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-34- サーキュライト王国の休日3日目

翌日、ソラたちはお昼前に冒険者ギルドに訪れていた。

モンスターの報奨金を分配する為に呼ばれたのだった。

と言っても、分け前を受け取るのはルビィとサクラである為、ソラとゴンは付き添いである。

その後一緒に食べ歩きでもしようと画策していた。


ギルドの扉を開くと、ソラたちに一斉に視線が降りかかる。

「お、来た来た!」

「あの子達だ!」

「殴り巫女もいるぞ!」

「可愛い!」

「可愛いですね。」

と視線の主たちが話しながらソラたちを囲むように寄って来た。

一瞬逃げようかと思ったが、

中に見知った顔、と言うか、昨日聖剣を押し付けたライロも居た。

「よう、昨日ぶり。」

「こんにちはー。」

「お、す。」

「どうもー。」

どうやら、ソラたちを取り囲む彼らが悪夢の団の面々なのだろう。

見覚えのあるマジシャンの姿や、眼帯の男もいる。


「よく来てくれたな!いやあ昨日は本当に世話になった!」

眼帯の男、ガスが話しかける。

「おう、とも、さー。」

と偉そうにルビィが応じる。

「それじゃあ、早速だけど分け前だ。驚くなよ?なんと金貨500枚だ!全員でじゃないんだぜ?十で割った一人頭でだ!」

どうだ!驚いたか!と言わんばかりの大袈裟な身振りでルビィとサクラの前にずっしりと重そうな金貨の袋を差し出した。

「こんなに!?うれしいなー!」

とサクラはわざとらしく驚いたか。

ルビィは「ん、もうけた。」と普通のリアクションだったが。

矢張り昨日のモンスターはソラたちが最初に断った依頼のモンスター、ジャイアントダークフレイムスパイダーだったようである。


「いやー!ほんと!最高だぜ!確かにヤバかったけどこんな報奨金の出るモンスターだったなんてな!」

「ああ!この剣が無けりゃ危なかったけどな!」

ガスがライロの肩に腕を回し、ライロは見せびらかすように剣を掲げる。

「よ!聖剣のライロ!」

「サーキュライトの勇者様!」

「結婚してーん!」

などの言葉がかけられ、最後にはライロコールがはじまった。

大金を手に入れた為みなかなりハイになっている。

仕舞いには、

「酒だ!冒険者全員に酒を奢ってやるぜ!おら!誰か買ってこいよ!」

とガスが大はしゃぎで呼びかける。

そして、間も無くして冒険者ギルドを上げての酒盛りが始まった。


「昼間っから…なんて奴らだ…。」

ソラが酒盛りで大はしゃぎでしている冒険者達を見て呆れた声を出す。

「まあまあ、楽しそうでなによりじゃないですか。」

「ん、いいぞ、うたい、おどり、くるうがよい。」

「ルビィちゃん何言ってるの…?でもほんと、楽しそうだね。いいなー大人はお酒飲めて。」

宴状態の冒険者ギルドを4人は少し離れて眺めていた。

ルビィは元々テンションが低く、酒宴を好まない為。

ゴンは、自分が入っていいのか分からないので。

サクラは未成年の為とおじさんの中に突入する勇気が無い為。

そして、ソラは

「俺も飲めれば騒ぎたかったんだがなあ…。」

参加したくても、飲めないからだ。


ソラにはファンタジー検定の勉強をしていた時、酒場で色んな種族が酒盛りしている光景に憧れを覚えていた。

もしそんな世界に行けたら俺もそこに交じって酒盛りしたいと。

だが、実際にそんな世界に来てみると、まさか自分が女の子になっているとは思いもしなかった。

その姿はまだ幼く、隣にいる女子高校生よりも年下に見える。

未成年も未成年、アルコールを飲むわけにはいかなかった。


「くそ、運命ってのは残酷だな…。」

なんてぼやいていると、突然冒険者ギルドのドアが勢いよく開かれた。

そして、よく通る声で

「ここにソラと言う冒険者はいるか!」

と叫んだ。

その声の大きさ、威圧感もさることながら、声の主の風貌を見て冒険者ギルドは静まりかえる。

銀の髪をオールバックにしており、赤く豪華なマントをなびかせた男が腕を組んで立っている。

その眼光は獅子のように、強く、気位の高さを感じさせる。

「王子だ…。」

そんな呟きが静まりかえった冒険者ギルドに響く。

「ヤース王子がいらっしゃったぞ!」

誰かが思わず声を上げる。

おおお!っと一斉にギルド内が歓声に包まれる。

「キャー!王子よ!本物よ!」

「ヤース様ー!」

とギルドの受付嬢や女冒険者が黄色い声を上げる。

「王子!なんと勇ましい姿!」

「なんて覇気だ…そこいらの戦士とは格が違うぜ…!」

と男冒険者も唸る。

お祭りムードだった冒険者ギルドが、一旦静まりかえったと思うとさらに勢いついて騒がしくなった。


そんな中でも、よく通る声で、銀髪の王子は言い放つ。

「冒険者諸君!並びにギルド職員諸君!突然の来訪で驚かせたな!余は此度人を探しに参った!」

すると、ギルドは再び静まりかえる。

ただ、全員が演説を聞くように耳を傾けていた。

「その者の名はソラ!エルフの少女である!供に赤毛のドワーフ、獣の精霊、黒髪の魔女を連れている冒険者だ!居るなら名乗りを上げよ!」

王子がそう言うとギルドの人間が一斉にソラを見る。

人違いだったらよかったんだがな、と思いながら、素直にソラはその王子の元へ出向いていった。

高圧的であまり好きなタイプの人間ではないが、なんだが人気がありそうだし悪いようにはならんだろうと考えていた。

ソラの後にゴン、ルビィ、サクラが続く。

「どうも、ご指名頂いたソラです。」

高貴な人間に名指しで呼ばれ、どう挨拶していいかわからず取り敢えず名乗った。

完全にキャバ嬢みたいになったなと言ってみて気づいて笑いそうになり少し口元が緩むがなんとかしてこらえる。

そんなソラを見て王子と呼ばれる男は

「ふむ、そなたがソラか。弟が世話になったと聞いている。余はサーキュライト王国第一王子、ヤース・ギル・サーキュライトだ。」

と名乗った。

「はぁ、どうも。」

いきなり第一王子とやらに来られても、なんとも反応に困るソラだった。

だが、とりあえずグリン王子を助けた時の事を感謝しているらしく、害意は無さそうで安心する。


ヤース王子は、名乗り終えた後、ソラをマジマジと見つめ、

「ふむ、さすがエルフか、美しい娘だな。」

と言った。

そんなほめられ方をしてもなと思いつつ、何も言わないのは失礼かと思い、

「どうも、ありがとうございます…?」

と返事をする。

そして、ヤース王子はさらにソラの後ろに居る、ゴン達も眺める。

視線を向けられたゴン達は、とりあえず軽くどうもーと会釈する。


ゴン達を見た後、ふむふむと顎に手を当て考え込む様子のヤース王子。

「なるほど、お付きの者も見た目は悪くない。良いぞ!全員ついて来るがいい!」

と言ってギルドの外へ、マントをばさりと翻し出て行った。

「な、なんだ?」

と戸惑うソラ。

すると、外から「何をしておる!早く来ぬか!」と声がかかる。

「なんか、行った方が良くない?」

「ですね、王子様ですし。言う事聞いておきましょう。」

「そう、かも。」

「むう、行くか…。」


ソラを先頭に、4人は冒険者ギルドの外に出ると、豪華な馬車がギルドの前に待ち受けていた。

先ほどの王子は、既に中に入っており、腕を組んで待っている。

「どうぞ、お乗りください。」

馬車の外に居た従者に促されソラ達は全員馬車に乗り込んだ。

そして、戸が閉じられて馬車は動き出す。


「あの、どこへ行くんですか?」

いきなり連れて行かれる事に対する不満をなるべく表に出さぬよう努めながら、ソラは尋ねる。

「なに、弟を救ってくれた礼に城の宴に招待してやるのだ。第一王子直々にな。」

「はぁ…。」

強引で、そしていきなりな招待があるもんだなと言いたかったが、ソラはぐっと言葉を飲み込んだ。

「光栄に思うが良い、余が招くなど滅多に無いのだぞ!市井の者なら泣いて喜んだだろう!」

そう言ってフハハハと高らかに笑うヤース王子。

「どうした?もっと嬉しそうにせぬか!フハハハハ!」

心底ウザいとソラ達は思った。


流されるままについてきたが、こんな男について行って大丈夫なのだろうかと今更ながらに思う。

そんなソラ達を乗せて、馬車は城へと進んで行くのだった。

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