表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/114

-29-

「野草取りみたいで案外楽しいな、これ。」

ソラ達が引き受けたのは、結局普通の報酬の薬草集めだった。

薬草の群生地があるのは街から近場の森の為、あまり危険は無いが、モンスターが出る事も皆無では無い為戦闘力のある冒険者に依頼されている。

「師匠の手伝いでよく同じ事してるから私はなんかいつも通りだなー。」

「わたしは、闘いたかった…。」

「まあまあルビィさん、モンスターが出たら頑張りましょう?」

ルビィはメイスを素振りしながら不満を露わにする。

「もしかして、まだ昨日の事にイラついてんのか?あれからずっと不機嫌だろ。」

「あたりまえ、1発殴ったくらいじゃ、すっきりしない…。」

どうも昨日の変態司祭の事が未だに許せないらしい。

神殿に立ち寄った時もメイスで肩を叩いて威嚇していた。

「とりあえず体動かしてるとそのうち忘れるさ。」

とソラは軽く流した。

むぅーと頰を膨らませ採取に加わるルビィだった。


暫く採取を続けていると、辺りに薬草の数が少なくなってきた。

「ふーむ、移動時かな?」

若い芽を残しつつ、大量の薬草を採取したのでさらに別の場所へ行こうとしていた。

もう十分に薬草は採ったのだが、採取依頼には上限が無かった為、取れるだけ取って稼ごうと言う腹づもりだ。

因みに採取済みの薬草はゴンとサクラが不思議空間に収納しているので本当に取り付くせる。

「じゃあ、別れて採取しよ?」

とルビィが提案した。

「なんだか今日はやけに喋りますねえ。珍しい。」

ゴンがそんな事を言う。

言われてみればそうである。

まだ機嫌が悪いのだろうか、としげしげとソラはルビィの表情を伺ったが、あまり表情が無いので分からなかった。

なので、とりあえず承諾する事にした。

「別れた方が効率いいのは確かだしな、よし!じゃあ荷物収納できるゴンとサクラで分けて、ルビィはゴン、俺はサクラと一緒に行こうか。」

「うん、いいよ。」

「はい!」

「だが、ことわる…。」

まさかのルビィからNGが出た。

やはり機嫌が悪いんだろうかと思ったが、

「シャッフルたーいむ、たまにはゴンじゃない子とくんでみたい。」

とテンションがいつもより高めだった。

「なんだそりゃ、まあ良いか…ゴンも、サクラもそれで良いか?」

「うん、別に良いよ?」

「私も問題ありませんよ。」

「ん、ゴン、ありがと。」

こうして、ペアを組んで別々に採取する事となった。


サクラ、ルビィペアと反対の方向の森の奥に向かうソラとゴン。

「なんか、いつもと違う感じだったなルビィのやつ。」

「いやあ、気まぐれでおかしなテンションになる事はよくありますよ。最近大人しかっただけで、元々ラケルさんとかリリスさんを振り回したりしてましたからねえ。」

「なんだ、そうなのか…。じゃあ心配いらないのかね。」

「ええ、昨日のあれで久々に感情が高ぶっただけですよ。多分。」

「じゃあ付き合わされたサクラは大変かも知れねえなー。」

あはははーと笑いあって和気藹々と森の奥へ進むソラとゴン。

モンスターにも遭遇する事も無く、のんびりと採取を続けるのだった。


一方、ルビィはサクラを引っ張ってソラの反対の、森の外へ向かって走っていた。

「ちょっ!ルビィちゃんどうしたの!ソラさん達と別れてから急に走り出して!」

「いそいで、こっち…!すぐにわかる…!」

いつになく真剣な顔つきでルビィは言う。

「え、何…何かあるの?」

「サクラ、強いって言ったよね?」

突然のルビィの問いに不思議に思いながらも

「えと…師匠は平均以上には鍛えてやったって言ってたけど…ほんとにどうした…の…」

ルビィが駆けていく先から、人の叫び声が聞こえた事にサクラは気づいた。

叫び声、雄叫び、怒声が飛び交っている。

何かを察したサクラは、不思議空間から杖を取り出していつでも戦えるようにする。

ルビィも、引っ張っていたサクラから手を離しメイスを手に持つ。

「うおおおおお!!!」

「この化け物め!」

「「ギシャーーーー!」」

ギィン!ギィン!と金属のぶつかるような音も聞こえる。

「なんか、ヤバそうだね…。」

「ん、だからソラとはわかれた…。」

「そっか、でもよく気づいたね?」

「プリーストだし、こんなに邪気つよければ、わかる。」

さらに走る2人。

戦闘音が聞こえた場所は、もうすぐそこまで来ていた。


2人進むその先では、巨大な黒い蜘蛛と冒険者達が戦っていた。

冒険者達が劣勢で、蜘蛛に追い詰められている様子だ。

蜘蛛は眼を真紅に光らせて顎をカチカチと鳴らし威嚇する。

退治する冒険者達は、各々武器を構え飛びかかる隙を伺っている。

さらにその冒険者達の後ろには、何人かの人間が倒れていた。

恐らく蜘蛛の攻撃で吹き飛ばされたのだろう。

その光景を目の当たりにして、サクラは体をキュッと竦ませた。

「強いとこ、見せてね?」

ルビィがサクラに向かって言う。

「で、できるかなあ…。」

初めて見るモンスターに恐怖を感じている。

サクラはこの世界に来てから、魔女に鍛えられ戦う力を手に入れた。

だが恐いものは恐いのだ。

足が震える。

だが、倒れている冒険者達を見て、助けなきゃとも思う。

サクラは杖を握りしめ、戦おうと意気込むも、動けずにいた。

そんなサクラの前にルビィがスイと出る。

「わたしも、やるから。」

そう言って、ルビィは巨大な蜘蛛に突撃して行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ