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「大丈夫でしたかな?」
呆気にとられていたソラ達の元に、ナイスミドルの審査員がやってきて優しく声をかける。
「は、はぁい…。」
さっきまでの容赦のない猛攻を見ていた為、若干声が引き攣りながらもソラは返事をする。
「あの、物凄くお強いんですね?審査員の方々はどのような方なんですか?」
そして、どうしても気になったので思わず質問してしまう。
「おや、ご存知ありませんでしたか?我々料理トーナメントの審査員は皆各国の宮廷魔術師や冒険者として活躍するエキスパートなのですよ。」
そう言ってナイスミドルの審査員は髭を自慢げにピンと叩く。
「へぇー、そうなんですか。」
(そうは見えないのに)と思ったがソラは決して外に出さずに相槌をうつ。
「この料理トーナメントでは派手な演出が求められますからね、それでいて観客などを傷つけないようにするためにはそれなりの魔力量と精密な操作が必要なのですよ!まあ、味覚も確かなのですがね。」
「なるほどですねー。」
そう言うものなのかと自分を納得させるソラ。
それにしても、魔将と名乗るユピーを圧倒する程なので強すぎである。
「因みに私はこの街の魔術師協会のマスターをしている。ムガイアンだ。父のムガイが世話になったねソラ選手。」
そう言って握手を求められるソラ。
「おーおー!ムガイ老の!立派な息子さんだなぁ!こちらこそ、老師には世話になったぜ!」
意外な人物の名が出てきて驚かされたがソラはニッコリ微笑んで握手に応じる。
「彼らも名だたる魔術師達なのだがね、紹介はまたとさせて貰おうか。まだ決勝戦が残っているから急いで会場を復帰させなければ。君たちは一旦帰ると良い、後日になんらかのお礼を約束しよう。」
「いや…あいつ、ユピーが暴れてちまったのは俺の責任もあるから礼だなんて…。」
「暴れた方が悪いに決まっている、それに君たちが率先して観客達を避難させてくれていたのだろう?感謝してもしきれないぐらいだ。」
そう言ってニカッと微笑むムガイアン。
ナイスミドルの微笑みに押されてこれ以上ソラは何も言えなかった。
「うむ!この度は大いに助けられた!感謝する!」
発光する老人審査員も、圧を込めてそう言うので、ソラは「どういたしまして…。」と答えることしかできなかった。
瓦礫の撤去をはじめた審査員達に押し出され、ソラたち一行はそのままスタジアムの外にやってきた。
料理トーナメントのスタッフの人間にことの顛末を告げると、一行はそのままザウスランドの拠点としている宿に帰ることにした。
なにせ功労者であるグリンの意識がまだ戻らない状態である。
傷は魔法によって塞がっているが、戦いの疲労が大きいようだ。
避難活動を行っていたソラたちもかなり疲れており、身体を洗った後に宿のベットに倒れ込んだ。
そして、ソラは一連の出来事を思い出し、ボソリと呟く。
「ムガイアンさん、カッコよかったなぁ…。」
「えっ!?ソラさんが男性を!?」
普段から俺は男だとか男に興味が無いとか言っているソラが突然そんな言葉を呟いたため、ゴンは驚き眼を見開いた。
しかし、ソラはそのまま目を閉じてすやすやと寝息を立て始めたので、どう言った意図での呟きかわからずゴンは困惑する。
(まさか、イケメンが嫌なだけでナイスミドルなおじ様好きですかぁー!?えー!?えー!?)
と悶々とするゴン。
ソラの真意は(髭の伸ばし方がダンディでカッコよかったな、俺も元に戻ったらあんな風に髭を伸ばしてカットとかしてみるか?)と言うものであったが、その事をゴンは知る由もなかった。
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