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ザウスランド中央広場、白く美しい建物が並ぶ街並みの中央にぽっかり空いたその場所は、露店やカフェなどを中心に軽食がメインの飲食店が立ち並び、街の憩いの場となっている。

商店街などとは違い、比較的穏やかな空間である。

だが、今日はやけにざわめきだっていた。

ざわ…ざわ…

「おい、見ろよ、レベル高くないか?」

「……ヤバイ、美しすぎる。」

「どこかのお姫様かしら?」

「エルフの姫かもしれないわ。」

金色の可憐な美少女と、銀髪を編み上げた絶世の美女が並んで歩く。

常人離れしたその美貌に人々がざわめきだつのは当然であった。

人々の視線の先にいる当の美少女と美女は、そんなことには気が付かず、露店を物色していた。


「お、これタピオカドリンクじゃねえか!?いや、世界が違うから同じとは限らねえか。グリン、ちょっとこれ試してみないか?」

「いいね、私も見たことない飲み物だが面白そうだ。店主、二人分いただけないかな?」

そう言ってのんきにタピオカドリンクらしきものを注文する。

「はいぃー!喜んで!」

美人に緊張してるのか、混乱して居酒屋のよう返事をする店主。

「へいお待ち!」

さらに、寿司屋のような掛け声で二人にドリンクを差し出す。

「おう、ありがとな。」

「どうもありがとう。」

それを笑顔で受け取る二人。

あまりの破壊力に店主は一瞬呼吸が止まったが、なんとか「また…いらしてくだせえ!」と絞り出すのだった。


「ストローで飲むのか。どこまでもタピオカっぽいなあ。」

「頂くとしようか。」

そう言って飲み物を飲み始める二人。

「うん、もちもちとした中の丸いものがあまり味がないけど気持ちいい食感だね。」

「おう、完全にタピオカドリンクだったわ。昔流行ったなあ。」

そう言ってタピオカドリンクを飲みながら二人で広場を歩く。

「しかし、変装が上手く行ったな。完全に目立たなくなったから誰も声をかけなくなったぜ。」

「ああ、うん…目立たないかはさておき、昨日の事で騒がれなくなったのはありがたいね。」

ソラは変装が上手く行ったと確信しており満足気だ。

無論、実際は目立ちまくっているのだが。

「もうちょっと様子見で街ブラでもしてみるか。」

「そうしようそうしよう、確認は大事だからね!」

可愛い服を着たソラとデートができるのでグリンは余計な事を言わずに、一緒に街を歩くことにしたのだった。


「ハーイ、そこのお姉さんたちあんま見かけない顔じゃん?俺らと一緒に楽しまない?」

「女の子だけじゃ退屈っしょ、オレたち良いとこ知ってるからさぁ!案内してあげるよ!」

暫く二人で歩いていると、日焼けした派手な髪色の二人組の男が声をかけてきた。

「これは…グリンのファンとかじゃなさそうだな。」

それは明らかなナンパであった。

「そのようだね、すまないけど私たちは二人で楽しんでるんだ。失礼するよ。」

グリンはそう言って断わり立ち去ろうとするのだが、男たちはしつこくグリンたちに付いてくる。

「そう言わないでさぁー、俺らこの辺りじゃ顔広いんよ、めっちゃいいトコ連れていくからさ!」

「なんなら、この国の遊びとか手取り足取り指導しちゃうよ~!」

そうは言うものの、視線はソラとグリンの体を舐めまわすように見ており、下心がバレバレであった。

「あー、グリン、それじゃダメだな。こう言う輩にはこう言ってやるんだよ。」

ソラはそう言って立ち止まり、まず一人目の男をじろじろを見定める。

「お、何よ?俺に興味持ってくれた?嬉しぃ~!」

などと調子づく男。

「いや、マジ生理的にムリだわ。イケてるつもりなのかも知れないけど髪の毛痛みすぎてて禿そう。」

そんな男に向かってソラは吐き捨てるように言う。

「は、はげねーし!」そう言って慌てて頭を押さえる男。

そして、ソラはもう片方の男をじっと見つめる。

「な、なんだよ…。」

先ほどのような言葉を投げかけられるのかと思いたじろぐ男。

「うーん、なんかナンパするって歳じゃなさそうだな、お袋さん元気?そろそろ落ち着いて欲しいって思ってんじゃないか?」

「か、かあちゃんは関係ねえだろかあちゃんはよお!」

「もういいぜ、行こう。俺はハゲねえ。」

「お、おう、なんか萎えちまった。」

ソラの言葉で、男達はすごすごと退散していった。


「すごいねソラさん、あんなにアッサリ退散するなんて。」

「おう、まあお前さんなら簡単だぜ。男として狙ってる女の子から言われたら嫌な事を言えばいいんだからなあ。」

ソラは得意げに言う。

「なるほど…、確かにああ言う言葉を言われるのは嫌かもしれない。参考になる…けど…。」

グリンはふと、ソラにそう言う風に断られたらかなりショックだなと想像してゾッとした。


「まあ、変装したからってこんな可愛いんだから仕方ねえよな。」

ソラはそう言ってグリンの頬を撫でる。

「え!?あ、ありがとう…。」

突然のことにグリンは顔が赤くなるのを感じた。

可愛いと言う誉め言葉に複雑な気持ちがあったが不思議と悪い気はしなかった。


「まあ、ナンパ対策はサクラたちと合流したらなんとかなるだろ、大人数だと声もかけ辛いしな。」

「ああ、そうだね…合流か…。」

そろそろ二人でデートできるのも終わりかと悟り、物寂しさを感じるグリン。


「もう宿に帰ってるかなあ…結構宿遠いからまたナンパされたら嫌だし…ああ、そうだ。」

ソラはグリンの腕を抱き寄せる。

ソラの慎ましいがやわらかな膨らみがグリンの腕を包み込む。

「な…!」

声にならない声を上げて動揺するグリン。

「なんか必要以上に仲睦まじい女子ってナンパしにくいらしいぜ。こんな感じで宿まで行こうか。」

そう言ってドヤ顔をするソラ。

ナンパ対策の知識を披露しているだけのつもりでグリンの動揺には全く気が付いていなかった。

体が女の子同士と言う事もあり油断しているらしい。

「ああ、良い案だね、うん、良い、そうしよう。このまま帰ろう。」

グリンにとっては最高のご褒美であったため、余計な事は言わず甘んじてソラの提案を受け入れるのだった。

チャラ男さん…

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[一言] アッこれは素晴らしき百合
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