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必要な食材の確保を仲間達に託し、レオンは1人スタジアムに残っていた。
スタジアムに用意された道具の中から、鉄釜を持ち出す。
そして、レオンは魔法で作られた亜空間からお米を取り出した。
レオンの固有魔法、フリーザーボックス。
時間の停止した空間に食べ物を出し入れする事ができる魔法で、レオンが転生する際、この世界の神と名乗る者から授かった魔法である。
レオンは取り出した米をといで、お釜に入れてゆく。
そして、炎、水、雷の魔法を使ってお米を炊き始めた。
「これはまた…なんと高度な魔力操作…。」
その様子を見ていた審査員が唸る。
魔法を駆使して、米の一粒一粒の状態を確認し、熱加減、水分、そして甘みを調整していく。
見るものが見ればチート級だと言わざるを得ない高度な技術であった。
一方、ソラのキッチンにも米が炊かれている。
ソラ達は全員で買出しに行ったため、誰もいないのだが、電気炊飯器がお米を炊いていた。
コトコトコトー
と。
「やっぱワカメは必要だよな。」
「玉ねぎは買わないの?」
「あー…うちは入れねえな。ちょっと甘い気がするんだよな。」
「結構人の家ごとにちがうもんね、あ、お豆腐屋さんだよ。」
「それいる!すまんが買っておいてくれ。」
ソラ達はお味噌汁に何を入れるか談義をしながら市場を巡っていた。
談義と言っても、理解できる者がソラとサクラのみである為2人で話しているだけである。
「具は2、3種類だけの方がいいんだよなー。」
「私は具沢山も好きだけど…。」
「豚汁とかならアリなんだが…お、卵があるな。これくださーい。」
話しながらその辺りの食材を買い込むソラ。
「普通の買出しみたいですけど何作るんですか?」
ゴンは疑問に思い尋ねる。
「あー、ずっとあの大将に食わしてやりたかったもんがあるんだよ。そういやサクラ、ホームシックは大丈夫か?」
ゴンの質問に答えるソラだったが、ふとサクラの事が気がかりになり声をかける。
「あー、うん。天ぷらの時はちょっと辛かったけど、一回なっちゃうと結構落ち着いちゃうみたい。ただ懐かしいなーって思うだけだよ。」
サクラは平気そうに答える。
「おう、なら良かったぜ。何作るかって話だけど、故郷の味って感じかな。」
「へー、いつものは違うんですか?」
「いつもの料理は故郷ってのとは違うからな。今回は本気だぜ?」
ソラはそう言ってニヤリと笑って見せる。
「本気…楽しみですね!」
ソラのその発言にゴンはごくりと唾を飲む。
「その割には食材選びが適当なのでは…?」
グリンは1人訝しむ。
先ほどから、ソラは雑談をしながら目利きをするでなく必要な商品があればとりあえず買っている様子だった。
「ああ、最低限ダメになってなきゃ良いさ。」
「相手はきっと、凄い食材とかで来そうなんだけど大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、うまいもんには違いないから。」
そう言ってソラはスーパーで適当に買い物をするオバチャンのような足取りで市場を進む。
何か秘策があるのか、よっぽど自信があるのか、ソラの内心がわからないまま、試合は進むのだった。




