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長い長い石畳みの道を、一台の原付がパスパスと軽いエンジン音を響かながらひた走る。

運転手の少女、ソラは「フッフフッフンフッフフ♪」と昔観ていた探偵ドラマのテーマを鼻歌で歌っていた。

「ごきげんですねー。」とソラの前に座り込んでいる狐耳の少女、ゴンが言う。

「いや、なんか原付乗ってるとこのテーマが頭に浮かぶんだよ。」

「そうなんですか。」

「そう言うもんさ。」

などと他愛の無い会話をしている。

原付に取り付けられた後部座席では、ボサボサの赤髪の少女がうつらうつらと舟をこいでいる。

旅路は今日も平和であった。


ソラ達が、グリン王子と別れてからさらに街道を進む事1日。

特に何事もなくひたすら走っていた。

なんでもこの街道は見通しが良すぎて、野生の獣や魔物が極端に少ないらしい。

かなりピースフルな道だと言う事だった。

森や山岳地帯等では多いらしい。


「お、遠くになんか見えてきてないか?」

鼻歌の曲が終わる辺りで、地平線の先に建物の影が見えてきた。

「あれがサーキュライト王国ですね、もうちょっと近づけばお城がはっきり見えるはずですよ。」

ゴンが言う。

「ほー、ついに到着か!わくわくするな!」

もうすぐ長かった街道も終わると思うと、ソラの握るハンドルに力が籠る。



サーキュライト王国の入出国門前、ソラ達が原付で近づくと「止まれ!」と大声で呼び止められる。

言われた通りブレーキをかけ、停車すると門の近くからゾロゾロと何人もの衛兵が現れた。

その中で、一人だけマントを付けた衛兵がソラ達に近づいてきた。

「エルフにドワーフ、そちらは獣人の子供か?変わった乗り物に乗っているが何用で訪れた!」

衛兵はソラ達をじろじろ観察した後、高圧的に聞いてきた。

「ええと、私たちは冒険者で、この国の近くの森に棲む魔女に会う為に来ました。」

突然の高圧的な態度に戸惑いながらもソラは答える。

「ふん、こんな女子供の冒険者だと?森に棲む魔女と言うのも知らんな…怪しい奴らめ…」

何か疑われている様子である。

そんな衛兵の態度に、ゴンやルビィはムッとしたが、ソラは、衛兵としては疑い深い、仕事熱心だと好感を持った。

「一応、後ろのルビィはそれなりに長くやってる冒険者ですよ。あと、こっちの狐耳はゴンと言う精霊です。こちらもそれなりに強いので見た目は女子供でもちゃんとした冒険者ですよ。」と説明する。


それでも訝し気な衛兵に向かって続けてソラは言う。

「途中、盗賊が居たので撃退して捕縛しました。ここからこの乗り物で1日…だから馬でも同じぐらいか、それぐらいの所に縛り付けてきましたのでしょっぴいてくれると助かります。あ、これはその時襲われていた人から門番の衛兵さんに渡すように言われた手紙です。」

そう言ってソラは衛兵にグリン王子から渡された腕輪で留められた紙を渡す。


衛兵は腕輪を見ると、「これはグリン王子の…!」と何か気づいた様子で、慌てて紙に書かれた内容に目を通した。

読み終わると、腰を90度曲げて「失礼しましたー!」と叫んだ。

いきなりの態度の豹変に面食らうソラ達。

「グリン王子の恩人とはつゆ知らずあのような態度を取ってしまい申し訳ありませんでした!おい、この方たちをすぐにお通ししろ!あと宿の手配もしてさしあげろ!森の魔女について何か知っている者もこの方たちに洗いざらい教えてさしあげろ!!!」

何が書かれていたか知らないが、とにかく都合の良い事が書かれていたらしいと理解する。

ソラとゴンは顔を見合わせ、こそこそと話す。

「なんか知らんがあの王子様助けて良かったな。」

「ええ、ラッキーでしたね。なんか至れり尽せりですよ!」

その後ろで、いつの間にか目を覚ましていたルビィがふふんと腕組みして「あがめよ」とふざけていた。


そんな事をしていると門が開く。

「さあさあ、どうぞお通りください!この腕輪はあなた様がお持ちください!」

グリン王子の腕輪を返され、へりくだった衛兵達に案内されてソラ達はサーキュライト王国の門をくぐるのだった。

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