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サーキュライト王国に入国を果たしたソラ達は、衛兵達に連れられて豪華な宿屋のロビーに連れてこられていた。
「ささ、どうぞこちらへ。」
衛兵の中でも、一人だけマントを付けて居て恐らく一番偉いと思われる男が待合用のソファにソラ達を案内し座らせる。
そして、「森の魔女について知って居る者を連れて来ますので少々お待ちください。」と言って後ろで待機していた衛兵達の元へ歩いて行った。
「なんか、ここまでされると悪い気がしてくるな…」
とソラは呟く。
「いいじゃないですか、なんだか思ったよりも早く魔女の情報が集まりそうですし。」
ゴンは特に気にしていないようだ。
「そんな事より、ここ、泊まるの?」
ルビィは宿に連れてこられた事が気になっている様子だった。
「いや、豪華すぎるしそんな金ねえよ、こう落ち着いて話せる場所だから案内してくれたんだろ。」
ソラは否定した。
「そう…そうだよね…」とがっかりするルビィ。
そんな風に雑談していると、マントを付けた衛兵が一人の普通の衛兵を連れて戻って来た。
「この者が、森の魔女について詳しいそうです。」
そう言って、ソラ達の向かいに衛兵二人は着席した。
「どうも、衛兵をやっておりますレイフと申します。」
連れてこられた衛兵は名乗り、頭を下げる。
「ああ、そうだ、申し遅れました、私は衛兵頭のマルコと申します。」
名乗っていなかった事を思い出したマントを付けた衛兵、マルコが続けて頭を下げる。
「どうも、ソラです。」「ゴンです。」「ルビィ…」
釣られてソラ達も名乗り会釈した。
「さて、森の魔女の事でしたね。」
そう言って顔を上げたレイフは話す。
「森の魔女と言うのは三千世界を見通す魔女、リコの事でよろしいでしょうか?」
「名前は知りませんが、三千世界を見通す魔女と呼ばれていましたので間違いないですね、その人です。」
レイフの確認にソラは答えた。
「では私の知って居る人物で間違いないでしょう。」
そして、レイフが魔女、リコについて詳しく話してくれた。
三千世界を見通す魔女、リコはサーキュライト王国の西に隣接する森の中に住んでおり、薬の製造や占いを生業としている。
特に占いは、百発百中。
未来の事、遠方の事、過去の事をまるで見てきたかの様に言い当てる。
ただし、占う相手は選り好みしていて、滅多に占ってくれる事は無いそうだ。
また、魔女の弟子が一人おり、街中での買い出しや、薬を店に卸すのはその弟子が全てやっているとの事だった。
「弟子の娘は、毎週火精霊の曜日に西の商店街まで買い出しに来ます。火精霊の曜日は明日ですので、その娘を捕まえて一緒に行くと確実でしょう。魔女は森の奥に住んでおりますので、道を知らないと迷う可能性がありますし。」
とレイフは締めくくった。
「なるほど、ありがとうございます。でしたらどこかに泊まって明日その弟子の娘を探してみます。特徴など教えていただけませんか?」
続いてソラが尋ねる。
「特徴ですか、それでしたら黒いとんがり帽子とマント、箒を常に持ち歩いてていますね。あとマントの下は何処の国でも見た事のない変わった服を着ていますのですぐ分かりますよ。薬屋の主人に聞いて見るのも良いかも知れませんね、魔女の弟子の名前はサクラと言うそうです。」
レイフは懇切丁寧に答えてくれた。
「これだけ分かれば大丈夫そうですね、情報ありがとうございます。」
十分すぎるほどの情報を教えてもらい、満足して礼を言うソラ。
そして、話が終わったとみると、レイフの隣で黙って話を聞いていたマルコが懐から鍵を取り出した。
そして、ソラに鍵を持たせる。
「どうぞ、これはこの宿の鍵です。本日はここでゆっくりお休みください。」
「え、いやいやいや、そんなお金はありませんって!」
突然の事に慌てて返そうとするソラ。
マルコはそれを遮る。
「いえいえ、代金は結構です。あと滞在も何日になっても結構です。グリン王子からの手紙にそうするように書かれておりましたので。どうかお受け取りください。」
「いや、さすがに悪いですって!情報を頂けただけでも結構ですので!」
遠慮して断ろうとするソラだったが、マルコは深く頭を下げて
「王子の命令ですので、是非受け取ってください!そうでなくては命令違反になって私達が後で罰せられてしまいます!」
と言われる。
そうまで言われると流石に受け取らない訳にもいかず、ソラはしぶしぶ宿の鍵を受け取った。
「ラッキー…だね。」「ですね!」
悪いなあと思うソラを他所に、ルビィとゴンは嬉しそうだ。
そして、衛兵達は何かあったら何でも言ってくださいと言い残し全員帰って行った。
残されたソラ達は、なんだかんだで豪華な宿を堪能しながら明日に備えるのだった。




