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第19話  入学試験


 道中は何事もなく、王都エルフェールにやって来れた。馬車は私が通う事になる聖国せいこくエルフェール精霊学院の前で止まった。学院の門を見るとたくさんの人であふれかえっていた。そのほとんどがキレイで美しい服を身にまとった貴族の一族のものだった。一応私もその貴族の一員ではあるのだが、私の家は領地しか持っておらず、権力もなければ領民もいない、あるのは家族と山に囲まれた屋敷、そして召喚獣というパートナーのみ。門も前にいるたくさんの貴族たちとはまた別者なのだ。


 私は門から少し離れたところで馬車から下り、フードをかぶって御者の人にお礼を告げると門の受付のところへと歩いて行った。入口は三つに分かれていた。一つが生徒や先生方などといった関係者用。残り二つが新入生用の受付。だが、受付の方は片方に貴族たちが並んでいてもう一つの方は空いていた。

 私は不思議に思ったけれど空いている方の受付に行った。そんな私の姿を見た貴族の一部がどよめいていた。私の恰好が平民にしてはキレイすぎて、貴族にしてはシンプルで質素過ぎたからだろうか。良くわからなかった。

 受付の人は狼族の女性のようだ。頭に狼の耳がある。私はバッグの中からお父様から受け取った書類を出し受付の女性に声をかけた。


 「あの、入学の受付ってここで大丈夫ですよね」


 女性は驚いたような表情をしたがすぐに答えた。


 「はい。大丈夫ですよ。書類を確認させて下さい」


 私は女性に書類を手渡すと、受付の人はその書類に目を通し始めた。最後の記名欄の私とお父様の名前を見たときに、「えっ!?」と驚きの声をあげた。


 「あの、何か不備でもありましたか?」

 「いいえ、そうではなくて、失礼ですが雪刃って伯爵家の獣使いの雪刃家ですか」

 「え、あ、はい。そうですよ」

 「貴族なのに私に声をかけたんですか」

 「?.....あっ!、亜人と呼ばれる種族の事ですか?」

 「ええ、そうです。だからほとんど人は来ないんですよ」

 「私の家では気にしませんからね。もともとモンスターと似たというより、ほぼ同じの獣を従えてるので」

 「そうですか。あ、受付は完了しました。こちらの番号があなたの試験番号になります。こちらの資料をご覧になって会場へ進んで下さいね。はじめは筆記試験ですので学院内の教室が会場となっているはずです。資料の中に学院の地図も入っていますが、わからなければ職員に聞いて下さい」

 「わかりました。ありがとうございます。あの、精霊って学院内で出していても良いんですか?」

 「試験の邪魔をしなければ基本は大丈夫ですが、大きすぎたりすると駄目ですね」


 猫の姿になった紅火がバッグの中から出てきて私の肩にちょこんと座った。


 「この子なんですけど、大丈夫ですよね」

 「大丈夫ですよ。すごいですね。その年でもう契約精霊がいるなんて」

 「たまたま、運が良かっただけなんですけどね」

 「それでも、凄いと思いますよ。霊者なんて今日、試験を受けにきている人の中にそう多くはいませんから」

 「そうなんですか。意外といないんですね霊者って」

 「そうですよ。でも、獣使いの方が圧倒的に少ないですけどね。あ、引きとめてしまいましたね。この道をまっすぐ行けば学院の中に入れますからね。雪刃さんが無事に合格して、また私とお話ししてくれるのを楽しみにしたいと思います。頑張ってください」

 「はい、ありがとうございます。またお話しましょうね」


 そう言って私は、資料の地図を見ながら学院内の試験会場に行った。私の番号25番だったので会場はAクラスだった。教室の中の25番の席を見つけるとそこに座った。机の上にはインクと付けペンが置いてあった。忘れて来た人や持っていに人がいるからあらかじめ学院側で用意しているのだろう。


 何もすることがないので膝の上で丸くなってる紅火をなでながら資料を読むことにした。

 試験は筆記試験、魔法技能検査、対人戦闘試験、の三つ行われ、それぞれの結果の合計点の高いものから100名を選ぶらしい。点数は筆記が20、魔法が50、対人が30という配分になっているようだ。


 読んでいるうちに全員の受付が終了したらしく、全ての席が埋まっていた。周りを見渡せば全員が貴族のようだった。ここは、貴族を集めたクラスなのかもしれない。資料をバッグに入れて待っていると、先生らしき人物が教室に入って来た。その人は教壇の上に立ち教室の中を見渡してから話し始めた。

 話が長かったので要約すると、名前が レイル・フィロールといって、この学院の教師なのだそう。あとは、この学院の素晴らしさと資料に書いてあったことと同じ注意点を長々としゃべっていた。

 男の先生レイルは、しゃべり終わると問題用紙を配り、「よし、はじめ!」といい、普通に試験を始めた。問題の内容は、魔法の基礎と少しだけだが応用問題もあり、一般知識を問う問題もあった。はっきり言えば、割と簡単だったと思う。

 時間になり、先生が終了と合図をし、問題用紙を回収した。次は、校庭に行けとだけ伝えて先生は教室から出て行った。


 私はバッグを持って紅火を肩に乗せて校庭に移動した。

 校庭には、5人の先生がそれぞれ一定の距離を置いて立っていた。奥の方には各5つの的が用意されていた。場所は番号順になっているのでAクラスにいたメンバーと変わっていなかった。

 担当の先生はメンバーがそろったことを確認すると試験の説明を始めた。


 「私の名前は、セリア・アルファ。この学院の教師をしている。この試験の試験官だ。これから試験の説明をする、質問があれば説明の後に聞こう。

 この試験は、魔法の威力と命中率、展開速度を見る。もちろん、難易度が高い魔法の方が得点は高いが、命中率が悪かったり魔法の威力が足りていなければ点数にはならない。行う順番は番号順とする。私が合図をしたら魔法を組み立てて、的に向かって放て。チャンスは的の数と同じ5回までだが、1回で全部の的を破壊しても良い。質問はあるか?」


 私は手を挙げ質問してみる事にした。


 「はい、あります」

 「なんだ?」

 「二つあるのですが、一つ目が的一つに対して、放っていい魔法の数はきまっているのかというところで、二つ目がパフォーマンス性など見ためを重視するのではなく、実践性を重視するのかというところです。」

 「一つ目の質問には特に決まっていないと答えよう。二つ目の質問には実践性を重視すると答えよう。これでいいだろうか」

 「はい。ありがとうございました」

 「よし、他に質問はあるか?なければ始める」


 セリア先生が周りをみて、誰も手を挙げていないことを確認すると、「一番前へ」といい、試験を始めた。

 一番の人は、一回一回魔法陣を詠唱しながら作ってからファイアーボールを放ち的を壊していた。

 他の人もよくて中級魔法を使って壊すぐらいで一度にたくさんの魔法を展開して一回で壊す人はいなかった。


 「次、18番前へ」


 18番の女の子ははじめの合図とともに小鳥の精霊を召喚して精霊魔法のエアーカッターで一度に全ての的を破壊した。今までの中では一番凄かったし、精霊魔法を使った事で得点も高いだろうなと思った。

 その後も、これといって凄い人がいるわけでもなく私の番になった。


 「次、25番前へ」

 「はい」

 「よし、はじめ!」


 “全ては凍り時は止まる アイスフィールド”

 “アイスボール”


 アイスフィールドで的から私の足元までを一瞬で凍らせる事で氷の威力を上げ、アイスボールを一度で5つ用意し、それぞれの的に放つ。どれも狙い通りのところにまっすぐ飛んで行き全ての的を破壊した。


 「は?」


 先生が驚きの声?を上げていた。


 「え、あの。セリア先生?何か問題でもありましたか?」

 「あ、いや、大丈夫だ。次、26番」


 その後もどんどん試験を行っていき最後の35までいくと試験は終了となった。


 「次は対人試験だ。ここの反対側にあるもう一つの校庭で行うから移動しろ」


 先生は指示を出してから校舎の中へ入って行った。

 私はすぐに次の試験会場へ向かった。


 次のところも5人の先生が一定の距離を置いて立っている。それぞれの先生の足元には様々な武器が置いてある。

 先生の名前はブレッド・レイスという男の人で、試験内容はそれぞれが武器を持って先生と一対一で戦う。魔法は、身体強化魔法と武器強化魔法、地面などを凍らせたりするフィールド変化魔法のみ。武器は学院が用意した刃のつぶれた武器を使う。順番はやりたい者から順に行うそうだ。


 「誰か、はじめにやりたいやつはいるか?」


 魔法の学院だから、体力面には自信がないのだろう。誰も名乗り上げる事はなかった。だから、私が手を挙げはじめにやる事にした。


 「君が最初にやるんだね武器は好きなものを選ぶと良い」


 私は紅火と持ってきた荷物を地面に置き一番軽かった長剣を選んだ。


 「これにします」

 「よし、好きに打ち込んで来てくれて構わないが、こちらも反撃はするのでそのつもりで打ち込んで欲しい」

 「わかりました。いきます」


 長剣を構えて走り出す。走っている間に魔力を見に纏い武器にも魔力をまとわせて強化し、いきなり首を狙って武器を振るった。先生はいきなり狙いが急所だったため少し焦って構えていた剣をずらす事で防ぎ、そのまま剣を振るい返してくる、それをステップでかわして追撃するも全てはじかれる。

 ジャンプで距離をとり詠唱する。


 “フリーズ”


 先生の足元のみをピンポイントで狙い凍らせる。氷の上から退避しようとするところを魔力を使って一気に加速して斬りこむ。ガードされたところを斜め下から切り上げて武器を飛ばそうとしたのだが、上に振り上げのけぞらせる事までしかできなかった。少しのすきを逃さないように斬りかかろうとしたところを


 「ストップだ」


 と、止められた。私は指示に従い魔力を消散させ剣を下した。


 「もう大丈夫だ。それとも、決着をつけたいか?」

 「いえ、ありがとうございました」

 「では、次は誰がやる?」


 ちらほら手を挙げる者が出てきてどんどん試験は進んで行った。身体強化魔法が上手い者や武器の扱いが上手い者も何人かいたのだが、ほとんどの人が先生に負けていた。もちろん引けわけは私のほかにも3人いた。先ほど鳥の精霊を召喚していた18番の少女、そして身体強化魔法がすごくうまかった7番の男子、先ほど魔法の威力と制御力が高かった32番の少女の3人だ。


 「これで、試験は終了だ。結果を集計してくるから筆記試験の時と同じ場所に座って結果を待っていてくれ」


 とにかく、全ての試験が終わった。あとはテストの結果次第だとは思うが多分合格出来ているんじゃないかなと思った。私は紅火を肩に乗せてAクラスに行った。


 春休みが終わってしまったので、また最新ペースが落ちると思います。

次の最新がいつになるかはわかりませんができるだけ早く投稿できるようにしたいと思ってます。

気長に待って下さると嬉しいです。これからも『精霊と聖なる印』をよろしくお願いします!

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