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-28- サーキュライト王国の休日2日目

人間は忘れる動物である。

記憶は当然消えて行くものであり、感情もまた同じ。

ふて寝をしてそのまま朝を迎えたソラは、前日の悲しみを綺麗さっぱり忘れていた。

完全に復活したソラは、体を起こして辺りを見渡すと、隣でサクラ、ゴン、ルビィが一緒に眠っているのが目に入る。

その少女達の安らかな寝顔を見て、別に女扱いされててもいいか、などと思うソラだった。


3人は、ソラよりだいぶ遅く寝たのだろうか、目を覚ます気配が無かったのでソラは先立って本日の計画を立てる事にした。

街の中の観光らしい観光は昨日十分に堪能したし、食べ歩きに重点を置いて見ようか、サクラに神殿も見せてやりたいな。

などと考えてると、ふとウォレットが気にかかる。

旅支度で結構お金を使ってしまっている上に、これまで浪費しかしていない。

オークリーでの蓄えはそれなりだったが、革ジャンなどソラは自分好みの服を揃えるのにかなり出費していたように思う。

昨日の食事も値段を気にせず食べていたのでさらに減っているはずだ。

恐る恐る財布を覗く。

そして、思わずため息をつくソラだった。


「と言うわけで、休みを堪能しようと思ったが俺は休日出勤する事にした。」

宿で朝食をとりながらソラは全員に語った。

「別に構いませんよ、なら食後は冒険者ギルドに行くんですか?」

「いや、その前にサクラと一緒に昨日の神殿には寄るぞ。約束したしな。その後に冒険者ギルドに向かうけど、お前らはどうする?」

「私はソラさんの契約精霊ですよ?ついて行くに決まってます。」

「私もついて行くよ、一応この世界で生活するならって冒険者として登録はしてあるんだ。師匠に無理やりさせられたみたいなもんなんだけどね…。」

「わたしもいく…メイス振り回せてない…欲求不満…。」

「いや、お前らは別に遊んでていいんだぞ?」

ソラは俺は仕事行くけどお前らはどうやって暇をつぶす?と言うつもりで聞いたのだが、何故か全員冒険者ギルドに行く気らしい。

のんびりできる時ぐらいのんびりさせてやりたいと思っていたのだが、思った以上にやる気になっていたので止めない事にした。


「でも明後日になったら魔女のとこに行くし、軽い仕事しかしないつもりだぞ。取り敢えずしばらくの飯代稼げたらいいんだ。」

「わかった、でも、おかねのしんぱいなら、わたしの財布からだすよ?」

ルビィはソラと旅に出るときに、オークリーの財産を全て金貨に替えていた。

今まで冒険者として稼いでたわけでそれなりに蓄えもある。

「いや、それは断る。前にも言ったけどこの旅は俺の旅だからな。路銀は俺の財布から出す。」

ルビィの甘い提案をばっさりと断るソラ。

旅に出る時も一度提案されているのだが断り続けている。

何故なら、ヒとモの文字が頭を過るからだ。

ソラにとってそれは恥ずかしい事だった。

「それに、オークリーかどっかに帰った時とかどこかで腰を落ち着ける時に必要になるだろうから、ちゃんと取っておけよ。」

ソラは元の世界に帰るのだから、この旅に終わりはある。

その後の事も気を遣って残すようにと考えていた。

「ん…。」

ソラに言われると曖昧な返事を返すルビィ。

あまり変わらない表情には少し不満の影が見える。

頼られたい気持ちがあるようだ。

「そんな訳で、今日は短期労働の日だ!以上!」

とソラは話を締めくくった。


「1日か2日で終わるそれなり実入りの仕事はありませんか?」

朝食を終え、浄水の神殿で記念撮影なんかした後に冒険者ギルドにやって来たソラ達。

受付を見つけるなり、すたすたと歩いて行き単刀直入に尋ねた。

ソラ達をマジマジと眺めた受付嬢は、少々お待ちくださいと言って二つの依頼書を持って来た。

そして片方を差し出して説明する。

「ええと、実入りが良いものでしたら、こちらのジャイアントダークフレイムスパイダーの討伐と言うクエストがありますけど…街から馬で半日ほどの森に出現した凶悪なモンスターの討伐なので正直オススメできません。報酬は金貨5000枚と破格ですけどそれなりの冒険者で無ければ死にに行くようなものです。」

「ふむふむ。」

「聞いたこと無いモンスターですけど強そうですね。」

「名前からして黒くて火を吐く巨大な蜘蛛かな?」

「でかいなら殴り甲斐ありそう…。」

そして、ともう一枚の依頼書を差し出して

「こちらは、女の子にはもっとオススメできないんですけどクリムゾンフレアドラゴンのフンの採取ですね…。最近渡りドラゴンが近くの草原に巨大なフンをして行ったので肥料用に採取して欲しいと言うクエストです。臭いがキツくて、しかもずっと熱を発しているのでかなり辛いので実入りが良いです。場所の近い採取クエストですけど金貨は20枚となっています。」

ソラ達は説明を聞いて思案する。

「うーん、キツイのしか無いか…。」

「やっぱりわたしのお財布つかう?貸しでいいよ…?」

「それは断る!」

ルビィが妥協した提案をするがソラは断る。

「私はモンスター討伐が良いと思いますよ!蜘蛛なんて私の精神魔法で眠らせたらただのデカイ的ですよ!」

「私も戦うならそれなりに、師匠に仕込まれたけど…ドラゴンより弱ければなんとかなるかな?」

「え、ちょっとサクラさんどんだけ強いんですか!?一般人じゃなかったんですか!?」

さらりとサクラがとんでもない事を言う。

「師匠が結構メチャクチャでなんか気づいたらね…あはは。」

と少し遠い目をして語るサクラ。

そんな風に話していると、ソラが「よし!」と心を決めたようだ。

「決めたんですか?」

とゴンが尋ねる。

「おう、やっぱり消去法でこれしか無いだろ。臭いのは嫌だしお前らを巻き込めねえさ。」

「じゃあ、あれにするの?」

「ああ、仕方ないさ。」

そう言って再び受付嬢の前に戻る。

「報酬は普通で良いので、薬草取りとかのクエストはありませんか?」

とソラはどっちも受けないことにした。

「はい、でしたらこちらです。」

ニコリと分かっていましたよとばかりに簡単な依頼書を差し出す受付嬢。

そして、ソラは詳しい説明を受けてサクサクと手続きを進めて行く。


「えー!?」

「モンスター退治じゃないんですか!?」

「ずこー…。」

サクラとゴンとルビィは完全に肩透かしを食らったのだった。


更新ペース下がってからの予約投稿は意味がないと今更気づきました。

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