴に分かれていたんだけどよ、俺は毎回女性用に入っていて、その時何回かルビィ達と一緒になった事がある。」

「ふーん…。」

冷たい反応。

だが、まだだ、まだ事実のみを語っただけだ。

もっともらしい理由を積み重ねて納得していただく。

それがソラの言いプレゼンだ。

「それで、最初は混浴に入ろうとした訳だよ。俺にちょうどいいだろ?そう思ってたんだよ…。」

ここで、落ち込むような声のトーンに切り替える。

エピソード、失敗談を語って、聞く相手を感情的にさせるのだ。

「そこで…俺の体がめっちゃ見られるのよ…、それはもうジロジロと。寒気がするほどにさあ…。なんでだと思う?」

突然サクラに話を振る。

「え、あ、そうか、ソラさんってすっごい美少女だから…そんな人が…混浴にってなると…。」

話を振られ、少し考えてハッとしたサクラ。

これから話す事を相手に気づかせて、受け入れやすくする。

「そう、そうなんだよ、エルフの美少女って体だとどうしても見られちゃうんだ。それに、オークリーって結構変態っぽい奴も居てな、実際狙われていたんだよな。」

モヒカンオークの事を思い出しながら語り、言葉に現実味を持たせる。

「そ、そうなんだ…。」

サクラの声が、冷たいものから、同情するような声に変わる。

さらに、そこにソラは次なる策に出る。


(ゴン、聞こえるか。)

(あ、はい、聞こえますよ、ソラさん?え、あれ?これ念話?使えましたっけ?)

念話、窮地に立たされたソラは新しい能力に目覚める。

契約した精霊と、意識のみで会話する念話であある。

ソラの知識にはそんな事ができるなんて全く無かったが、本能だけで使えるようになったのだ。

(念話って言うのかこれ、まあいい、ちょっとサクラの心から不安とか怒りを取り除くような魔法使えないか?)

(はあ…いいですけど…。)

サクラに向かって気づかれないようにみょーんと魔力を飛ばすゴン。


それを確認したソラは、言葉を続ける。

「仕方なかったんだよ、それに、この体は借り物だと思うからさ…間違ってもキズモノにするわけにはいかねえし、仮にも女の子だから不潔にするわけにもいかないだろ?だから、女湯に入ってたんだよ…。まあできるだけ周りを見ないよう(努力)してたさ。」

「そう、なんだ…仕方なかったんだね。」

サクラはついに納得してしまった。

(おい、ゴン、サクラから不安とか怒りって感情あるかわかるか?)

声のトーンが落ち着いた事で、ひとまず安心だと思いゴンに確認を頼む。

精神操作が得意ならなんとなくわかるんじゃないかと考えての問いであった。

ゴンは、むむむっとサクラを伺う。

(不安も怒りも不快感も無さそうですねー。)

そして、見たままの事実をソラに伝えた。

良かった、言い訳成功だとほっと胸をなでおろすソラ。


「とりあえず、なんかメイドが着替えさせてくれてるんだろ?それが落ち着くまで俺は目を瞑ってるから安心しな。」

ソラが言い訳している間も、周りのメイドはテキパキと作業をしており、服を用意して、着替えさせようとしていた。

サイズを合わせたり、長さを整えたりと急ピッチで作業している。

ソラは再びサクラに軽蔑されないように紳士な振る舞いをするのだった。


しかし、とゴンは不思議に思う。

(なぜ、私の精神操作魔法がレジストされたのに怒ってなかったんでしょうかねえ。)

ゴンは、サクラに魔法を飛ばしたけど弾かれていたのだ。

(最初から怒りも不安も無かった、別の感情ですかね?あの冷たい反応は?)

などと、ゴンは考えるが、ソラに伝える事は無かった。

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