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「なんで見逃したんですか?」

ゴンがソラに問いかける。

「なんでもするって言ってた…ケツゲまでしぼりとればよかったのに…。」

ぼそりとルビィが呟く。

「ああ、まだ怒ってたのかお前ら。いいんだよ、あんなもんで。」

「でもせっかく弱みになる写真なんてものがあったんですから、二度と立ち直れないぐらい追い込めばよかったと思いますよ?気持ち悪かったですし。」

ゴンはさらりとえげつない事を言う。

ソラの処置に不満があるようだ。

そんなゴンの様子にソラは呆れたようなため息をついた。

「あのなあ?ただ気持ち悪いってだけであいつらを追い詰めてどうするよ、確かに気持ち悪かった!ああ気持ち悪かったさ!でもあいつらにも立場ってもんがあるし人生があるんだよ。簡単に壊していいもんじゃ無いさ。」

「そうでしょうか…そうかもしれませんね…」

「それに、いたずらに相手を追い詰めて、苦しめて、それで喜んでちゃなんつーか、カッコ悪いだろ。恨んだり根に持ったりするのも好きじゃねえ。だから1発殴った。それで許した。そんなもんでいいだろ。」

ソラははい終わり、とばかりにひらひらと手を振り歩みを早めた。

まあ、殺されそうになったわけでも無いし1発殴れたしそれでいいかと、ゴンとルビィは納得する事にした。

早足になったソラに合わせて歩みを早める。

気がつけば空に少し赤みが差しており、夜が近づいて来ていた。

「さーて、じゃあ晩飯食うとこ探すか!」

「にくがいい、にく。」

「いいですねー、お昼は甘いものでしたし夜はガッツリにしましょう!」

そうして、少女たちは観光食べ歩きの旅に戻るのだった。


「そんな事があったんだ、うへー。」

大きなベッドの上で、寝巻き姿の少女が4人。

輪になってお喋りをしている。

別れた後になにがあったかソラ達から聞かされてなんとも言えない顔になっているサクラ。

パジャマは淡い水色に乳白色の水玉が描かれている。足の丈は短く、太ももあたりから健康的な生足を見せている。

「ソラさんはやさしいですよねー、ソラさんがいなければあいつら私の本気でありとあらゆる幻覚と苦痛で攻めたあと廃人にしてあげますのに。」

そんな怖い事を言っているゴンは、黒い薄手のワンピース姿だ。

スカート部分の裾のところは女の子らしくひらひらとした形をしている。

「わたしは、メイスでなぐって、なぐって、回復させて、なぐって、なぐって、半殺しにしてた…。」

さらに暴力的な事を言い出したルビィは、白くモコモコの着ぐるみのようなフード付きのパジャマを着ている。

フードからはウサミミが伸びており可愛らしい。

「お前らなあ…もう忘れてやれよ…気がおさまらねえって言うんなら明日はもっと、パーっと高いメシでも食ってスッキリしようや。」

呆れて苦笑いを浮かべているソラ。

ソラは緑色の縦縞のパジャマにナイトキャップを被っている。

オークリーにいた頃仕立て屋がピンク色のネグリジェを似合うからと渡してきたが断固拒否して、粘りに粘って手に入れた普通のパジャマだ。


「他には何か無かったの?」

サクラがソラ達に問いかける。

「ああ、そういやその後また神殿行って写真撮って来たんだよ。ゴン、出してくれ。」

「はいはーい。」

ソラがゴンに指示すると、ゴンはなにも無い空間に手を突っ込み写真を取り出しサクラに手渡した。

「へー!綺麗なところだね!私も行きたかったなー。」

いいなーと足をじたばたさせるサクラ。

「んじゃ明日ちょっと覗いてみるか?」

「うん!絶対だよ!あとこの柱を背景に一緒に写真撮ろうよ!」

ニコニコと写真の中の水晶柱を指差すサクラ。

「え、俺も映るのか?」

「そうだよ、ゴンちゃんもルビィちゃんも一緒に!いいでしょ?」

ソラの撮った写真は建造物しか写っていない事がサクラにとって不満だった。

観光地に行ったら観光地を背景に自分たちの写真を撮るのがサクラにとって普通だったので違和感があったのだ。

ソラは観光地に行けば観光スポット、建造物、食べ物の写真しか撮らないので自分達を撮ると言う発想が無かった。

でもまあそれも記念になるかと思いソラは了承する。

「約束だからね!」とゆびきりするサクラとソラ。

何の儀式だろう?とゴンとルビィは不思議そうに見守っていた。


「そういやよ、お前ら同じベッドで寝てるけど、今更だけど男の隣で寝てても平気なのか?別の部屋とか取ってもらえるぞ?」

夜も更けて、そろそろ寝ようと言う空気になってきた所でソラがふと問いかけた。

「ソラさんはおじさんなんだっけ?ちょっと恥ずかしいけど…私は平気だよ?」

「おいおい、年頃の女の子だろ…無理しなくていいんだぞ?」

「でも女の子同士じゃ変な事も起きないだろうし…ソラさんは確かに時々おじさんみたいな事言ったりそんなしぐさの時もあるけど…えーと、その…。」

「なんだ?言ってみろよ。」

「その…どう見ても可愛い女の子だから…男の人って意識できなくて…なんかちょっとワイルドな女友達みたいな?」

えへへ、と申し訳なさそうに笑うサクラ。

「なん…だと…。」

女子供に男として見られていないと、はっきり告げられてショックを受けた様子のソラ。

サクラは慌ててフォローする。

「で、でもね!時々大人っぽいって言うか!カッコいいと思う時もあるし!さっきの司祭様を殴って許した話とか!男らしくてカッコいいよ!」

「お、おう…。」

サクラの男らしくてカッコいいと言うセリフで少し目に光が戻る。

「でも見た目が可愛すぎるって言うか…今こうしてパジャマパーティーみたいにしてても違和感なさすぎる気もする…かも?」

持ち上げて落とされる。

ソラはまさにそんな気分だった。

「あ、ごめんなさい!!!でもカッコいいのは本当だから!元気出して!」

女子高生に慰められる。

そんな状況が恥ずかしく、みっともなくてさらにソラを落ち込ませる。

俯き、ぐったりと体の力が抜けていき、orzのようなポーズで項垂れていた。


だがそのまま落ち込み続けるのも大人の男として恥ずかしい。

ふぬぬ、と気合を入れて上体を起こす。

「見た目がいくら可愛かろうが俺は俺!男!カシバヤシソラだ!」

と宣言して鼓舞する。

「そうだよ!ソラさんは男!男前だよ!」

サクラの声援が飛ぶ。

「と言うかソラさん。」

今まで傍観していたゴンが口を挟んだ。

「男とかずっとネタで言ってたんじゃないんですか?」

と首を傾げた。

「え、ずっと言ってただろ…俺はこんな見た目してるけどここじゃない世界のいい歳したおっさんだって。」

信じられないようなものを見る目でゴンを見る。

だが、いやいやと手を振ってゴンは続ける。

「神様の作った体に人格が芽生えて自立して、今では私のご主人様になった事は認めますし、自分探しで魔女に会いに行くと言うのもわかります。でも、ソラさんは可愛いんですよ?こんなに可愛い子がおじさんなはず無いじゃないですか!だからずっと冗談だとばかり思ってました。」

おおう、とゴンのショッキングな告白に再びorzの姿勢に戻るソラ。

そこに、ルビィがぽんと肩を叩いた。

「だいじょうぶ、ソラはソラ。」

「お、おう…ありがとな、ルビィ。」

「うん、ソラは可愛い。可愛い女の子、だよ。」

「ぐふ…」

その一言がトドメとなり、ソラはついに体を支える腕の力を失った。

ベッドに倒れこんだソラは、悲しい気持ちを抱いたまま不貞寝するのだった。


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