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食事の後、サクラは「あー!」と突然叫び声を上げた。

「どうしたんだ?」

とソラが尋ねると、震えた声で

「薬屋のおじいちゃんに商品渡すの忘れてついて来ちゃってた…。」

と述べた。

そして、夜に宿屋で落ち合う事を約束して1人街の西へ駆けて行った。


サクラを見送ったソラ達は、引き続き観光するために住民達にオススメスポットを聞いて回る。

すると、皆口を揃えて浄水の神殿と言う場所をお勧めしてくれた。


教えられた場所へとたどり着くと、そこには白く大きな建物が存在した。

建物からは水路が幾重にも枝分かれして伸びており、街へと流れ出ている。


王城と違い、一般の人の出入りも多いようで、お年寄りから若者までどんな世代の人間も見かけられた。

中には大きな樽を持って入って行く人、樽を重そうに転がしながら出て行く人が居てソラは少し気になった。

「なんだあれ?」

指差し、ゴンに尋ねるが、

「なんでしょうね?」

と知らない様子だった。

まあ取り敢えず入って見たらわかるか、とソラ達は白い建物、浄水の神殿の入り口へと向かって行った。


神殿の中に入ると、ソラはその美しさに息を飲んだ。

大理石のような石材で作られた床と壁、壁際には水路がついており、そこから外に水を流している様だった。

さらに、中央には巨大な水晶柱がそびえ立っており、その天辺には水を纏った巨大な宝石が浮いていた。

宝石が水源なのか、纏った水が四方に、空中をまるで水路があるかの様に流れていた。

「っ…!」

ソラは、すっげえ!と声に出そうとしたが上手く言葉にできず息を吐く。

とにかく、感動していた。

中にある物の美しさにだけでは無い。

天窓から差し込んだ光が、水を反射して壁や床に模様を作っている。

さらに水の流れる音と、ひんやりした空気が心地良い。

その場自体が綺麗だとソラは思った。


「なんとも、綺麗な場所ですねー。」

「きれい…」

ほーっと口を開けてゴンとルビィも魅入っているようだった。


しばらくソラは、ようやく心が落ち着いてきた。

冷静になった頭で辺りを見渡す。

宝石から流れ出る水が壁を伝って水路に流れ落ちているが、どうやら先ほど見た樽を持った人たちがその辺りに何人もいる様だ。

「なるほど、やっぱりか。」

ソラは納得した様子でそれを眺める。

「ああ、なるほど、綺麗な水を汲みに来てたんですね。」

「そう言う事みたいだな。」

「水路があるのになんでわざわざでかい樽持って水を汲みに来てるんですかね?」

「持って帰るのたるそう…」

「よろしければ説明致しましょうか?」

「ん?」

ソラ達があれこれ話していると突然声をかけられた。

振り向くと、そこには白と水色を基調とした高価そうなローブを着た男が3人立っていた。

場所と服装から、ソラは司祭か何かだろうと察した。

話しかけてきた真ん中のふくよかな男のローブが一番派手な刺繍がされており、恐らく一番偉いのだろうと言う事も想像できる。


「ええ、良かったら教えて頂けますか?」

自分たちを観光客と見て声をかけたのであろう。

その親切にありがたく乗る事にした。

「それほど大した理由でも無いのですが、単純に味が違うのですよ。街には水路が通っており生活用水もそこで賄えるのですが、通る際に不純物が混じる事もあり、料理や飲み水はこうして直接汲みに来る者が多いのですよ。」

「なるほどな、水道管みたいにガッチガチでも無いだろうしそうなるか。」

ふむふむと納得したソラ。


司祭のような男は続ける。

「それに、水の宝珠から出たばかりの水は特に美味しいので皆さまその場で喉を潤す事もしております。どうですか?一杯飲んで行かれますか?」

「へえ、それは良い…ゴンもルビィも飲むよな?」

「はい、是非いただきましょう!」

「うん、もらお…」

「では司祭様、で良いのでしょうか、お水を頂いても宜しいですか?」


ソラがお願いすると、司祭は「ええ、では少しお待ちください。」と言って、隣に居た二人の男達と木製の器に水を汲みに向かった。

そして、壁際で水を汲んでソラ達の元へ戻って来た。

差し出された水をソラ、ゴン、ルビィはそれぞれ受け取り口に運ぶ。

その水は、さらりと飲みやすく、確かに水ではあるのだが美味しかった。

甘露と言う言葉がソラの頭を過る。

甘い露と書くだけあって、無味なのだが、甘い爽快感が押し寄せる。

ソラたちは木製の器の水をコクコクとあっという間に飲み干していた。

「っぷはぁーーー!生き返るー!って言いたくなるわ!これ!山登りの最中の湧水とか、そんな感じの美味さだわ!」

「はー、ただのお水でも美味しいと思えるんですねえ。」

「ん、うまい。」

そう口々に感想を述べ、司祭達が手を差し出したので器を返す。

「ありがとうございます、とても美味しかったです。」

ソラはにっこり笑ってお礼を述べた。

「それは良かった、気に入ったらまた是非飲みにきてください。その時は持ち運ぶ竹筒などをお持ちになると良いかもしれませんね。」

司祭もにこりと微笑み返す。

「ええ、是非また居る間に来させていただきます。では…」

「そうですね!次来るときは水筒を持ってきましょう!」

「いい…そうしよ…」

礼を述べソラ達は神殿を後にした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ソラ達が神殿を出たのを見送った司祭達は顔を寄せ合ってひそひそと話し合っていた。

「中々三人とも神聖なオーラを感じる美しい娘でしたね。」

司祭の右隣に居た細身の男が言う。

「ええ、力の強いプリーストか、精霊使いでしょうか。とても美しいオーラを放っていました。」

左隣の肩幅のがっちりした男が言う。

「とても素晴らしい方たちでしたね、これは久々の上物ですねえ…」

ニタリと司祭の口が歪む。

「三人とも、しっかりと飲んでいましたね。」

細身の男もニタリと厭らしい笑みを浮かべた。

「最高です、ああ、私はもう我慢できません!司祭様、私目に是非あの赤毛の娘を味わわせていただけませんか!」

静かに興奮するがっちりとした男。

「そうがっつくものではありませんよ、後でゆっくり愉しもうじゃありませんか。」

と窘める司祭。

「私も、もう我慢できません!私にはあの獣耳の娘を頂きたい!」

細身の男が身を捩り言う。

「こらこら、声が大きいですよ。まああれだけの上物でしたらそうなるのも仕方ありませんか。私もあのエルフの娘は…とてもとても気に入りましたのでねぇ。」

司祭はペロりと舌なめずりをする。

これからの事を考え、クククと笑う三人。

三人で固まってこそこそ話して居たのでその表情は周りから伺い知ることはできなかったが、三者共邪な笑みを浮かべていた。

10/28修正

神殿に入る前の話がすっぽ抜けてたので。

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