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光が徐々に弱まっていき、光の元となった場所がはっきりしてくる。
それは、先ほど人が倒れていた瓦礫の辺りだった。
そこには、先ほどまで倒れていた5人の人間が立っていた。
「なんたる不覚、不意打ちとは言え気を失ってしまっていたようだ。」
少し服の焦げた青年審査員が首をふりながら立ち上がる。
「うむ、面目が丸潰れだな…。」
続いて、ヒゲ先が少し焦げたナイスミドルの審査員もスッと立ち上がる。
「やんなっちゃうわ!お肌に悪いじゃないの!」
服がセクシーな破れ方をした美人審査員が艶かしく身体を起こす。
「参ったね、せっかくの料理の余韻が台無しだよ。」
小生意気そうな少年審査員がそう言いながらパンパンと服についた煤を払う。
そして、最後に、光に包まれていた厳つめの老人審査員が姿を現す。
「……」
老人審査員は瞑目し、腕を組み黙って佇んでいる。
「さっき倒れてたのはあいつらか…そう言えば最初に火だるまになってたな。」
「今まで気を失ってたんですかねえ?」
謎の発光元の正体は、料理トーナメントの審査員たちであった。
言われてみれば、料理を食べたときに光ったり浮いたり派手な映像を映し出していたので納得である。
「急に光ってどうしたね?ワシの料理の良さも解らぬくたばり損ないの人間共め!もう一度黒焦げにしてやるね!」
そう言ってユピーは立ち上がった審査員たちに向けて火球の魔法を放つ。
「喝ッ!!!!」
老人審査員が目を見開きそう叫ぶと、ユピーの放った火球は掻き消える。
「な…!ワシの魔法を打ち消したね!?」
驚き戸惑うユピー。
「油断してなければこんな魔法なんかにやられるわけないさ、さっきはちょっと料理の余韻に浸りすぎてたね。」
少年審査員はそう言ってやれやれと言わんばかりに首をふる。
「ああ、彼女の料理は衝撃的だった。だが余計な茶々が入って台無しにされた気分だよ。」
そう言って青年審査員はユピーを睨みつける。
「少々キツいお仕置きをせねばなるまい。どれ。」
そう言ってナイスミドルの審査員が指を鳴らすと、ユピーの足元の地面が爆ぜてユピーを宙へと吹き飛ばす。
「ふげっ!なんて早い魔法展開ね!」
「私も行くぞ!」
青年審査員が、素早くユピーの吹き飛んだ先に移動すると、魔法で構築した水の鞭で攻撃を仕掛ける。
「消し飛ばしてやるね!」
しかし、ユピーも負けじと炎の魔法を噴射する。
「甘い!」
すると、青年審査員の水の鞭は、9又の鞭に形を変え、あらゆる方向からユピーを打ち付ける。
「ぐえぇ!」
「アナタ、炎の魔法を使うのよねえ、こんな使い方はできるかしら?」
美人審査員が、炎をブースタのように爆発させて猛スピードでユピーに詰め寄る。
そしてそのままの勢いで蹴り上げる。
ドゴッと美女の細足で蹴ったとは思えない音を立ててユピーが再び宙に舞った。
「風も得意みたいだけど、こんなのはどうかな?」
先回りして空を飛んでいた少年審査員。
その手には巨大な、空気の圧で構築したハンマーを持っていた。
「や、やばいね!」
ユピーがそれを見て咄嗟に風のバリアを構築する。
「そーれっ!」
少年審査員はそのまま、ハンマーを叩き下ろすと、ユピーが作った風のバリアをすり抜けてユピーの体を叩きつける。
「ぐあああああ!」
そしてユピーは地面へと落下していく。
「喝ーッ!!!!!」
そう叫んだ老人審査員の目から光の奔流が放たれる。
光は落下していくユピーを飲み込む。
ユピーは最早声を上げることすらできず、ジュウと音を立てて消滅した。
「「うっわ……」」
そんな一連の最強コンボをバスの中から見ていたソラとゴンは声を揃えて、ドン引きしていた。
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