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-14- 旅の始まり

節目にはサブタイに一言つけるようにしました。

雄大な草原の中、地平線の向こうまで一本の石畳の道が続いている。

道の両脇にはポツポツと柱が立っており、全て均等な間隔で並んでいる。

気が遠くなるような年月をかけて作られたと思われる、その石畳の道を一台の原付が走る。


「凄い光景だな、ここまで道と柱しか見えないと感動するな…。」

はぁーとため息をつく、運転手のエルフ少女ソラ。

「最初はそうですねー、最初は、壮観に感じるんですよねー。」

最初は、最初は良かったですよ…と繰り返す狐耳の少女ゴンは運転手の前に座っていた。

後部の荷台に座り込んでいる赤髪の少女ルビィはぼんやりと辺りを見つめている。

そして、一言

「あきた…。」

と呟いた。


エルフの少女、ソラ達はひたすらこの石畳の道を走っていた。

オークリーを発ち、ひたすら西に進んだ先にある街道、石柱街道。

オークリーの隣国、サーキュライト王国へ続いた道である。

その道を原付で進む事、丸一日経過していた。


「あー、確かに飽きてくるな。」とソラは認める。行けども行けども同じ景色だ。

なまじ、見晴らしが良いため、遠くまで何も無いのがわかってしまう。

「なにも…イベント無い…」

「イベントですかあ、しばらく何も無さそうですね。向こうから来る人影でもあればいい退屈しのぎになるんですけどね。」

とゴンが言う。

「お、言ったそばから何か見えるぞ。」

ソラが言うと、ゴンとルビィは進行方向に眼を凝らす。

地平線の向こうからやってくる荷馬車のような影が見えた。


「退屈しのぎに、向こうから来るのが何なのか予想するか?」

まあ街道を走る荷馬車なんて商売人ぐらいだろうと思いつつも提案するソラ。

「いいですねー、当てたら何か特典はあるんですか?」

ゴンもソラと同じく商人としか思っていないが乗りかかる。

「当てた人は、はずした人に好きに命令できるとかがいい…王様はわたし…」

「あんまり変な命令しないと約束するならそれでいいぞ、じゃあ俺は商人な!」

ゲームになるやいなや速攻で宣言するソラ。

大人気なさ全開である。

「むう、ソラ勝ちにきてる…じゃあ、わたしは盗賊に賭ける。ゴンは?」

「出遅れてしまいましたねー、じゃあ隣国の王子様とかどうです?」

ゴンはどうも乙女チックな方面が好きらしい。

「すれ違うまで結構かかるから結果は後のお楽しみだな。」

そう言ってアクセルを握る手に少し力を入れる。

退屈しのぎと言ったが、結構楽しみになってきていたソラ達だった。


相手が王子様だったらどうするか、盗賊だったら、商人だったら?などと話していると、気がつけば相手の姿がそれなりにはっきり見える所まで来ていた。

「ここまで来たら大体分かりそうだな。」

「ですね、よーく見てみましょう!」

そう言ってゴンは手で輪を作り双眼鏡のようにして見やる。

「むむ、これは最悪ルビィさんが正解かも知れませんね…」

ゴンは残念そうにそう告げた。

「いえーい。」ダブルピースでドヤ顏するルビィ。

「いや、待てよ…それって結構穏やかじゃ無いって事だろ?」

ルビィの予想は盗賊であった。本当に最悪である。

襲われる事は間違いないでは無いかとソラは冷や汗を流した。

あちらからも、こちらを目視できているだろうし隠れてやり過ごす事は出来ない。

来た道を戻ってオークリーまで引き返すにしても遠すぎる。

素直に有り金渡して逃がしてくれれば良いが、捕まって乱暴されるかも知れないしどうしたものかと考えていると、さらにゴンは言う。

「盗賊は誰か追いかけていますね、顔はよく見えませんが白い馬に乗った線の細い方ですね。」

誰かが追われていたらしい。

「ずっと逃げてたのか、難儀なもんだな、追う方も追われる方も。」

反対側に影が見えてからもう随分経っている。どちらも疲れてるだろうなと思い呟く。

続けて、ソラはゴンに問う。

「それで、盗賊みたいな奴らはどんな感じだ?」

「えーとですね、暴れ牛のトゲ付き牛舎に乗って…えー…何人か乗り出して斧を振り回してますね…うわあ…頭悪そうです。」

どうやら追う者は盗賊で間違いなさそうだった。

「たたかう?」

引き返したり、道を反らそうともせず、真っ直ぐ向かって行くソラにルビィは問いかける。

「できれば戦わずに無力化したいな…人と殺しあうのは勘弁して貰いたい。」

ソラは現代日本で暮らす一般人だった為、戦う術があっても人を殺す事には抵抗がある。

命が懸かってるならば致し方無いが、極力避けたいのが正直なところだ。

「無力化、したらいいの?」

「レジストできる人が居なければいいんですけどねー。」

「その時はこれ使うし?」

そう言ってメイスを構えるルビィ。

ゴンとルビィは出来て当然と言った反応であった。

そう言えばこの二人は会う前からずっと冒険者やってたんだよなと思い至るソラ。

頼もしい同行者に任せる事にした。

「じゃあ頼めるか、ルビィ、ゴン。」

「任せてください!」

「余裕…!」

それに応えるべく、ルビィとゴンは魔力を練り上げる。

距離はもう少しと言う所まで近づいていた。

土煙を上げて迫ってくる白馬と牛車をソラでもはっきり目視できる程に。


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