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「これで全員か!?」
バスを何往復もさせ、人気が無くなったスタジアムを見渡しソラは叫ぶ。
「客席とか控え室はもう居ないよ!」
ソラの声にサクラが応える。
「あのぉ…それよりもグリンさんがピンチでは?」
ゴンの指摘の通り、ユピーの猛攻により、グリンはかなり疲弊していた。
しかも、ところどころ衣服が焦げており肌が露わになっている。
「いろんないみで…ピンチ…?」
「言ってる場合か!助けるぞ!」
ルビィに軽くツッコミを入れながら、ユピーを1人で相手していたグリンの元へ急ぐ。
「ヒヒヒ!そろそろ限界かね?」
満身創痍のグリンを見下ろし、勝ち誇るユピー。
「そちらは余裕そうだな、料理大会に参加なんてしないでそのまま戦争でも仕掛けたら良かったんじゃないか?」
「ワシは策士なのでね!力技はあまり好まんね!」
「ははは、勝負に負けたはらいせに、こんなに魔力まかせに暴れておいてよく言うよ。」
「黙るね!」
グリンの皮肉に激昂して炎を放つユピー。
グリンはそれを剣で受け流そうとするが、完全には受け流しきれずダメージを負う。
「ほら、やっぱり策士には程遠いじゃないか。」
苦し紛れに挑発を続けるグリン。
しかし、強がってはいるものの、次に攻撃されたら受け切ることは出来ないほどに弱っていた。
「減らず口を叩くものだね、耳障りになってきたしトドメを刺すね!」
そう言ってユピーが両手を掲げると、炎と風が頭上に集まりはじめる。
「ワシの奥義にて骨のカケラも残さず葬ってやるね!」
「これは…まずいな…。」
この規模の魔法では受け流すことも避けることも今のグリンにはできそうになかった。
「食うがいいねルビュン!!!」
バコンと言う音と共に、魔法を放とうとしていたユピーが吹き飛ぶ。
ユピーのいた場所には、全面部がおおきくへこんだバスがあった。
「グリン!大丈夫か!?」
ソラが急いで、バスで突っ込んで来たのだった。
「やあ、なんとかね…。」
そして、バスの中から声をかけるソラの様子を見てグリンは安堵し、そのまま意識を失った。
「あんがとよ、グリン。」
ソラはそんなグリンに労いの言葉をかけるのだった。
「グリンがんばった、癒す。」
同乗していたルビィがバスから飛び降り、グリンに駆け寄る。
治癒魔法の光がグリンを包み込み、傷を癒していく。
この様子ならもう大丈夫だろうと、ソラは改めて吹き飛んだユピーの方を見る。
「ぐぬぬ…またしてもやってくれたね…。」
そう言って立ち上がるユピー。
ダメージは大きいがまだ戦えると言った様子である。
「おいおいマジかよ、ぶっ飛んだ直後なのに随分元気だな…。パニックホラーの怪物ってこんな感じなのかね。」
ソラはユピーの頑強さに寒気を感じた。
「ソラさん大変ですよ!まだ逃げ遅れてる人たちがいますよ!」
「なにっ!?」
ゴンがスタジアムの中心にある瓦礫の山の辺りを指差す。
よく見ると、瓦礫の向こう側に人の足が見えていた。
「まずいな、見落としてたか…でもアイツはまだピンピンしてるしグリンは意識が無いし…。」
ソラが戸惑っている間に、立ち上がったユピーがどんどん近寄ってくる。
「ころしてやるね…ころしてやるね…!」
ぶつぶつ呟きながら焔を纏うユピー。
「先にあっちをなんとかするか!?あーもう!どうしたら良いんだ!」
ダン!と強くハンドルと叩くソラ。
ブッブー!と大きなクラクションが鳴り響く。
直後、眩い光が辺りを包み込んだ。
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