-12-
ソラは差し出された剣をじっと見つめる。
その剣は、店頭に並ぶ剣と全く毛色が違っており、奇妙なオーラを放っていた。
が、そんな事よりソラは剣の柄の部分が目と口に見えて仕方なかった。
あと、刀身は四角っぽいのだが、先端部分の中心だけ丸みを帯びており真ん中にすじが入っている。
それがなんだか、長いケツアゴに見えてクスリときた。
「俺の顔がそんなにオモシレェか?」
クスクス笑ってるソラに男の声がかかる。
この場で野太い声が出るのはドワーフの男かと思いそちらを見るが、ドワーフの男は剣を置いた後店の奥に引っ込んでいた。
「どっち見てるんだよ、こっちだよ」
再び男の声が聞こえる。
ソラはルビィを見るが、ルビィは首を振る。
次にゴン、おばちゃんと目をやっているがどちらも首を振り、私の声ではないと主張していた。
「おーい、聞いてるのかエルフの小娘、耳が遠いのか?」
声をした方向に目をやると、先ほどの剣が立てかけられている所から声がするようだった。
「そうだ、こっちだよ、俺だよ。」
剣の方からではなく、剣自体から声がしているのだった。
「うお、剣が喋ってるのか?」
声の発生元を確認して、ぎょっとするソラ。
「あー、これは精霊剣ですね。」
ゴンがすいと剣に近づきざっくり説明する。
「使い手や作り手の強い念が込められた道具は、長い年月を経て精霊に近い存在になる事があるんですよ。この剣はたぶんそれですねー。」
と言う事だった。
「つまり、妖怪みたいなもんか。」
ざっくりと理解したソラ。
「この剣は遺跡から出てきたもんでね、うちに持ち込まれて旦那が鍛えなおしたんだよ。」
続いて、おばちゃんが出自を説明してくれた。
「普通の剣じゃないから契約して召喚魔法で呼び出して使えるって事だと思いますよ。」
たぶん、この剣を持ってこられた意図を推測するゴン。
それに店の奥に引っ込んだドワーフの男が手だけのぞかせ、サムズアップで応えた。
ドワーフはサムズアップが好きなんだろうかと思いつつ、剣と向き合うソラ。
「サモナーなのかエルフの小娘、いいぜ、剣は使われてなんぼだ。」
剣は契約する事にのり気のようだった。
「契約つってもなぁ…」
やり方知らねえぞと思ったが、おばちゃんに手をつかまれ剣の刀身に触れるように誘導された。
「はい、触った状態で集中する!」
やっぱりおばちゃんはおせっかいだなと苦笑いしつつ、おばちゃんの言う通りにする。
「ほら、なんか相手の名前が思い浮かぶだろ?契約するって意思を込めてその名前を呼んでやればいいのさ!」
しばらく集中していると、ソラの脳裏に名前が浮かぶ。
「え、こんな恥ずかしい名前言わなくちゃいけねぇの…」
そして躊躇した。
「誰が恥ずかしい名前だ小娘、早く我が名を格好良く呼ぶのだぞ。」
少年漫画の主人公になりきるみたいで恥ずかしすぎると思っていたソラだが、剣に急かされて仕方なく名を呼んだ。
「だ…断罪剣ヘヴンズフォール…」
小声が精一杯だった。
「叫ばなかったのは気に食わないがまあ良いだろう。我はあらゆる罪を断つモノなり。汝の力となろう。」
そう剣が言うと、剣とソラの持つ召喚手帳が淡く発光した。
召喚手帳を確認すると、最後のページに剣の名が刻まれたページが出現していた。
「さて、これで契約は完了だよ!実体のある相手と契約した時は実体を持ち歩かなくて良いからこの剣はまた倉庫に置いておくかね。」
そう言うとおばちゃんは旦那を呼び出して剣を持って行かせた。
その後、再び練習場へ向かい、召喚して攻撃に使える事を確認した。
召喚した剣は、ソラには重みを感じず、意のままに操れたりしてなんとか戦力になりそうだった。
一通り振り回して満足すると、おばちゃんがパンパンと手を叩いて言う。
「それじゃ、お会計済ませちまおうか。杖の代金だけでいいよ、剣は売ったわけじゃ無いし契約はサービスさ!」
おばちゃんが気が強くて、気風がいいのもどの世界でも同じらしい。
こうして、ソラは戦闘手段を手に入れた。




