第4話 隠れ家にて
“フラッシュ”
“サンダーボール”
紅火は、二つの魔法を放ってから、桜華を支えて森の奥へと逃げて行く。
進むスピードが、遅いからか、男はまだ追いかけては来ない。
「桜華、大丈夫?ごめんね。もう少しで着くから。」
「うん。まだ、大丈夫。」
少し歩いて行くと、大きな岩山が見えてきた。
その中にある、一番大きな岩の前に行くと、紅火は、横にある小さな岩をとって、大きな岩を3回たたいた。
すると、大きな岩が動いて下へと伸びている階段が現れた。
「ここなら、ばれないはずだから、もう少し頑張って。」
桜華は、こくんとうなずいた。
それを見た紅火は、桜華に合わせてゆっくりと下りて行った。
階段を下りた先には、長い通路があった。
途中に道が分かれている事もあったが、紅火は迷うことなく進んで行く。
「ここだよ。」
と、言って指を噛み、血の滲む指を壁に当てて壁を押した。
紅火の血がついたところが光り、壁が動いて扉が現れた。
紅火と私は、扉を開いて中に入った。私たちが入った後に、扉は勝手に閉まった。
そこは、大きな部屋だった。その部屋には、四つのドアと、二階へと延びている階段と、その隣には、地下へと延びている階段がある。
テーブル、イス、ソファーといった家具が置かれていて、キッチンもある。
「ここは、私の家のリビング。」
「へー、ここが、紅火の家なんだね。」
「そうだよ。ここならばれにくいから、ここで隠れていよう。」
「うん。そうさせてもらうよ。」
右手を右足の傷口にかざした。
“ヒール”
右手に淡く青緑色の光が灯り、傷口がきれいに塞がった。
「よし、これで大丈夫。」
「そういえば、こんな事になっちゃたけど、家に帰らなくても大丈夫なの?」
「理由を説明したら、大丈夫だと思うよ。まあ、もし大丈夫じゃなくても、この状態じゃ、帰るに帰れないからね。」
「それも、そうだね。」
「じゃあ、家の中を案内して欲しいな。」
「もちろんだよ。」
「こっちに来て。」
と言って、一つ目のドアを開けた。
「ここは、私の部屋だよ。」
ベッドと、小さい二人掛けぐらいの大きさの白いソファー、キラキラ光る石や、きれいな花の入った花瓶などが、置かれているベージュ色の棚、後はクローゼットがある。
家具はすべてシンプルなものだが、物はしっかりと整理されていて美しい。
だが、物が少なく、さびしい感じもする。
「きれいに整っているんだね。私は、整理が苦手だから、使用人さんがきれいにしてくれないと、きれいにならないんだよね。」
「桜華、整理ぐらいはできた方がいいと思うよ。」
「頑張るよ。」
「よし、じゃあ次の部屋に行こうか。」
次は、二つ目のドアを開けた。
「ここは、空き部屋なんだ。」
紅火の部屋の家具と、色違いの家具が置いてある。
ソファーはダークグレー色、棚は水色のものだ。
使ってはいないのだろうが、きちんと清掃が行きとどいている。
「使っていないのに、きれいにしているんだ。偉いね。」
「いつ使うかわからないからね。と、言う事でこの部屋は今日から桜華の部屋だから、自由に使ってね。」
「いやいや、『と、言う事で、』じゃないよ!」
「いつ使うのかわからないから、しっかり掃除していてよかったよ。」
「そこじゃない!どうしてそうなるの!?」
「だって、どうせ空いているし、今日は泊まって行く事になるかもしれないし、ここに部屋があった方が便利でしょう。お泊まり会もできるしね。」
「そうだけど...。」
「私的には問題ないから、気にしなくて良いよ。」
「わかったよ。使えばいいんだよね。ありがたく使わせてもらうよ。」
「そうそう、そういうこと。」
「凄く強制的だね...。」
「気にしない、気にしない。よし、次行こうか。」
三つ目のドアを開けた。
「ここは、お風呂場と、お手洗い。」
大きなお風呂場が部屋の半分を占めていた。お風呂場はガラス張りで、お風呂場の壁は白い壁が二面、淡いピンク色の壁が一面で、浴槽は大人が足を延ばせそうなぐらい大きい。お手洗いは別に個室になっている。他には、洗濯用具や、洗面台がある。
「お風呂場、可愛いね。」
「うん、私も結構気にっているんだ。」
「へぇー、私と同じだね。」
「次はこの階、最後の部屋だよ。」
四つ目のドアを開けた。
「ここは、物置だよ。」
大きな棚が三つ縦に並んでいる。魔法関連の本や、道具、日用品などが、棚からあふれる事無くきれいに並んでいる。
「ねえ、紅火って掃除が好きなの?」
「いや、違うけど。」
「だって、物置ですら、きれいなのは、おかしいよ。」
「普通だと思うな。家の中ぐらい、きれいにすべきだと私は思うよ。」
「そういうものなのかな?」
「そういうものだよ。」
「次は、二階に行こうか。」
私たちは、二階へと続く階段を上った。
そこには、一つのドアがあった。そして、そのドアを開けた。
「ここは、今のところ、使っていない部屋なんだ。」
そこは、広くて陽当たりの良い、何も無い部屋だった。
数名でお泊まり会が出来そうな部屋だ。
「お泊まり会、出来そうだね。」
「そうだね。いつかやろうね。たくさんのお友達を呼んで。」
「出来れば良いね。」
「よし、最後に地下室へ行こうか。」
二階の階段を下りて、一階からまた、地下へと続いている階段を下りていった。
そこにも、二階の時と同じようにドアが一つあった。
そして、そのドアを開けた。
「ここは、練習室だよ。」
部屋は、硬い素材で出来ている。さらに、魔法の結界が張られている。
二階の部屋と同じか、それよりも広い。
「ねえ、ここって魔法の練習も出来る?」
「うん、出来るよ。」
「本当?やったー!」
「次はここで対決しようね。」
「よーし、望むところだよ。次は、負けないよ!」