-105- 突然できた休日の話
ソラが料理トーナメントで戦った翌日、スタジアムの復旧があるからトーナメントの続きは延期すると連絡を受けた。
トーナメント参加予定であった為、パッカ亭は休業日であり、ソラ達は疲れもあってゆっくり休みを取ることにした。
「それじゃあ、ソラさんの祝勝会でもする?」
サクラがそう提案をする。
「ああ、それは良いね!あんなことになったとは言え無事に勝ち抜いたんだ。」
グリンもその提案に賛同する。
「それに、私が倒れた後にヤツを倒してくれたんだろう?是非労わせて欲しい。」
「いや、俺は本当に何もできなくてだな…あ、そうだ!」
ソラはグリンの言葉を否定しようとしてふと思いつく。
「どっちかと言うと、俺たちが人を避難させてる間にグリンがめちゃくちゃ頑張ってたじゃねえか。だから俺もお前さんを労わせてくれないか?」
ソラは上目遣いでグリンの顔をのぞき込み、そう提案する。
「え…それは…願っても無い提案だね。」
そんなソラの仕草にドキりとしてしまい、狼狽えながらも了承するグリン。
ソラは名案だと思ってキメ顔をしたつもりであったが、身長差の為かあざとい仕草になっている事に気が付かなかった。
(ソラさんあざとすぎます…グリンさんが照れて…恋が始まってしまうのでは?そう言えば元々グリンさんは……)
ゴンは昨日からなにやらラブコメ脳になってしまっているようで、ソラ達の様子を見ながら悶々としていた。
「精神的BL…。」そんなゴンにルビィはそっと囁く。
(そうでしたソラさんの主張では心は男性、どちらも今は女性だけど元に戻った場合は……??)
さらに目をぐるぐると回して混乱するゴン。
「じゃあどうする?今日は2人のお疲れ様会ってコトでどこかでご馳走でも食べにいってみる?」
そんな中、サクラが提案する。
「お、良いな!この国に来た初日に外食したきりであとはずっとまかないだったもんな。」
ソラが同意し、一行はザウスランドのお店でご馳走を食べに行くことにした。
街はいつも通り賑わっており、料理トーナメントで魔族が暴れたことなどまるで無かったように平常運転であった。
しかし、ソラたちが通りを歩くと視線が集まる。
「なあ、なんか俺たちすげえ注目されてないか?」
「そうだね…なんだが凄い見られてる。」
「時々黄色い声も聞こえますけど…。」
と不思議そうにしていると、1人の男がソラ達の前にやってきた。
「なんだぁ!?」
突然の出来事にソラは驚く。
男は構わずソラ達に近寄って行き
「おお、麗しの騎士様!勇ましく戦うそのお姿、とても美しかったです!」
そう言ってグリンに向けて花束を差し出した。
「良ければ私とデートしませんか?」
そして、ウインクするキザ男。
「おーおー、モテモテじゃねえか。」
そんな口説かれているグリンの様子を見て茶化すソラ。
「参ったな…すまないけどお断りさせてもらうよ、私には心に決めた人が居るものでね。」
男からの誘いを断り、チラリとソラの方に目線をやるグリン。
「そんな…そうですか…失礼しました…。」
男はガックリと項垂れて立ち去っていく。
「男に言い寄られちまったなグリン!ははは!俺の気持ちがわかったろう?」
ソラはそう言って嬉しそうにグリンの背中を叩く。
「ああ、なんとも申し訳ない気持ちだよ、でも素直に好意を向けて貰えるのは嬉しいものだね。」
そう言って微笑むグリン。
嫌がるものだとばかり思っていたソラは少し驚きの顔を見せる。
「さすが王子様だな!器が広い!」
だが見直したようにグリンの事を褒めるのだった。
そんなやりとりをしていると、また、今度は3人組の女の子がソラ達の前にやってくる。
「あ、あの!昨日はかっこよかったです!1人で魔族に立ち向かってルお姿、素敵でした!」
「よかったら握手してください!」
「私もお願いします!」
とまたもやグリンに向かって話しかける。
「ははは、それぐらいで良ければ。」
そう言って3人の女の子からの握手に応えるグリン。
「「「キャーー!!ありがとうございます!!」」」と言って女の子たちは嬉しそうに帰って行った。
それを皮切りに、ソラたちに視線を向けていた人々が次々とやってきて、グリンに対して礼を述べたり、握手を求めたり、交際を迫るなどが続いた。
その人々をなんとかさばきながら、ソラたちはようやく目当ての食堂に到達した。
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