表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/114

-10-

武器屋ウリクセス、ドワーフの夫婦が切り盛りするオークリーで一番の武器屋である。


店内には所狭しと武器、防具が並んでいる。

剣、弓、槍、斧、杖と言ったファンタジー定番の武器と、西洋甲冑のような鎧、胸当てなどがそろっている。


「おおー!すっげえ!」

店内を見渡し、興奮したようにソラは声を上げる。

「すげえ、すげえ」と連呼して剣や鎧をじろじろ見て回っていた。

一部を除いて、日本人は武器や防具が並んだ店には縁が無い為、もの珍しさで興奮するのも仕方のない事だろう。


「それでは、杖を借りて魔法を試してみましょうか。」

杖の置かれたコーナーにルビィとゴンは移動し、ソラに合いそうな杖を物色しはじめる。

「試すってこんな所で出来るのか?」

「店の外…広いからよゆー。」

びしりとサムズアップで答えるルビィ。

ああ、そう言えばと納得するソラ。

外が広い岩場で会った事を思い出す。

「お店の裏手に行けば練習用の木人形もあるよー。」

とソラ達のやりとりを観察していた店員、小柄なおばちゃんが声をかけてくる。

「そうなんですか、後で使わせて頂きます。」

親切に声をかけてくれたおばちゃんにぺこりと頭を下げて、色々見て回っていたソラも杖の物色に加わる。


色が似合わない、形が武骨すぎる、可愛いけど高い、などと小さい女の子三人が武器を物色する事数分、

「これなんか良いんじゃないんですか?」

とゴンが一本の杖を差し出す。

先端に黄色い宝玉をあしらった樫の杖であった。

「良いんじゃないのかい?樫だけどウチの旦那がエンチャントして鉄ぐらい丈夫だし、それなりに軽いよ!」

とおばちゃんが説明してくれる。

「シンプル…だけど…イズベスト…!」

ルビィも良いと思ったのかまたサムズアップしている。

「樫か…うん、良いな。」

ソラは名字の樫林と共通しているのでかなり気に入った様子だ。

「なら、試しておいで!」

これだと決めた様子を見ておばちゃんに練習場に追いやられる。

強引なのも全世界のおばちゃん共通みたいだなと苦笑いするソラだった。


ただっぴろい岩場に木人が何体も並んでいる。

ここが練習場らしい。

なんだか射的の的あてみたいだなとソラは感じた。


「さあ、早速杖を使って魔法を打ってみましょうか!」

「よし!行くぞ!」

ゴンに促され、気合を入れるソラ。

そして、杖を前に構え…

「ぐぬぬぬぬぬぬう!」

思いっきり力んでいた。


しかし、何も起こらなかった。


「えっと、何してるんですかソラさん?」

見かねてゴンが尋ねる。

「魔法を使おうとしてるんだが、こう力込めたら火とか飛ばせるんじゃないのか?映画みたいに。」

そして再び力んだり、杖を振ったり、「エクスナンチャラ!」とか呪文を唱えてみた。


しかし、何も起こらなかった。


「いや、あのソラさん…ソラさんはサモナーですし、ファイヤーボールみたいな黒魔法は最初から使えませんよ?」

ひとしきり試して、何も起きない事に首を捻ってるソラにゴンは語る。

「召喚手帳があったでしょう、あれに書かれた契約対象を召喚するんですよ。」

「召喚手帳ってこれか…」

そう言って羊皮紙の束を見る。

一番最初のページを開くと、書道初段の認定書が書かれていた。

「いや、書道初段を召喚ってなんだよ…」

全く想像がつかなかった。


「あんた、サモナーで今日が初召喚かい?」

とソラ達の様子を見ていたおばちゃんが話しかけてきた。

「サモナーの召喚魔法のやり方なら、私の知ってる限りなら教えてあげるよ!と言っても聞きかじった程度なんだけどね。」

なんと、おばちゃんは召喚魔法について少し知識があるようだった。

「お願いします!」

二つ返事でソラは教えを請うた。


「それじゃ、まずは杖に魔力を込めるんだよ。」

当たり前のように説明するが、

「まず魔力…」

と反芻するソラ。

「すいません、魔力って気合とは違うんですか?」

そう、ソラは魔力が何かわかっていなかった。

当然である。

そんなもの、ソラが生きてきた世界では存在していないのだから。

知らないものを使えと言われてもできるはずがない。


「魔力がわからないのかい?誰だって体の中にあるだろう?血と同じさ。」

おばちゃんがさも当たり前のように語る。

どうやらこの世では血のようなもので、体に巡ってるらしい。

ソラは血液のように体内を流れる気功と解釈した。


「じゃあ、ちょっとやってみます。」

杖を構え、すっと目を閉じ、体内に意識を集中するソラ。

血液の流れを意識し、なんとか魔力を探ってみる。

しばらく集中すると、気の流れ的なものを感じた。

体中に巡るそれを、丹田に力を籠めるとそちらに誘導できたような気がした。

同じ要領で杖に力を集中させてみると、杖に気が流れるのを感じる。

「ほら、杖に魔力が溜まってきただろう?」

おばちゃんが指摘し、ソラが目を開くと杖の先端のオーブが淡く光っていた。

「お、おお!」


それだけでソラは感動してしまったが、まだ魔法は完成していない。

「じゃあ、次は召喚したい対象を頭の中で、具体的にイメージするんだ!」

おばちゃんがそう言う。

ソラは慌ててイメージをする。


「ってだから書道初段って何だよ!筆か?文鎮か?紙か?墨か?」

とりあえず道具を想像する。

すると、構えた杖の前方に魔法陣が展開され、中から何かが姿を現す。

先ほどイメージした、筆と、文鎮と、紙と、墨であった。

「できたね!って何だいこれは…?」

不思議そうにするおばちゃん。

「物体を召喚するなんて…こんな召喚魔法初めて見ました…!」

驚くゴン。

「強そうじゃないけど…攻撃できるの?」

もっともな疑問をつぶやくルビィ。

「お、おお…すげえ…!けど…なんだかなあ…」

初めて魔法を使った感動と、出てきたものがお習字道具だった微妙な気持ちでひきつった笑い顔になるソラ。


さっきまで力を込めていたソラは、気が抜けてしまいよたりと膝をつく。

すると、魔力で顕現させて、魔法陣と一緒に浮いていた書道道具がぼとりと地面に落ちた。

「こんなんでどう戦えば…いいんだよ…」

はぁとため息をつき、頭を抱えるソラだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ