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「大丈夫ですか?」

ソラは銀髪の青年に駆け寄り声をかける。

銀髪の青年は危険が無いと察して、剣を収める。

そして、ソラ達に頭を下げた。

「御助力感謝します。あのままでは恐らく殺されていたでしょう。」

「いえいえ、私は特に何もしていませんよ。彼女のおかげです。」

そう言ってソラはゴンを指し示す。

「まあ、私はソラさんの契約精霊ですから手柄はソラさんのものみたいなもんですよ。ところでなんなんですか突然その口調は…。」

いつものようなオッサン口調じゃないソラに戸惑うゴン。


ソラは社会人である。

普段の会話こそガサツなおっさんではあるが、営業の場、偉い人との会話などではきちんとした口調で話す癖がついていた。

ラケルのように気心が知れた相手だと、王女等の立場であってもその限りではないが、銀髪の青年は初対面で、明らかに高貴なオーラが漂っていた。

故に咄嗟に営業モードが出てしまった。


銀髪の青年は推測する。

目の前の彼女達は何者なのかと。

手練れの戦士を一発で昏倒させるような魔法を使う精霊を意のままに操る少女。

奇抜な格好をしているが、見た目は麗しく、教養もある。

幼さのある外見だが、大人びた落ち着きがある。

貴族の娘、あるいは大商人の娘が妥当だろう。

変わった乗り物は魔導具ならば、高名な魔導師の娘とも考えられる。

などと盛大に勘違いしていた。

そして、そう言った立場ならば今後接点もあるだろうと思い至る。

「そう言えば、自己紹介が遅れましたね。私はサーキュライト王国第二王子、グリン・フル―メン・サーキュライトと申します。」


ソラ達は銀髪の青年、グリンが王子だと名乗り驚かされる。

だが、驚きを隠してなんとか挨拶を返す。

「私はカシバヤシソラと申します。ソラとお呼びください。名刺は持ち合わせておらず、失礼致します。」

そう言ってぺこりと頭を下げた。

「そして、私がソラさんの契約精霊のゴンです。」

ゴンは王子と言う立場を気にした様子もなく普通に名乗った。

元々この世界の神に仕えていたので人の世の権力者ぐらいではなんともないのだ。

「わたしは…ルビィ…適当によろ…」

一応名乗るか程度に考え名乗るルビィ。ただマイペースなだけである。


(ソラ…か、カシバヤシが家名か?聞いた事が無いが、どこの国の方なのだろうか。)

グリンは訝しんだ。

「それよりも、えーと…グリン様、賊は意識を失っているだけなので拘束しようと思うのですが。」

ソラがそう声をかけグリンの思考を遮った。

「あ、ああ…構わない。」

「ありがとうございます。よし、ルビィ、ゴン、やるぞ!」

そう言って、ソラ達は3人の男の拘束にかかった。


「これで良し!」

一仕事終えたと手をパンパンと鳴らすソラ。

その目の前にはパンツ一枚にされた男が3人、ロープで石柱にくくりつけられていた。

縛られた3人の男。

鞭男のスキンヘッドは相変わらず白目でだらんと口を開けており、全く起きる様子が無かった。

斧男の方のスキンヘッドは、ルビィが剣に刺された所を治療してから、改めてゴンが昏睡魔法をかけ縛り上げた。

黒いローブの男は、仮面も服もはぎ取られ、素顔を露わにしていた。

仮面の下は顔は普通のおっさんで、今もすやすやと眠り続けている。

「拘束するだけで、殺さないのか?」

ずっと様子を見ていたグリンが疑問を口にした。

「ソラさんは出来るだけ血を見たくないそうなので、これでいいんですよ。」

ゴンが言うと、ふむとグリンは口を閉じた。

(甘すぎる…まるで世間を知らない令嬢のような考えだな…)

などと考える。

こちらを殺そうとしたのだから、殺されて当然なのだとグリンは思っている。

だが今回はソラの甘さ、優しさに免じて見逃す事にした。

「そう言えばソラ嬢、君たちはやはりこれからサーキュライトへ向かうのか?」

「はい、サーキュライトへ向かってから、近郊にあると言われている魔女のいる森へ行くつもりです。」

「魔女のいる森…とは聞いた事が無いが…ふむ、少し待ってくれ」

そう言って、グリンは紙とペンを取り出し何かを書き始めた。

書き終わると、丸めて身につけていた腕輪で封をしてソラに手渡した。

「これを入手国門に居る衛兵に渡すと良い。ここに縛られている賊を捕まえに行くように書いてある。放っておけばこいつらはのたれ死ぬだろう?」

おお、と喜びソラはそれを受け取った。

「ありがとうございます、そこまで考えが至ってませんでした。グリン様は優しいんですね。」

ソラが微笑み礼を言う。

「う…私は、君の優しさに打たれてと言うか…うむ…」

照れた顔を見せまいと顔をそむけるグリン。


グリンが顔をそむけた先に、白い馬の姿が見えた。

乗り捨てた白馬が戻ってきたようだ。

ハッとグリンは使命を思い出し、白馬を呼ぶ。

白馬はすぐさまグリンの元へ駆け寄ってきた。

そして、グリンはソラに向きかえり

「済まない、本当は君たちにきちんと礼をしたいのだが、私はオークリーへ急がねばならない。」

と告げた。

「いえいえ、お構いなく。」と返すソラ。

すまない、本当にすまないと繰り返すグリン。


白馬が近くまでくると、グリンは白馬に乗り、

「改めて、また会う事が出来たらお礼をさせてほしい!」

と言ってオークリーに向けて走っていった。


それを見届けると、ソラ達も原付に乗りこみ、再びサーキュライト方面へ向けて進むのだった。

「あー、堅苦しかった!偉い奴と話すのはどうも苦手だな。」

とぼやくソラ。

「苦手とか、酷いですねー、なんかあの王子様、ソラさんの事気に入ってたぽいですよ?」

ゴンがニヤニヤと言う。

「ははは、そりゃねーよ!本当にそうだったらきもちわりーな!」

とソラは笑い飛ばした。

「そんな事より…ソラの一人負け?」

ルビィが呟く。

「ん?何がだ?」

ソラが尋ねるとゴンがポンと手を叩き言う。

「ああ、そう言えば賭けをしてましたねえ!」

ああ!とソラも思い出す。

反対側から来るのは何者か予想して、正解者は外れた人に命令できると言う賭けをして居た事を。

「ソラが、商人、ゴンが王子様、わたしが、盗賊…」

ニタリとルビィの口が歪んだ。

「お、お手柔らかにな?」

乾いた笑いを浮かべるソラだった。

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