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「やっぱり城はでかいなー!かっこいいなー!」

「でっかいことは、いいことだ?」

「うん、近くで見るとすごいねー。」

「これで中に入れたら文句なしなんですけどね…。」

サーキュライト王国の王城、その城門前で4人の少女が話し込んでいた。

少女達とはもちろんソラ達の事である。

「まあ普通、現役の政治機関なんて入れないだろうよ、近くでみれただけで満足だ。」

最初から中に入る事は期待していなかったようで、ソラはさほど残念そうではなかった。

「えー、入りましょうよ!そうだ、王子様の腕輪とか見せたらいけるんじゃないですか?」

「やだよ、ただでさえVIP待遇されてて落ちつかねえのに城なんかでやったらどうなるんだよ…」

ゴンがコネで入る事を提案したが、ソラが却下する。

「侵入、する?」

「やめて!私たち犯罪者になりたくないよ!」

ルビィが冗談で言ったが、サクラが真に受けて必死に止めていた。

「まあ、滅茶苦茶立派な城だから入りたい気持ちはわからんでも無いがな。ああ、カメラありゃ外観でも撮ってたのによ…」

ソラは一人でぼやいていた。

「カメラ、趣味なの?ソラさん。」

そのぼやきにサクラは思わず食いついた。「カメラ」と言うキーワードが懐かしくて思わず口をはさんでしまったのだ。

「いや、趣味って程じゃないけど、観光名所とか撮りたいだろ?」

「ああ、そうだよね、私も修学旅行とか行ったときは友達とめっちゃ撮ってたなー。」

しみじみと、昔の事に思いを馳せているサクラ。

ソラも、一人旅で城とか寺なんかを撮っていたなあと思い出に浸っていた。

そして、ふと思い出す。

「そういや、あんな検定受けてたっけな…ゴン、杖出せるか?」

「ん、何か召喚するんですか?ソラさんの召喚は物騒じゃないからいいですけど…はい、ありましたよ。」

ソラに言われ、異空間から杖を取り出すゴン。

「ゴンちゃんも空間収納魔法使えるんだねー。」

近くにいた城門の兵士はギョッとして警戒していたが、サクラはその光景をみてへーっと感心していた。

「ふっふーん、私のこれは魔法とかじゃなくて精霊特有の異空間なんですよー、どれだけでも入りますよー!」とゴンは自慢しながらソラに杖を手渡した。

「サンキュ、さて…ふぬぬ…」

ゴンから杖を渡されたソラは、杖を正面に構えると力を籠める。

城門の兵士が今にも魔法を使いそうなソラを全力で警戒し、武器に手をかけていた。

だが、次の瞬間脱力する事になる。

ぽんっと気の抜ける音を立てて、ソラの前の空間に小さな箱が現れる。

黒い箱をベースにし、筒のようなものがついている。筒はガラスでふたがされており、とても武器には見えず、おもちゃにしか見えなかった。

遠巻きに見ていた兵士は、なんだ、ユニークな魔法を使う子供だな。と思い微笑んでいた。

だが、サクラは驚愕していた。

「か、カメラだ!?」

「おう、上手く行ったな。」

ソラが召喚したものは、ポラロイドカメラだった。

「去年に写真マスター検定ってのを受けてた事を思い出してな、そういやこの召喚手帳ってのにその認定書もあったからできるんじゃないかと思って出してみたんだ。ほれ。」

そして、ソラはそのポラロイドカメラを手に取り、王城を背景にぱしゃりとサクラを撮影した。

ジーっと音を立てて、ポラロイドカメラから分厚い写真が排出される。

真っ黒なそれをパタパタを振りながらサクラに近づける。

「ほれ、撮れたぞ。」

そう言って写真を渡すソラ。

サクラはドキドキしながらそれを見つめていると、次第に写真の内容が鮮明になって良く。

そこには、王城を背景にして驚いた顔をしているサクラが映っていた。

「凄い!凄い凄い!写真だ!嘘みたい!」

大はしゃぎでソラに抱き着くサクラ。

思わず手を放して写真を落としてしまっていたが、ゴンがそれをキャッチする。

「へー、ソラさんの世界の魔道具ですかね?凄いですよこれ!」

そう言ってルビィにも見せる。

「おー、ビューリホウ…」

ルビィも珍しく驚いたようだった。

「凄いよー!ほんと凄い!そうだ!一緒に撮ろう!すいませーん、門番さーん!」

テンションが上がりまくったサクラは、ソラ達と一緒に写真が撮りたいらしく城門の兵士に声をかけていた。

「ははは、喜んでくれてうれしいな、喜びすぎって気もするけど。」

大はしゃぎのサクラを見て微笑ましい気持ちになるソラだった。

「ここを覗いてー、みんなが、えっとニコってした所でこのボタンを押して…」

呼び出された兵士はテンションが高すぎるサクラに押され気味で、シャッター役の説明をされていた。

「まあ、いいか、ゴン、ルビィ、お前たちも一緒に撮るぞ。」

「え、私もですか?」

「おっけー、キメ顔でよろしく…」

「その為にサクラは兵士にシャッター頼んでるんだろ、ほれほれ、行くぞ。」

そう言ってゴンとルビィを城門の、後ろに城が見える位置に誘導していくソラだった。


「はい、じゃあボタン押します!えっと、こうでしたっけ、はいチーズ…?」

戸惑いがちにシャッターを押す兵士、パシャリと音がして、写真が排出され、おっかなびっくりで触っている。

「はい、ありがとうございます!」

「ありがとよ」

「どーも」

「ありがとうございました!」

妙な役割を突然押し付けられたが、4人の少女から笑顔で礼を言われ悪い気はしていなかった。

「いやあ、それにしても凄い魔道具だね、魔法で出したみたいだけど…珍しいスキルを持っているね君は。」

そして、ソラに声をかける兵士。

「まあな、そうだ、良かったら門番達も撮ってやろうか?」

「なんと、それはありがたい!では他の者も呼ぶとしよう!」

そう言って、門番をしていた兵士だけではなく、詰めていた兵士までゾロゾロと現れて、城門で記念撮影会が始まった。


「ほら、撮れたぞ。」

そう言って何枚かの写真を最初のシャッターを押してくれた兵士に渡すソラ。

「おお、素晴らしい!これは皆で大事に飾ろう!」

「おう、それにしてもカッコよく撮れたな!」

写真には兵士が城門をバックに武器を構えてポーズを撮っていた。

変なコスプレ写真だなと思って吹き出しそうになるがこらえるソラ。

それが兵士の目には、女神のような微笑みに見えた。

写真を撮る為に呼び出された兵士達も同様で、その愛らしさにときめきを覚え、一同は胸を押さえていた。

「じゃあ、時間取らせて悪かったな、仕事頑張ってくれよ!」

そう言ってソラ達は城門を後にする。

「ああ、ありがとう少女達!今は色々あって城内に入れる訳にはいかないが、いずれ、そのうち案内させてくれ!私が上の者に言っておくから!是非また来てくれ!」

兵士はそう言って手を振りソラ達を見送った。


しばらく、歩いて市街地にやってきたソラ達。

「そういえば、カメラ出しっぱなしだったか。」と召喚したままだと言う事に気が付いて送還する。

ふっと消えるカメラを見て、ソラはハッと気が付いた。

そう言えば、召喚魔法ってのは物質を召喚するのではなく魔力で物質を構築して再現するってゴンから聞いていた事を。

つまり、送還、つまり魔法で構築していた物質を消し去った時消えてしまうのではないか?

ソラは慌ててサクラに問いかける。

「おい、サクラ!さっきの写真ってまだあるのか?」

「どうしたの?よく撮れてたしまた見たいの?」そう言ってサクラはゴンがしていた様に何もない空間に手をやる。

空間収納魔法と言うものだろう、とソラ認識するも、それよりも今は写真が残っているかが気がかりだった。

「はい、あったよ」

そう言って写真を取り出すサクラ。

それを見てホッと一息つくソラ。

(良かった…なんでか分からないけど写真は消えないんだ)

安心して、改めて写真を見るソラ。

そこに映った笑顔の少女達、いつの間にかそこに映ったエルフの少女を自分だと自然に認識するようになっていた。

そのことに気づき、首を振る。

(いかんいかん、俺は元に戻りたいんだ、樫林空に、ちゃんと戻らないとな。)

そう、改めて強く願うのだった。


一方、城門でもちゃんと残っていたポラロイド写真。

魔法の絵画として門番の兵士達が額縁に飾り、長きにわたって城門の詰所に飾られる事になるのだった。

余りにも写実的な名画と言って、大金を出すから譲ってくれとねだる者もいたが、門番達は誰一人首を縦に振らなかったと言う。

彼らは詰所に居る時はその写真を眺め、少女たちに思いをはせ、仕事合間の癒しとしていたそうな。

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