第18話 出発
あれから約1年。正確にいえば、8ヶ月の月日が流れた。
毎日は何も変わらず穏やかなもので、いつもと違うのはたまにお父様と実戦形式の試合をするようになったことと、儀式用の練習ではなく、一般的知識や魔法や精霊についてなどの基本から応用までを学ぶようになった事ぐらいだった。
そんな日常も今日が最後。明日はついに精霊学院に入学するためこの家を出発するのだ。初めて雪刃家の領地の外に出る私にとっては楽しみでもあり、外に出るというだけでも不安でもあった。
今日は、今までのおさらいと試験形式のテストを行った。筆記と魔法、試合も一通り終えた。
ほかの学生がどれ程の実力かはわからないが、きっと、実技試験の結果だけで受かるとお父様は言った。でも、実力だけで最上位クラスに入れるかと言われると、無理な気もするので雪刃家として学校にいくので出来れば最上位クラスに入りたいところなのだ。
まあ、それをお父様たちが望んでいるかと言われるとなんとも言えないのだが……
一応、雪刃家で初めて精霊学院に行くわけですから、私は雪刃家の者としてその名を背負っていくので酷い結果を出すのは申し訳ない、だからこそ桜華は気合いが入っていた。
そして、今日という日も終わりを迎えた。
次の日の朝
今日は出発の日。朝早くに起きて着替えをして、持っていく物の最終確認をする。
今日は、動きやすさ重視の服装として、青のミニスカートにベルトを付け剣をつるせるようにし、灰色のハイソックス、茶色のブーツを履き、レースのついた白いシャツを着て、ベージュのケープを身に付けてきる。
持ち物とはいったものの、雪杜の力を借りて異空間に私専用の収納スペースをつくってもらったので手で持っていくものはほとんどない。
さらに、マジックバックという、バックの中に容量限界まで物を入れる事が出来るバックもらったので手荷物はすごく少ない。
マジックバックの容量はバックのランクによって変わりランクが高ければ高いほどたくさん入るようになっている。ランクは一番低いのが“ランク1”で、一番高いのが“ランク5”となっている。私が持っているのは“ランク4”の携帯ポーション入れの形をした小さいマジックバック。
容量はその物の大きさはさほど関係無く、ランクごとに入る量が
“ランク1” ... 15 1つにつき 50個 合計 750個
“ランク2” ... 25 〃 80個 〃 2,000個
“ランク3” ... 40 〃 100個 〃 4,000個
“ランク4” ... 50 〃 150個 〃 7,500個
“ランク5” ... 75 〃 200個 〃 15,000個
となっている。
異空間には、小さめの家具、寝具、本をたくさん。調理用具全般、服をほぼ全部、魔法に使う道具(ポーションや杖、ポーションを作る道具)、食料をたくさん(異空間は時の流れを止めているので腐らない)、を入れているので野宿であろうと快適に過ごせるようになっている。
マジックバックには、杖と剣の予備、保存食(干し肉、乾燥野菜、固い黒パン)を少し、ポーション、着替え、毛布3枚を入れている。異空間のことを知られるのはまずいからそのギソウために使うことが多くなりそうだ。
それと、普通のバッグに保存食、ポーション、大きいタオル1枚と小さいタオル2枚を入れている。
ミスリルの長剣と魔法適応力の高い聖木の短杖、マジックバッグを腰につりさげ、準備完了!
出発のときには、家族全員が見送りに来てくれた。
お父様が、入学のための書類と生活するためのお金を持たせてくれた。
お金は、
金貨1枚 = 1,000,000コル = 銀貨100枚
銀貨1枚 = 10,000コル = 銅貨100枚
銅貨1枚 = 100コル = 鉄貨100枚
鉄貨1枚 = 1コル
となっている。金貨の上にも大金貨、白金貨がある。
ちなみに、
大金貨1枚 = 100,000,000コル = 金貨100枚
白金貨1枚 = 1,000,000,000コル = 大金貨10枚
となる。
お父様がくれたのは金貨2枚と銀貨10枚、銅貨50枚の合計2,105,000コル。銀貨3枚で普通の国民の一家族が1ヶ月暮らせることを考えるとちょっと、と言うかあきらかに多すぎる気がする。
銅貨5枚と銀貨5枚を取り出し残りを異空間に入れ、銀貨3枚はマジックバックに入れ、銅貨5枚と銀貨2枚は布袋に入れていただのバッグに入れた。
私はお父様にお礼を言い、馬車に乗り込んだ、お兄様は馬車に近づき気を付けろよと言った時にこっそり金貨1枚を私の手に握らせた。おこずかいだと言っていた。
「では、出発します」
御者の使用人が馬を歩かせる。
星璃が私に向かって緑色の蝶を跳ばす。私が蝶を手に取ると蝶は緑色の髪飾りに変化した。
「お姉ちゃん!」
星璃は手に持っている青い蝶を見せるように手を振りながら叫んだ。
「何かあったらいつでも連絡ちょうだい!僕、いつでも駆け付けるから!」
私は窓から顔を出して手を振りながら叫ぶ。
「うん!ありがとう!行ってきます!」
みんな手を振り返してくれた。私はみんなの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。




