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冒険者ギルドに帰ると、ソラ達はそれなりに大量の薬草を納品し、それなりの報酬を手に入れた。

「まあ、しばらくは大丈夫だろ。」

大金では無いものの、当面冒険していく分には十分だった。

なにせ、宿泊費は運よくタダなのだ。

それだけでかなり楽になっている。


報酬を均等に分けようとしたところ、ゴン、ルビィ、サクラは付き添いだから要らないと主張したが。

「いいから、仕事の対価ってのはちゃんと貰っておけ!休日勤務させて金払わないと言う愚行を俺にさせないでくれ…それに、金が足りなくなったらまた働くだけだしな。」

と無理やり押し付けられていた。

自分の持ち金が少ないから働いたのに自分の手取りを減らして配るなんて、その辺りはお堅いなと、3人は顔を合わせて苦笑いした。


ソラ達は巨大蜘蛛については特に何も報告しなかった。

完全に悪夢の団に丸投げするつもりである。

元々彼らが戦っていたと言う事だし問題ないだろう。

餅は餅屋である。


冒険者ギルドから外に出ると、外はもう暗くなっていた。

「さて、晩飯はどこにするかなー!」

とソラは多少潤った財布を鳴らしながら思案する。

「ちょっとあんたら!」

そんなソラ達に切迫したような声がかかった。

一瞬、誰だこのおっさんと思ったが、やたらキラキラした剣を持っていたので思い出す。

「おーおー、さっきの悪夢の団とか言う…。」

「ライロさんでしたね。」

ソラが名前を思い出せずにいると、ゴンが引き継いだ。

「そうだ、その人。さっきはどうもー、うちの仲間がお世話になったみたいで。」

ペコリと一礼して、そのまま立ち去ろうとする。

「いやいや、待ってくれよ!」

だがライロは両手を広げて立ちふさがった。

「あんたら急に居なくなっちまうから団員一同で探してたんだよ。この剣の事もあるし、モンスターの報奨金の事もあるからよ。」

「だってよ、ルビィ、サクラ。」

じゃあ自分には関係ないよなと、2人に振るソラ。

「ん、わたしはなにもできなかったし、いらない。」

「私も、防御しかできなかったしいいかなーって…。」

とあっさり断った。

「いやいやいや!正直俺たちのパーティより活躍してたし!貰ってくれねえとメンツってもんが立たねえよ!」

「いや…。」

「でも…。」

ルビィもサクラも渋っていた。

「メンツが立たないって言うなら仕方ねえな、ルビィもサクラも貰っておけよ。」

すると、ソラが2人に報酬を受け取るように薦めた。

「「えっ?」」

こう言う時に断りそうなソラから受け取るよう言われたのが意外で、思わずハモってしまったルビィとサクラ。

「こう言う時はちゃんと貰うのがスジってもんだぜ。大の男に恥をかかせてやるなよ。」

と言うのがソラの弁であった。

「お、話がわかるじゃねえか嬢ちゃん!将来良い女になるぜ!」

ライロが褒めるが、良い女になると言われても嬉しくないソラは困った顔で、「まあ、な?」と曖昧な返事をする。


取り敢えず報酬は悪夢の団全員と山分けでいいからと言う話で、報酬の分配の話は進んで行く。

モンスターの報奨金話はまだ金額がはっきりしていない為、明日渡しに行くと言う話で纏まった。

ソラ達はモンスターの特徴からあの依頼のやつだよなと察していたが、直ぐに分かることだろうと思い言わなかった。

悪夢の団は8人パーティだったらしく、ルビィとサクラを含めた10人で山分けしても結構な大金になるだろう。

恐らく一人金貨500枚に。


モンスター討伐の報酬話が上手く話が纏まったところで、ライロがさらに別の話を持ち出した。

「それと、この剣なんだがどうしたらいいんだ?出来れば返したいんだが…。」

と言って聖剣を差し出してきた。

「無理ですね。選ばれた人にしか使えませんので私たちに渡されてもどうしようもないです。」

とゴンがキッパリ言い放つ。

「そ、そんな…街の冒険者やってる俺にはどう見ても過ぎたもんだよなあ?英雄とか勇者様が使うようなやつだよなこれ!?」

「ええ、て言うか勇者専用装備ですよ。」

容赦無く真実を告げるゴン。

「て事は俺が勇者って事になっちまうじゃねえか!既に大活躍中の勇者様がいるってのに!噂ではどこぞの姫君を魔王軍から救ったり、魔王の幹部倒したり、新興勢力の魔人軍ってのも蹴散らしたとかって聞いてるぞ!俺はただの中年冒険者だぞ!!!」

ライロは流石にそんなの認められるかとばかりに叫んだ。

ソラは勇者ってそんなに噂になる活躍してるんだな、間違っても遭遇しないようにしようと思いつつ、ライロに同情を覚えた。

「なんとかしてやれないのか?」

と思わずゴンに声をかける。

「ソラさん…。すいません、そう言うものなので無理かと…。譲渡もできなくなっていますので、他の人が使おうとすると色々とペナルティがあるんですよ。」

「なんだそりゃ、不便すぎんだろ…。持ち主が無くしたりしたらどうすんだ。」

「その時は不思議な力で戻って来ますねー、安心安全設計なんですよ。」

「呪いか。」


ソラとゴンの会話を聞いていたライロがさらに顔色を悪くする。

「つまり俺は一生この剣を手放せないのか…?」

絶望に声を震わせるライロ。

「まあまあ、そう悪いものではありませんよ。」

そんなライロにゴンは優しく声をかける。


「あの蜘蛛みたいに強すぎるモンスターがまた現れたらどうします?街にいる冒険者のあなたたちがまた戦う事になりますでしょう?その時に街を守れる強い力が必要になって来るじゃありませんか?」

「まあ、あんだけヤバい奴がまた出たらな…。」

「そうですよ!その時にその聖剣があれば安心ですよ?」

「確かに…。」

「それに、あなたは正しい心を持っています!聖剣が力を貸した時、誰かを守護りたいと思っていませんでしたか?」

「ああ、あの時はそう思ってたな。」

「そう、聖剣は人を守護りたいと言う気持ちに力を貸すのですよ。だから、そう心から想えるあなたが使うべきなんです。聖剣は剣ですが武器ではないのですよ。盾です!人を危険から守護する盾!あなたなら、正しく使えますよ!」

「お、おう!そうだな!なんだかそんな気がして来たよ!」

「なので大切にしてください。街を、人々を守護ってあげてください!」

「そうだ!俺は守護る!この街を!街のみんなを!」


みょんみょんと妙な魔力を放ちながらゴンはライロを説得し、納得させた。

「なあ、お前精神を操作する魔法とか使ってないか?」

ゴンの言う事を全て鵜呑みにして、やる気になって聖剣を掲げるライロの様子を見てソラは怪訝に思ったので小声で訪ねた。

「はい、人をその気にさせたり誘導するのが私の専門でしたのでー。」

ゴンは肯定した。

「まあ、丸く収まったからいいけどよ…お前絶対その魔法を俺に使うなよ!」

「出会った頃に使い続けてましたよ?全然効きませんでしたけど。」

「マジか。」

「はい、説得してる時にその気になれるようにとめっちゃ使ってました。」

ソラは釘を刺そうとしたら衝撃の事実を聞かされる。

そして、自分には効かなかった事を心底安堵した。


取り敢えず聖剣の方はライロが引き取る流れで丸く収まった。

かに見えたのだが、今度はこんなとんでもない武器をタダで貰うわけには行かないと言う。

「いやー、元々俺たちのもんでも無いし…。」

「いや!聖剣になった宝玉を持ってたのはそこの赤毛のお嬢ちゃんだ!つまりこれはあんたらの物だったんだよ!だからせめて代金だけでも!」

「えーと、じゃあ、ルビィに任せる。」

ソラは金貨の詰まった袋を渡そうとするライロをルビィに押し付けた。

「ん、じゃあ、貰う。」

そして、ルビィはライロから金貨を受け取った。


「よし、これですっきりしたぜ!本当はもっと払いたかったけど、俺の有り金って言ったらこんなもんだからな。」

爽やかな表情でライロはそう言う。

「じゃあ!また明日な!」

そう言って軽い足取りで去って行った。


「儲けたな、ルビィ。」

とソラはルビィに声をかけると、ルビィはソラの方に金貨の詰まった袋を投げて寄越す。

突然投げられたので、ソラは思わずキャッチした。

「なんだよ、いきなり投げてきて。」

「だって、それ、ソラのものだし。」

「は?お前が貰ったもんだろ?」

突然のルビィの言動に戸惑うソラ。

ルビィは構わず続けた。

「もともと、宝玉は、ソラがもってた、よ?わたしが、あずかったけど、もらってないし、だいきんはソラがもらうべきだよ?」

と言われる。

「いや、でも…。」

ソラがどう断ろうか考えていると、さらにルビィが追い打ちをかける。

「じゃないと、スジがとおらないよ?」

ビシッと指差すルビィ。

「スジが通らないなら仕方ないね。」

「ですねー。」

サクラとゴンも同意して笑う。

「…たく、あぶく銭は好きじゃないんだよな…。でも、スジが通らないか…。」

論破されたなと、ソラは観念する。

「じゃあ、しゃーねーな!貰うさ!」

と金貨を貰うことにした。

「ん…。」

ルビィはそう言って満足そうに微笑むのだった。

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